2006年2月3日(金)「しんぶん赤旗」
ライブドア株で被害
自民が応援 だから 購入
“銀行は金利つかない”
個人「投資家」の実情
「老後の資金だったのに」「自民党が持ち上げていたから大丈夫かと」…。資産運用などでライブドア株を購入していた人たちが、ライブドア前社長の堀江貴文容疑者(33)らによる証券取引法違反事件と同社株の暴落で大きな被害を受けています。規制緩和に乗った虚飾経営の裏で、個人「投資家」の実情はどうなっているのか――。
「落ち込んでいます。年金で(生活を)やっているから…」。栃木県の年金生活者の男性(63)は、心境をこう語ります。インターネットと証券会社を利用し、株の取引を始めて三年ほど。昨年のメディア買収騒動時と総選挙後のことし一月の二回にわけて計一万株を買いました。
「あんな汚いことをやっているとはわからなかった。機関投資家なんかは損しないんでしょうけど、私らはテレビを見て、ですからね」
■損失350万円以上
年金は月二十万円弱。株取引は「老後の資金」を増やすためでした。「銀行は利子がつかないですからね」。一月十六日の強制捜査前、六百九十六円だったライブドアの株価は、一日には百円を割り、二日も終値八十五円と八分の一以下にまで暴落。男性の損失は三百五十万円以上に上っています。「気持ちが落ち込みますね…」
男性はいいます。「株だから仕方ないと思うところもあります。でも、テレビであんなに話題になってて、選挙では自民党も応援し、あれだけ政治家が肩入れしているから、いいだろうと思ったんです。マスコミとか自民党は悪かったですよね。(ライブドアを)持ち上げて。わからない人は乗っちゃいます」
約二百万円の被害を受けた静岡県在住の女性(62)は、「初めて自分の意思で買った株なんです」と語ります。二〇〇四年六月の近鉄買収騒動のとき、ライブドア株二千株を購入しました。
■「苦労したんだ」
きっかけは、堀江容疑者の“半生”を描いたテレビ番組。「苦労してきたんだと思った。それにどんな相手にもTシャツ姿で、堂々としているように見えた。新しいタイプのリーダーがでてきたと思いました」。二〇〇〇年ごろから始めた株取引で、初めて証券会社の勧めではない銘柄を買い、保有し続けました。堀江容疑者に対する「期待、応援の意味がありました」。
高齢の母親と二人暮らしで、貯金はありますが、それを崩して生活しています。「強制捜査のニュースを見たときは冷や汗が流れました。今回の事件で、期待はパーになりました」
■老後資金失った
横浜市の自営業の男性(36)がライブドア株を買ったのはことし一月六日。ネット取引で一千株。株価は十日ほどで暴落しはじめました。「困惑しています。売買がずっと成立しないのでどうすることもできなくて…」
購入動機は、ライブドアが証券会社の推奨銘柄にあったこと。「報道や自民党の応援ももちろん考慮に入れました」
貯蓄の半分の四百万円を株取引で運用していました。損害は約六十万円。「売ったり買ったり、火事場ドロボウみたいなことをする人はごくわずかで、普通の人が老後の資金をなくしたとかがほとんどだと思います。私もそういう状況、同じ思いです。お金を銀行に預けても、金利が全然つかない」
ライブドア株主は二十二万人に上るとされ、粉飾決算は株主に対する明らかな詐欺行為になることから、同社に対する損害賠償請求なども検討されています。