2006年4月27日(木)「しんぶん赤旗」
共謀罪新設
仁比参院議員に聞く
警察判断で乱用 人権侵害の危険
政府・与党は、二十一日の衆院法務委員会で、野党の厳しい抗議の中、共謀罪関連法案の趣旨説明を強行しました。さらに二十五日、国会審議の合意は全くないまま、与党のみの質疑を強行し、連休前二十八日の採決を公言しています。日本共産党の仁比聡平参院議員(法務委員)に「共謀罪」について聞きました。
残念ながら議席数の関係上、衆院法務委員会にわが党の委員はいませんが、民主党・社民党と一致点で共同し、急速に広がる市民、民主団体、学会や法曹界などの反対世論と力を合わせて、国会内外で廃案をめざしてたたかい抜きます。
話し合うだけで
「共謀罪」ときくと、よほど凶暴で重大な犯罪かと連想しがちですが、全くそうではありません。大切な家族の命を奪われた人が「犯人を殺してやりたい」といい、会社の同僚が「気持ちはわかるよ」と応じたら、あるいは環境破壊に憤る市民が実力阻止を辞さない決意で集会を計画したら、それだけで逮捕して処罰すべきでしょうか。
いまは、犯罪の結果、被害が生じたときに処罰するのが大原則で、犯罪の実行行為がなければ罪にはなりません。実行行為がなされても被害が生じなかった未遂を処罰するのは一部に限られています。まして、実行には至らない物的準備行為(予備)の処罰はごくわずかであり、陰謀など意思の合致のみを処罰する罪は、数えるほどしかありません。
ところが「共謀罪」の対象となる罪は、法案でも六百十九に達するきわめて広範なものであり、その共謀の名の下に平穏な市民生活の多くが、一気にすべて処罰対象とされることになります。
言葉ではなく目配せでも、警察が「犯罪意思が通じ合った」と決めつければ「共謀罪」。勢い、内心に立ち入って自白の強要や密告の奨励、スパイや盗聴など、無法な捜査がまかり通ることになります。市民の自由と基本的人権の侵害、委縮作用は計り知れません。
憲法の下、民主主義の刑法の大原則は、罪刑法定主義です。あらかじめ国民に何が罪であるかを明示し、違反すればどのような罰を受けるかを法律で明確に定めなければなりません。処罰の対象は、害悪をもたらす現実の行為であり、いかなる思想、信条、内心であろうと、それ自体を処罰してはなりません。刑法の人権保障機能と言われるゆえんです。
民主主義を否定
ところが政府は、「共謀それ自体を罰する必要がある」といいます。憲法と民主主義を否定するものにほかなりません。
与党は修正案なるものを提出しています。そこでは、処罰条件として、「犯罪の実行に資する行為」を加えるといいます。しかし、犯罪の「準備」(予備)にもならない広範な行為をすべて対象とするもので何の限定にもなりません。そればかりか、口実としてきた「テロ対策」に不可欠なはずの「国際的な犯罪」の限定もありません。団体の「共同の目的が犯罪を実行することにある団体に関わるものに限る」といいますが、その判断は警察の主観的判断で際限なく乱用されることになります。
共謀罪新設関連法案は、断固、廃案しかありません。