2006年5月2日(火)「しんぶん赤旗」
主張
憲法記念日
いまに生きる9条の力語ろう
憲法公布六十周年の年、五十九回目の憲法記念日を迎えます。(公布一九四六年十一月三日、施行四七年五月三日)
自民党は結党から五十周年の昨年十一月、「九条改憲」に的をしぼった新憲法草案をまとめています。国会では改憲のための国民投票法案の準備を、公明、民主とすすめています。
日本を「海外で戦争できる国」につくりかえる改憲勢力のねらいがいよいよ鮮明になるなか、いまに生きる憲法九条の力を大きく語り広げることが重要になっています。
「海外で戦争できる国」に
日本国民はいまから六十年前、破滅的な戦争を体験しました。日本の侵略戦争によるアジア諸国の犠牲者は二千万人以上にのぼり、日本人も三百十万人が亡くなりました。
現憲法が五月三日から施行されることになったのは、そのちょうど一年前の一九四六年五月三日に、日本の戦争犯罪を裁く東京裁判がはじまったことにちなみます。誤った侵略戦争への反省と日本国憲法は、その成り立ちからして不可分です。
憲法前文は「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにする」と宣言しています。そして憲法九条は、国権の発動としての戦争を一切拒否し、武力は持たず、交戦権は認めないことを明らかにしています。憲法は、国民の平和の願いの結晶であるとともに、戦争で被害を与えたアジアと世界にたいする厳粛な誓約でした。
その大事な原則を根本からくつがえそうというのが自民党の新憲法草案です。草案は、前文から“不戦の誓い”を削り、「戦力の不保持」「交戦権の否認」の九条二項をすっぽり削除、「自衛軍」を持つと明記しています。そのねらいが、侵略戦争への反省と世界への誓約に背いて「海外で戦争できる国」をめざすものであることは明らかです。
改憲策動の背景にあるのはアメリカの要求です。アーミテージ前米国務副長官は「地球規模の役割を果たすために憲法九条を変えよ」と求めました。ジェームズ・アワー元米国防総省日本部長は、「米軍再編」に関連して「現在の日本政府の集団的自衛権に関する政策を変えざるをえない。…合意を履行できないとなると、日米安保は危機を迎える」と明言しています。
この言葉通り、改憲のねらいを先取りしているのがいま進められている「米軍再編」です。それは在日米軍基地の強化にとどまらず、アメリカが狙う先制攻撃の戦争を、米軍と一体になって自衛隊が担うということです。そのためには、自衛隊の海外での武力行使を制約している憲法九条をとりはらいたいという日米両政府の願望は、今や誰の目にも明らかではないでしょうか。
「9条、いまこそ旬(しゅん)」
裏を返せば、憲法九条こそが、日本を「海外で戦争できる国」にしない歯止めとなってきたし、いまもなっているということです。九条は日本の社会のなかで、現に生き、大きな力を発揮しているのです。
「日本を『海外で戦争できる国』にする九条改憲に賛成ですか」―こう問いかければ、多くの国民が「ノー」と答えるでしょう。国内だけでなく世界で九条の意義が注目されていると、日本国際法律家協会の笹本潤弁護士が本紙のインタビュー(四月四日付)で語っています。
「憲法九条、いまこそ旬(しゅん)」。家庭で職場で語り合いの輪を広げ、憲法九条をはじめ憲法守れの世論を大きく広げていこうではありませんか。