2006年3月3日(金)「しんぶん赤旗」
列島各地 9条守れ
首長から戦争体験者まで
語りたい“平和が一番”
「憲法九条守れ」の運動が、日本列島各地で広がっています。職場や地域、各分野で「九条の会」の結成が相次ぎ、憲法を守る大切さを語り合い、学習会や講演会、宣伝を実施し、署名をすすめています。
短期間で設立
北海道のほぼ中央、かつての炭鉱の町、赤平市で二月十二日に結成された「赤平九条の会」。寺の住職、元市助役、元高校校長、会社社長、町内会長、市議会議員ら十八人が昨年暮れ、準備会をつくり、著名九氏がよびかけた「九条の会」アピールの賛同者を広げることを決め、二カ月余の短期間で設立に至りました。
設立の集いには高尾弘明市長もかけつけ、「戦後六十一年、憲法公布六十年のいま、九条を改定しようとする動きが激しくなっている」と切りだし、一昨年十二月市議会で「九条は、日本が世界に誇りとする宝であり、大事にしなければならない」と答弁したことを紹介しました。「みなさんの運動に敬意を表するとともに、いっそう運動を広げていただきたい」とあいさつしました。
福島県の北端に位置する桑折(こおり)町に二月十一日、誕生した「桑折九条の会」でも、林王喜久男町長や高橋宣博議長をはじめ地域住民が結成大会に参加しました。林王町長は「憲法九条は世界、人類の恒久平和を示すもので、高く評価されている。戦争が風化しつつあるなか、この結成大会は意義深いものがある」とのべました。
同会は、よびかけ人四十三人、賛同者七十五人と幅広い人たちが集まって、結成されました。
千曲川源流に
「いまこそ悲惨な戦争体験を語り継ぎ、改憲の動きを阻止したい」との願いを込めて、「九条の会」が都市だけでなく地方にも広がっています。
二月十一日には、長野県東部、南佐久の小海町、南牧、川上、南相木、北相木の四村を対象にした地域でも、「千曲川源流九条の会」が発足しました。
キリスト教牧師が講師になり、九条をとりまく現状や自民党などの改憲の動き、問題点をミニ勉強会形式で学びました。次いで、学徒出陣で召集された人、貧しい生活からのがれたいと職業軍人の道を選び戦地に赴いた人、中学生のとき、広島で被爆した人がそれぞれ、戦時中の実体験を昨日の出来事のように生々しく話しました。
会場からの発言でも、日本から中国東北部に送り出された満蒙開拓団として壮絶な体験をした人や、南方戦線へ徴兵された人が「いま話しておかなければ」とこもごも訴えました。若い世代に伝える企画を計画します。
語りつぐ活動
同県の東南部、諏訪地方では、一月二十九日に誕生した「富士見町九条の会」の発足により、六市町村すべての自治体に会が結成されました。
「戦争体験者が少なくなったいまこそ、戦争がもたらす不幸を語り継ぐ活動を」と矢嶋民雄町長がメッセージを寄せ、町内に在住する戦争体験者二人が発言しました。
進藤五十鈴さん(74)は、六十年前に青写真の裏紙に絵の具を薄めてえがいた絵巻物を会場に展示し、母親がつくった防空ずきんをかぶり、「戦争は絶対やってはならない」と語りました。
五味幸さん(80)は「戦争は骨身にしみています」と前置きし、旧満州の開拓に入植した家族が敗戦と同時に襲撃された事件を語りました。「銃弾を頭に受けて父は即死、死んだ母親にすがる子ども、全滅寸前に八路軍(中国人民解放軍の前身)に救われました」と話すと、会場は静まり、涙を流す人もいました。
陶芸作家らも
各分野別の「九条の会」も次々と結成され、活動を始めています。
兵庫県では、女性「九条の会」が二月五日、結成のつどいを開きました。丹波焼作家の石田陶春さんがあいさつし、後藤玲子弁護士が講演、ラジオパーソナリティーの小山乃里子さんが番組でのエピソードを交えつつ、「いろんなことをテーマにとりあげますが、『やっぱり平和が一番よね』ということを語り続けたい」と話しました。
よびかけ人には、三氏のほか、作家の小川洋子さんら三十二人が名を連ねています。
宮城県の「女性九条の会」は、憲法問題連続講座を開催しています。一月二十九日には、二回目の講座を開き、六十三人が参加しました。
環境を破壊へ
神奈川県では、自然保護や環境問題に関心のある人たちが二月四日、「かながわ環境・九条の会」を発足させました。
環境問題の市民運動、住民運動に携わる研究者や弁護士、医師、宗教者ら四十人がよびかけ、準備をすすめてきました。
丹沢の自然保護運動にとりくんでいる梶谷泉さんは、戦争中に丹沢のブナが飛行機のプロペラの材料として伐採された歴史を紹介し、「環境サイドの九条の会が発足し、大変勇気づけられます」と話しました。
会には百十三人が参加し、「最大の環境破壊である戦争のない平和な世界を築くため、日本国憲法九条を守るという一点で手をつなごう」と話し合いました。
高知県では二月八日、俳句愛好者二十五人が集まり、「俳句を愛するこうち『九条の会』」が発足しました。
昨年七月から、毎月会合を重ね、手紙で賛同をよびかけてきました。
会報の発行や四季折々に俳句の会を開くこと、署名用紙を独自に作成して、協力を広げようとみんなで話し合いました。
署名は「俳句という短い言葉でくらしや自然を語ってきました。俳句をすることは、平和なくらし、豊かな自然が守られてこそ生まれるものです」と訴えています。