2006年3月8日(水)「しんぶん赤旗」
主張
国民投票法案
九条改憲へのよこしまな策動
衆院憲法調査特別委員会は、改憲のための国民投票法案の国会提出に向け、同委理事懇談会で協議を始めることを決めました(日本共産党と社民党は反対)。戦争を放棄し、戦力の保持と交戦権を否定してきた憲法九条を改定し、日本を「海外で戦争する国」に変える道への新たな踏み出しであり容認できません。
「ルール」ですまない
自公民三党は、いま開かれている通常国会への国民投票法案共同提出に向け、水面下の交渉を続けてきました。同理事懇談会での協議は、国民投票法案提出への動きを加速するものです。
憲法の改定は衆参両院で三分の二以上の賛成で発議された後、国民投票で決められます。国民投票のやり方を定める国民投票法の制定はあくまでも改憲が前提です。
自民党が昨年十一月に発表した「新憲法草案」で自衛軍の保持などを打ち出し、前原誠司民主党代表も十二月の米国での講演で「集団的自衛権行使」をのべるなど、改憲案の具体化がすすむにつれ、改憲勢力の狙いが憲法九条改悪にあることはいよいよ明らかになっています。
国民投票法案を国会に提出しようとするのは、九条改憲と一体の、よこしまな動機があるからです。
先月、大阪市内で開かれた公開討論会で、改憲勢力の代表は「憲法改正がもう目の前にきている。その中で手続き法を整備する大きな責任がある」(船田元・自民党憲法調査会長)、「改憲内容の議論は詰められてきており、タイムリミットは近い」(枝野幸男民主党憲法調査会長)、「九条を最大の論点として加憲論議をすすめているが、その筋道を定めるべく早期に成立させたい」(斉藤鉄夫公明党衆院議員)と、国民投票法案は「九条改憲」のためのものであることをあけすけに語っています。
改憲勢力は、その動機を隠そうと、「憲法改正の手続きと憲法改正の内容を切り離して議論すべきだ」として、中立・公正な投票ルールをつくるだけであるかのように装っています。そのために「憲法九六条が憲法改正手続きを定めているのに憲法改正国民投票法を整備してこなかったのは『立法の不作為』だ」という議論まで持ち出しています。
「立法不作為」は、国家賠償請求訴訟で、ある法律ができていないために国民の権利が侵害されていることなどにかかわって生じる問題で、まったく話がちがいます。憲法公布から六十年間、国民投票法案がないために国民が不都合を感じるということは一度もありませんでした。世論調査でも、「戦後の日本の平和維持や国民生活の向上に今の憲法が果たした役割」について、八割が「役立った」と回答(「毎日」五日付)したように、国民は憲法を高く評価しています。
一九五三年には当時の自治庁が、改憲策動の高まりのなかで国民投票法案を準備したものの国民の反対で閣議決定できず、国会提出にいたりませんでした。その後も改憲策動はくりかえされましたが、国民投票法案は提出されていません。国民が改憲の必要性を認めなかったからです。
九条守れの運動広げ
国民世論の多数は、「九条改憲」に反対です。「戦争をする国」をめざす九条改憲は、国民の平和の願いとは決定的に矛盾しています。
「九条の会」をはじめ、憲法を守りぬこうという国民的共同が広がっています。「憲法九条守れ」の声と運動をさらに広げ、改憲勢力のたくらみを打ち破ることが重要です。