2006年2月11日(土)「しんぶん赤旗」
医療改悪法案
またも負担増ズシリ
これでは病院に行けない
十日、国会に提出された医療改悪法案。「医療費適正化」のうたい文句のもとでつくられた法案には、国民を直撃する「負担増メニュー」がずらりと並びます。そのおもな内容は――。
■高齢者の窓口負担
■2倍の支払いも
法案は、七十歳以上の高齢者の窓口負担の引き上げを盛り込んでいます。
今年十月から、「現役並み所得」の七十歳以上の窓口負担が現在の二割から三割に一・五倍にはね上がります。「現役並み」とは、夫婦二人世帯で年収六百二十万円以上(二〇〇六年度実施の公的年金等控除の見直し後は五百二十万円以上)の場合です。たとえば、いま二割負担で月七千六百二十円(糖尿病・月三回通院)の窓口負担は、三割で一万一千四百三十円にもなります。
〇八年四月からは七十―七十四歳の窓口負担を一割から二割に上げます(「現役並み」以外)。七十―七十四歳の年間医療費の窓口負担の平均はいま七万円ほど。これが二割負担になれば十四万円もの負担になります。
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■長期入院の高齢者
■月額2万8千円増
長期入院の場合も新たな負担が待ち受けています。今年十月から、療養病床に入院する七十歳以上の食費、居住費などが対象です。
いま入院食として月二万四千円(食材費相当)が患者負担。法案はこれに「調理コスト」を加え、四万二千円に引き上げます。さらに「水光熱費相当の居住費」一万円をとります。合わせて二万八千円の負担増となります(厚生労働省の試算)。
■新しい高齢者医療制度
■年金から保険料天引きも
新たに「後期高齢者医療制度」を〇八年四月からつくります。七十五歳以上(約千三百万人)すべてから保険料をとります。
いまの制度では、健康保険の被扶養者として保険料を払っていない高齢者(約二百五十万人)がいます。法案では、この人たちからも年金からの天引きなどで保険料をとるというのです。年間の保険料は厚労省の試算で七万四千円。すでに払っている介護保険料と合わせると、大変な出費です。
さらに、国民健康保険に加入する六十五歳以上からも国保料を年金から天引きする仕組みを導入します。
制度の運営は、各都道府県内のすべての市町村で構成する広域連合があたるとしています。
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■高額療養費
■限度額を引き上げ
重い病気で医療費が高くなる場合に、上限を設けて患者負担を軽減するのが高額療養費制度です。法案では、自己負担の限度額の引き上げが盛り込まれました。
七十歳未満で所得が一般(月収五十三万円未満で住民税課税)の人が胃がんで医療費百五十万円、三十日間入院した場合、いま一カ月の自己負担額は八万四千八百九十円です。これが、九万二千四百三十円に、約八千円引き上げられます。
七十歳以上で所得が一般(月収二十八万円未満で住民税課税)の場合、これまで一カ月の負担上限額は四万二百円でした。これが、四万四千四百円へ、四千二百円引き上げられます。
腎臓病などにより継続的に人工透析を受けている患者の負担限度額も引き上げられます。いまは月一万円ですが、法案では、七十歳未満で月収五十三万円以上の「上位所得者」について、月二万円へ二倍に引き上げられるのです。
■療養ベッド
■介護型13万床全廃
長期に入院している高齢者を一律に「入院医療の必要性が低い」と決めつけ、療養病床(ベッド)の大削減を打ち出しました。
いま療養病床は全国で、医療型(医療保険を適用)二十五万床と介護型(介護保険を適用)十三万床を合わせて三十八万床。これを二〇一二年までに介護型を全廃し、医療型十五万床に移行させます。それ以外の二十三万床は、老人保健施設やケアハウス、在宅などに切り替えるとしています。あまりに乱暴な方針に、自民党の総務会のなかでも「受け皿がない」と異論が出ました。