2006年3月20日(月)「しんぶん赤旗」
主張
義務教育費
地方の格差を直視しないのか
公立小中学校の教員給与の国庫負担率を現行の二分の一から三分の一に引き下げる義務教育費国庫負担法改悪案が、自民党、公明党の賛成で衆院を通過し、今週から参院で審議が始まります。
国庫負担制度は、憲法と教育基本法に定められた教育の機会均等、水準維持、無償性の確保という義務教育の根幹を保障しています。
国庫負担の削減は、国民の教育権保障への国の責任の後退です。
廃止に劣らない影響
現行の二分の一の国庫負担制度は、国の責任の維持のために「優れた保障方法であり、今後維持されるべきである」と、中央教育審議会答申(昨年十月)も太鼓判を押していました。
ところが、小泉内閣は、答申を無視して、「三位一体の改革」についての政府・与党合意(昨年十一月三十日)で、国庫負担率の三分の一への引き下げを盛り込みました。
義務教育費国庫負担制度が、国から地方への財政支出を削減する「三位一体の改革」の標的にされたのです。「そこには何の教育論もない」(中央教育審議会の鳥居泰彦会長。「毎日」三月五日付)との声があがるほどです。
義務教育費の国庫負担制度の堅持は、自治体の六割以上の議会が求めている、地方の多数意見です。
政府は、「数字はいじったが、制度は堅持した」とのべています。
国庫負担率が三分の一に引き下げられても、都道府県の負担が三分の二に増えるので、「全額保障は維持されている」というのです。
国の責任の後退と、地方の負担増による教育条件への影響を、政府は考慮しないまま、「制度を堅持した」と繰り返しています。しかし、三分の一への引き下げは、「制度堅持」どころか、「廃止」にも劣らない影響を、地方の教育条件にあたえかねないことが明らかになりました。日本共産党の石井郁子議員の、衆院文部科学委員会(八日)の質問です。
国庫負担率が三分の一になった場合、地方の負担額は八千五百億円増える。一方で、国税から地方税へと「税源移譲」し、地方交付税も見直しをする。だから国庫負担を削減しても、義務教育の水準は維持できる―。こう政府は説明してきました。
しかし、都道府県別に、国庫負担削減額と税源移譲配分見込み額を比べると、三十九道府県で、財源不足が生じることがわかりました。石井議員に文部科学省が提出した試算を示して追及しました。
東京都や神奈川、埼玉、千葉、愛知、静岡、大阪、兵庫の各県で増える一方で、北海道、東北、北陸・信越、中・四国、九州・沖縄で大きく減っています。
文部科学省は、先に制度を廃止した場合に四十道府県で財源不足が生じると試算していましたが、それに匹敵する影響を与えるのです。
少人数学級危うくする
財政力で、教育水準に格差が生じてはならないというのが、義務教育費国庫負担制度の精神です。
不足分を地方交付税で措置するといっても、交付税そのものが大幅に減額されているいま、地方に困難をもたらすことは自明です。
自治体独自の少人数学級が今春実施の香川県を含め四十六道府県に広がりました。国庫負担の削減は、地方の財源を不安定にして、少人数学級を危うくしかねません。
参院での審議で、政府は、義務教育費国庫負担制度を、現行の二分の一に戻すべきです。