2006年5月3日(水)「しんぶん赤旗」
国会の動きは いま
笠井衆院議員に聞く (上)
憲法改悪・国民投票法案
改憲勢力の“本音”続出
三日は憲法記念日。自民、公明、民主など改憲勢力による憲法改悪の動きがどうなっているのか、国民投票法案をめぐる国会情勢などについて、日本共産党の笠井亮議員(衆院憲法調査特別委員)に話を聞きました。
――今年十一月には、日本国憲法公布六十年を迎えますが、憲法改悪の動きも強まっています。どうみていますか。
笠井 昨年十一月、自民党が「新憲法草案」という改憲案を発表しました。民主党も「憲法提言」なる改憲案のたたき台を出しました。そういう状況下での憲法記念日です。国会にいても、九条改憲で「戦争をする国づくり」をすすめるのか、それとも日本国憲法を生かした政治を実現していくのかという、かつてない激しいせめぎあいを感じます。
先日、共同通信社主催の憲法問題各党討論会で、自民党の船田元・憲法調査会長は「新憲法草案のバージョンアップをしていきたい」とのべ、国民の義務ももう少し書けるんじゃないかといっていました。公明党の太田昭宏幹事長代行は「改憲志向ではないが、世の中的にはそういう方向なのでまとめておく」といって、秋にも「加憲」案をまとめることを改めて明確にしました。
民主党の枝野幸男・憲法調査会長も、「全国で憲法対話集会を始めたところで、党としての方向もまとめていく」と発言しました。鳩山由紀夫幹事長は“改憲案を来年中にまとめる”と記者会見でのべています。
運動が歯止めに
改憲勢力の側は何とかして具体的な政治日程にのせようという思惑をもって、三日を迎えていると思いました。
衆院憲法調査特別委員会の理事懇談会では、九条改憲の条件づくりとなる国民投票法案の「論点整理」をやっています。これが今国会での一つの焦点になっています。中山太郎委員長は「自公民三会派でほとんどの論点において歩み寄りがなされている」(二日)とのべており、緊迫した局面を迎えつつあります。
一方で、着実に前進している国民の九条守れの運動が、国会に届き、共産党の論戦、社民党の主張とあいまって、改憲派の思い通りにはさせていないというのが実感です。九条を輝かそうという「九条の会」は全国で五千近くになり、月百から二百のテンポで増えています。平和・民主団体が結集する憲法改悪反対の「共同センター」も各地で頑張っています。
衆院憲法調査特別委では、四月に国民投票法案に関する参考人質疑をおこないました。その中で、日本雑誌協会の代表が、二度「九条の会」の名前をあげたのが印象的でした。世論調査をみても、「毎日」では戦後日本国憲法が「役立った」と評価している人が八割です。世論や運動の広がりに大いに確信をもって、これと結んで、国会での論戦でも頑張りたいと思います。
米軍再編と一体
――国民投票法案が九条改憲の条件づくりとは、どういうことですか。
笠井 非常に象徴的なのは、改憲の動きと在日米軍再編が一体になってすすんでいることです。在日米軍再編は、米軍基地を強化し、自衛隊と一体化する体制づくりをめざすもので、改憲に直結しています。米国からは“再編の障害は九条だ”と圧力が強まっています。
国民投票法案を推進している勢力は、当初は「憲法改正条項があるのに国民投票法案がないのは国会の怠慢」「ルールをつくっておこう」などといっていました。最近になって、思うように投票法案づくりがすすまない焦りから本音が随分出てきています。
ある自民党議員は「特別委員会は初期の目的を一日も早く終了させて、次なる目標、本丸(改憲)に向けての議論にすすむべきだ」と発言。船田氏はマスメディアのインタビューで「憲法改正に向け、通常国会で国民投票法を成立させたうえで、改憲の政党間協議の入り口まで今年後半にはたどりつき、来年、本格的な協議に入りたい」とのべています。国民投票法案のねらいが「新憲法草案」を通すためであることをあけすけに語っています。
相手が、本丸である改憲に焦点をあてて、国民投票法案づくりをしている以上、何のための国民投票法案か、何のための改憲かという一番の問題について、徹底して国民に知らせ、強固な反対の世論をつくることです。これが国民投票法案を許さない最大の力になります。改憲の最大の狙いが九条を変えて、米国と一緒に海外での武力行使を可能にするという、よこしまなものにあることはいくらいってもいい過ぎではありません。(つづく)