2006年3月7日(火)「しんぶん赤旗」
9条の国に根をはって
署名 有権者の過半数達成
うまず たゆまず毎週行動
長野市 稲田・徳間地区
「ほら、集計して」。長野市東部の「平和憲法を守る稲田・徳間地区連絡会」のメンバーは、楽しそうに集めたばかりの「憲法9条を守る署名」の数を出しあいます。その数七十六人分。「やったね」と歓声があがりました。累計で三千三十一人分。目標とした地区有権者の過半数を五日、達成しました。
長野県には地域、職場、学園で二百七十一もの「9条の会」が活動しています。その先陣を切って稲田・徳間の会が署名を集めています。
戦争は二度と
五日午前十時、地元生協の店舗前。同会のメンバー六人がやってきました。事前の打ち合わせもなく、各人が「憲法を守る署名でーす」と、買い物客に駆け寄ります。一時間の行動中、けっして“待ち”の姿勢にならない。そこに同会の意気込みが伝わってきます。
買い物袋を下げた女性(68)は「終戦の年に養父が戦病死しました。私が小学校一年のときでね。いま療養中の義母も東京大空襲で焼夷(しょうい)弾に追われて…」といい、「戦争は二度とごめん」の思いを込めて署名しました。
長野県で、憲法九条を守る県民過半数署名の運動が始まったのは二〇〇四年五月三日。翌月十日に作家の大江健三郎さん、加藤周一さんらが「9条の会」をつくりました。
その一週間後、稲田・徳間の会が発足しました。四十二人の呼びかけ人は大工さん、そば屋さん、医師、保育園の園長ら党派を超えた多士済済。
同会の主な活動は行政区の有権者の過半数、三千人の署名を目標に、週一回一時間の行動をすることです。事務局長の神戸今朝人さん(78)は「うまずたゆまず平和の世論をつくるため」といいます。国会で改憲派が多数を占めても、国民世論で反撃しようというのです。
目標引き上げ
神戸さんは、戦前軍需工場に動員された苦い経験があります。爆発すると中に仕掛けてある無数の鉄片が人を殺傷する「親子爆弾」や、生きて返れぬ人間魚雷の部品を作らされました。「また国民を戦争に動員させてたまるか」の“執念”が署名行動に駆り立てます。
五日の行動に参加した朝比奈恒子さん(55)は「四人の息子を戦争にとられたくない一心です」。須藤清美さん(49)も「娘のために」。戦争が現実感をもって迫ってくるという二人。「母親として何もしなかったのか、と後世にいわれないよう、いまできることはしたい」(須藤さん)
「会」では署名だけでなく、イラクで活動するNGO(非政府組織)スタッフや地域の保守層に影響力をもつ医師らの講演会を開きました。講演会の都度、地元住民が民謡や三味線、コーラスを披露。楽しい催しにしています。
「文化的な活動なんだ」と胸をはる神戸さん。二年前の「会」発足時の目標を達成したいま、人口急増地域なので目標を引き上げて署名を集める方針です。「平和を守る運動に終わりなんてありゃしないよ」と笑います。(海老名広信)