2006年4月23日(日)「しんぶん赤旗」
主張
耐震偽装捜査
全容究明すすめ、国の責任も
マンションなどの耐震強度偽装事件で警視庁などの合同捜査本部が、建設主のヒューザーや施工者の木村建設、民間確認検査機関のイーホームズ、姉歯秀次元一級建築士らにたいして、逮捕をふくむ大詰めの捜査を進めています。
建築物の安全性への国民の信頼を深く傷つけた当事者への法的責任の追及は、被害にあった住民の救済や偽装事件の再発防止にとっても不可欠です。捜査機関は事件の全容に深く踏み込んで、偽装事件の解明にあたるべきです。
国民のいのち脅かす
捜査が大詰めを迎えているのは、建築主のヒューザーが偽装を知りながらマンションの販売を続けていたことや、施工者の木村建設による粉飾決算、建築確認をおこなったイーホームズの架空増資、偽装をおこなった姉歯元建築士による違法な名義貸しなどとされています。
なかには耐震偽装と直接結びつかない容疑もありますが、耐震偽装事件は、住民の生活の場であるマンションや都市での活動の場となるホテルの安全性が確保されていなかった点で、文字通り国民の生命をも脅かした重大問題です。全容究明のためにも、偽装にかかわった当事者の犯罪行為は厳しく追及されなければなりません。
全容究明にとって何より重要なのは、なぜ姉歯元建築士が構造計算書を偽造したのか動機の解明です。姉歯氏は国会証言で、木村建設が過度のコスト削減圧力をかけるなか、構造計算書の偽造をおこなったことを明らかにしています。ヒューザーや木村建設の圧力はどう行われたのか、ホテル建設でコンサルタントの総合経営研究所が果たした役割はどんなものだったのか、関係者の責任を明らかにすべきです。
耐震偽装が明らかになったのは、姉歯元建築士がかかわった、いわゆる「姉歯案件」にとどまりません。姉歯氏らによる事件の発覚後、全国各地で多数の建築士がかかわった耐震偽装が明るみに出ています。業界全体から耐震偽装の根を絶つためにも、偽装がなぜ、どのように行われたのか、全容解明と責任の明確化は不可欠です。
同時に求められるのは、姉歯元建築士のずさんな構造計算書偽造を長期にわたって見過ごし、被害を拡大させた民間確認検査機関イーホームズの責任など、建築確認・検査制度をめぐる問題です。多くの案件の審査を手がけたイーホームズは、「だれがみてもすぐわかる」といわれる欠陥を見過ごしました。姉歯元建築士は国会で、「図面を見ていなかったのではないか」とまで語っています。どんな検査がおこなわれたのか、そこに違法な行為はなかったのか、この点でも全容究明の責任は極めて重いといわなければなりません。
規制緩和にメスを
耐震偽装事件の全容究明は捜査当局だけの責任ではありません。政府と国会も重い責任があります。
政府は一九八〇年代以来、建築規準の規制緩和を進め、とくに九八年の建築基準法改悪で建築確認・検査を民間に開放しました。そのことが営利のために検査を甘くする事態を招き、事件の土壌を作ったのではないか、規制緩和の誤りについても徹底してメスが入れられるべきです。
建築業界では、安上がり競争のなか、欠陥・手抜き工事をする悪質業者が入り込む危険性が常にあるといわれます。だからこそ業界の責任だけでなく、行政の関与とその責任は厳しく問われなければなりません。