2006年3月20日(月)「しんぶん赤旗」
列島だより
「自立支援」法 来月実施
障害者の権利どう守る
独自軽減 踏み出す自治体
障害者「自立支援」法が四月一日から実施されます。定率一割の利用者負担など障害者福祉のあり方を大本から変えてしまう国の制度改悪にたいし、日本共産党は緊急要求を発表しています。自治体の中には「なんとかしてほしい」という障害者、家族からの要求にこたえて、独自に軽減策に踏みだすところが出ています。
利用料半減 対象7割
北海道・帯広
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北海道で初めて、帯広市が低所得者の障害者への負担が軽くなる措置をとりました。軽減を求め運動をしてきた障害者らは喜びの声をあげています。
同市の軽減措置は、国の軽減対象である市民税非課税世帯に加え、所得税非課税世帯まで対象を広げました。利用者負担額の月額上限額は三万七千二百円から一万二千三百円になりました。また、サービス利用一回当たりの利用料を半分(10%から5%)に軽減します。
障害者関連事業費が利用者一割負担により、市の持ち出し費用も一割減りました。減った一千万円を財源として軽減措置を実施しました。同市の障害者は約千人。今回の軽減策では、約七割の人が対象になります。
農業が盛んな十勝地域、帯広市はその中核都市です。しかし、不況により就職は難しく、障害者はなおさら仕事がない状況です。
軽減策を市に申し入れたNPO法人「フリーダム十勝」。主に障害児の居宅支援サービスを行っています。軽減措置で帯広市の利用者の半分が対象になりました。理事長の田中利和さん(44)は「国の決めた上限額は高すぎてそこまでは使わない。上限の引き下げはうれしい。もっともみんなに喜ばれているのが、一回ごとの利用料が半分になったこと」と述べます。
「フリーダム十勝」に長男(16)が通っている谷内町子さん(56)も今回軽減になりました。長男は寝たきりのため毎日利用しています。現在三千円の料金が、「自立支援」法により約三万円になります。軽減措置により上限額が一万二千三百円になります。谷内さんは「利用を減らすわけにもいかず悩んでいたところ。軽減になって助かる」と話す一方、「夫の失業保険で家族四人が暮らしています。医療費も負担が重くなり、もっと障害者にやさしい政治であってほしい」と不安を隠せません。
二人の障害児を抱え働く若いお母さんも「フリーダム十勝」を利用しています。働かなくては子育てをすることができません。軽減措置により半減以下になりました。
日本共産党市議団は障害者らの声を議会で紹介し、軽減策をもとめてきました。稲葉典昭市議は「二年前の支援費制度になった時から市独自の軽減を行ってきた。障害者らが声を出し、切実な実態を訴えてきた成果です」と語ります。
(北海道・岡田かずさ)
負担10%を3%に
東京・荒川区
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東京都荒川区は、ホームヘルパー派遣など在宅の全サービスを全所得階層で区独自に利用者負担を10%から3%に軽減する措置を講じます。また通所施設の食費を50%に軽減します。(いずれも二〇〇八年度までの激変緩和措置)
さらに、在宅でサービスの利用料が多い障害者の月額負担上限を半額に抑える軽減策を実施します。また児童デイサービスについては現状の負担を増やさないと約束しています。
現在、支援費サービスを利用している人は約六百人で、そのうち四百人ほどがこの適用を受けることになります。
日本共産党区議団は本会議や委員会で繰り返し質問し、〇六年予算の復活重点要望にも盛り込み条例提案の準備も進めて実現を求めてきました。障害者と家族の皆さんから「これまで無料だったのが月に二万も三万円も負担が増える…」「福祉作業所の労賃は月に八千円くらいです。それ以上の利用料を支払うことになります。これが自立支援でしょうか」など心配の声が寄せられていました。
荒川区も「収入の認定範囲が本人から同一世帯に拡大されるが、家計の実態は何ら変わらないこと」「現在ほとんどの利用者が無料であり国や東京都の軽減策のみでは不十分であり、家計にあたえる影響が極めて大きい」との認識をもって検討をしてきました。実施の説明を聞いた関係者から大変歓迎されています。
ひきつづき医療費や補装具も含めた負担軽減策、市町村が実施主体になる手話通訳やガイドヘルパーなどの無料継続、区内十カ所の小規模作業所の運営費の確保など、区内関係団体の皆さんと共同し取り組んでいきます。(斉藤くに子区議)
障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会事務局長 白沢 仁氏 障害者「自立支援」法の問題点はさまざまに指摘されていますが、もっとも懸念されるのが「定率(応益)負担」制度の導入です。障害者がサービスを利用すれば一律に一割の負担を徴収されることから、いくつものサービスを必要とする重度の障害者ほど負担が重くなるという非常に逆進的な制度です。しかも施設利用者にたいしては、一割負担以外に、食費・水光熱費等が全額自己負担となります。
国は激変緩和策としての軽減措置を講じるとしていますが、所得の少ない障害者にとっては大幅な負担増になることは間違いありません。
すでに負担できない障害者がサービス利用を断念するといった、あってはならない問題が全国各地で生まれており、あらためて国に制度の抜本的な見直しを求めていかなければなりません。
同時に、制度の実施主体である市町村にたいして、利用料の減免措置を求めるとりくみが今日、大変重要です。現在、帯広市や荒川区以外にも、京都市、横浜市などで減免が実施されようとしており、これらの成果と経験をすべての市町村に広げていくことが大切になっています。
日本共産党の「緊急要求」の骨子
1、利用料が払えずサービスが受けられなくなる事態が起きないようにする
2、実態にみあった障害認定と支給決定をすすめる
3、市町村の地域生活支援事業へ財政支援の強化を
4、国・自治体の責任で基盤整備を緊急にすすめる