2006年2月19日(日)「しんぶん赤旗」
主張
BSE米報告書
安心どころか疑念が深まる
日本向け米国産牛肉に、BSE(牛海綿状脳症)の病原体が蓄積しやすい脊柱(せきちゅう)が混入していたことをめぐって、米国農務省が報告書を日本政府に提出しました。
米国政府は、報告書提出で「日本の消費者の理解」(米駐日大使)を得て、輸入再開を迫ろうとしています。
個別のミスで片付ける
報告書の内容は、脊柱の混入を個別の輸出業者と検査官のミスによる「例外的なケース」として片付け、米国のBSE対策の不備をまったく問題にしていません。
脊柱混入が成田検疫所で発見されてからも、米国産牛肉の安全性に疑問を抱く報告が次々と明らかにされています。BSEリスク(危険性)の高い歩行困難牛二十九頭が食肉に回されていたという米農務省監査局の監査報告もその一例です。
BSEにたいする米国のずさんな対応が、日本の消費者を不安にさせています。
米国産牛肉の輸入再開にあたって米国は、二つの条件(1)全月齢の危険部位(脊柱など)の除去(2)二十カ月齢以下の順守を約束しました。脊柱混入は、この前提条件を順守する保証が米国側にないことを改めて示したものです。
そこへの疑問をぬぐい去るだけの、米国のBSE対策の強化があってしかるべきです。それなのに特異な個別の事例として、収束させてしまうところに、米国への不信感がつのります。
報告書は、脊柱の混入が「日本との合意条件に沿うものではない」が、「国民の健康を害するものではない」とのべています。ここには、危険部位の除去にたいする米国の認識のなさがよくあらわれています。
米国は、“BSE検査より、危険部位の除去が大事だ”といって、日本に全頭検査の緩和を迫る口実に使ってきましたが、実際は危険部位の除去の意義すら、わかっていないのです。だから、脊柱を混入させても、国民の健康には影響がないと平気でいうのです。
日本政府は、脊柱混入問題の「責任は米国にある」といってきましたが、米国の圧力に屈して、輸入再開した日本政府にも責任があることは火をみるより明らかです。
輸入再開した後の査察でも、農水、厚労の両省は、実際に日本向けのもので危険部位を除去しているところを見ていないのに、消費者や食品安全委員会には、“問題なし”と報告していました。
日米で合意された輸入再開の前提条件は、順守される保証がまったくなかったというのが実情です。
牛肉の安全性をめぐる問題は、小手先の対応で解決する問題ではありません。
日本では、米国の圧力により、と畜場のBSE検査の基準が全頭から二十一カ月以上になった(昨年七月)あとも、国の予算で全自治体が全頭検査を続けています。
国内二十二頭目にあたるBSE感染牛の飼料に肉骨粉が含まれていることが初めてわかり、感染の原因究明の手がかりをつかんでいます。
日本と同じ全頭検査を
米国は、BSE検査の予算を減らす方針ですが、これではいまでさえきわめて不十分な汚染実態の把握を、さらに後退させることになります。
日本政府は、「報告書の内容を精査して、対応を検討する」といいます。全頭検査、全月齢の危険部位除去という日本と同等の安全基準が確保されるまで、輸入再開はすべきではありません。