2006年4月7日(金)「しんぶん赤旗」

医療格差を拡大

改悪案審議入り 高橋議員が質問

負担増、患者追い出し


 小泉内閣が今国会での重要法案の一つと位置付ける医療改悪法案が、六日の衆院本会議で審議入りしました。高齢者への容赦ない負担増、医療費の総額抑制と療養病床の削減、保険のきかない医療の拡大など公的医療制度の土台を崩す内容の改悪案(表参照)です。


写真

(写真)質問する高橋議員=6日、衆院本会議

 本会議で質問に立った日本共産党の高橋千鶴子議員は「高齢者や重い病気に苦しむ患者に負担を強いることは、いっそう大きな苦痛を押しつける」と批判、「『所得の格差』が『命の格差』につながるような社会はあってはならない」と、法案の撤回を求めました。

 小泉純一郎首相は「必要な医療まで妨げられるものではない」と負担増を合理化しました。

 改悪案では、現在三十八万床ある療養病床について、介護型病床の全廃などにより六年間で二十三万床を削減します。高橋氏は、特別養護老人ホームの待機者は三十八万人を超えていることなどをあげ、「病床が削減されれば、入院患者の行き先がなくなる。患者の追い出しそのものではないか」と追及しました。

 川崎厚労相は「医療の必要性の低い方は、老人保健施設、ケアハウスに移行することで『社会的入院』を解決する」とのべるだけでした。

 現在例外的に保険のきかない医療を認めている「特定療養費制度」をなくし、再編する問題について、高橋氏は「保険を適用しない分野を拡大する懸念がある」とのべ、お金のない人が十分な治療が受けられないという「『治療の格差』をつくり出す」と批判しました。


医療改悪法案のポイント
高齢者狙い撃ち
高齢者患者の窓口負担増
・現役並み所得の70歳以上の高齢者
 2割 → 3割  (今年10月〜)
・70歳〜74歳の高齢者
 1割 → 2割  (2008年4月〜)
・長期入院する高齢者の負担増
 70歳以上の高齢者に食費、居住費の負担(今年10月〜)
介護療養型医療施設の廃止(12年4月〜)
 医療・介護型合計38万床を医療型のみ15万床に大削減
高齢者医療制度の創設(08年4月〜)
 75歳以上の全高齢者から保険料徴収など
高額療養費の自己負担限度額引き上げ
保険のきかない医療分野を拡大する「混合診療」の本格的な導入
「医療費適正化計画」導入で医療給付費の抑制を狙う


「治療の格差」つくるな

医療改悪法案 高橋議員の質問(要旨)

衆院本会議

 日本共産党の高橋千鶴子議員が六日の衆院本会議でおこなった医療改悪法案への質問(要旨)は以下の通りです。

 小泉内閣の五年間、年金や医療などの連続改悪で負担増と給付減が繰り返されました。四月から障害者「自立支援」法や介護保険の負担増が始まります。

 深刻な健康被害が広がり、社会保障に対する強い不安や不満が広がっています。この法案による負担のさらなる押し付けが、経済格差を広げることは明らかです。

 国民健康保険料の滞納が四百七十万世帯に達し、保険証の取り上げは五年間で三・三倍に拡大しています。正規の保険証がないために病院にも行けず、命を落とすなど悲惨な事件も報じられています。この事態をどう認識するのですか。

高齢者狙い撃ち

 法案の特徴の一つは、高齢者などへの容赦ない負担増と医療の切り捨てです。もう一つは、医療給付費の削減を「医療費適正化」計画に定めて強行し、混合診療など保険のきかない医療を拡大するものです。

 法案によれば、今年十月から、七十歳以上の「現役並み所得者」の窓口負担は二割から三割になります。療養病床に入院する七十歳以上の食費・居住費も保険の適用が外されます。この負担増は、二〇〇八年四月からは六十五歳以上に対象が拡大され、一カ月の入院費は十三万円を超えます。医療費が高額になったときの「高額療養費制度」も限度額が引き上げられます。

 「医療費の削減」を理由に、高齢者や重い病気に苦しむ患者に負担を強いることは、いっそう大きな苦痛を押しつけると思いませんか。

 〇八年四月から導入される「高齢者医療制度」は、現在家族に扶養され保険料がかからない二百四十万人の高齢者も含め、七十五歳以上のすべてを対象に、年間平均七万四千円の保険料を徴収します。介護保険料と合わせると月額一万円を超える額が年金から「天引き」されます。

 お年寄りを狙い撃ちした負担拡大の押し付けは許せません。

懲罰的「適正化」

 経済財政諮問会議は、GDPの伸び率と高齢化を加味した「基準」で医療費を管理し、医療給付費の総額抑制を求めました。法案は「医療費適正化計画」を策定して「目安指標」を定めるとしています。この「目安」とはどのような内容を持つものですか。

 生活習慣病の減少、疾病の早期発見・早期治療体制を整備するなどは、本来、国の責任ではありませんか。

 平均在院日数の削減について、全国平均の在院日数ともっとも短い県との差を半分にする目標を立てます。これが患者の病院追い出し、医療機関に病床転換を強要するなど、事実上、懲罰的な設定になりませんか。

 政府は、現在三十八万床の療養病床を、今後六年間でその六割、二十三万床を削減するとしています。長期入院患者に必要な医療的管理や容体の急変に適切に対応する病床の確保ができなくなりませんか。

 特別養護老人ホームの待機者が三十八万人を超えるなど、地域の「受け皿」は不足しています。病床削減は、患者の追い出しそのものではありませんか。

国の責任で充実を

 日本の医療費水準は国際的に見て高くはありません。一人当たりの医療費はOECD加盟国中九番目。総医療費をGDP比較で見ると7・9%で十七番目。医療費削減どころか、経済力に見合った医療の充実こそ、果たすべきです。

 日本経団連は、大企業の保険料負担を軽減したいという要求を露骨にしています。

 昨年の厚生労働省の「医療制度改革試案」には、外来受診一回当たり五百円―千円までを保険対象から外す「保険免責制度」が盛り込まれました。本「改正」案には入りませんでしたが、政府文書に書き入れたこと自体、重大です。「保険免責制度」の導入はすべきでないと考えます。

 「特定療養費制度」を再編し、これまで例外的であった差額ベッド代など以外に、「高度医療技術」や「生活療養」などの名目で、保険を適用しない分野を拡大する懸念があります。

 新しい医療技術や新薬の利用、手厚い治療などは、お金のある人だけが受けられ、そうでない人は十分な治療が受けられない「治療の格差」をつくり出します。「所得の格差」が「命の格差」につながる社会は、あってはなりません。

 憲法二五条の精神に照らして、医療での国の責任と負担を大幅に拡充し、すべての人が、安心してかかれる医療制度を築くべきです。この道を大きく踏み外す改悪案の撤回を強く求めます。


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