2006年2月2日(木)「しんぶん赤旗」
“食の安全まで米国まかせ”
牛肉輸入 日本と同じBSE対策を
消費者・生産者が要請・抗議
小泉内閣がアメリカ産牛肉の輸入再開を強行してわずか一カ月余で、輸入牛肉に危険部位が含まれていたことが発覚。同時に輸入再開前に現地調査するとの閣議決定もアメリカとの協議で中止していたことが明らかになり、消費者、生産者から「食の安全までアメリカまかせにするのか」との批判が高まっています。
■中川農水相はやめよ
一日には、冷たい雨が降る東京・有楽町マリオン前で、全国食健連(国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会)と農民連(農民運動全国連合会)の代表が次々マイクを握り、「日本と同じ安全対策をアメリカがとるまで輸入の再開やめよ」と訴えました。
同団体は、訪米してアメリカのBSE(牛海綿状脳症)対策の実態を調査し、そのずさんな内容に輸入再開の危険性を指摘してきました(別項)。この日の宣伝行動でも、「アメリカでは食肉検査官が危険部位という認識がなかったという。検査体制ができていない」と指摘し、「BSEは感染したら命が失われる病気だ。中川農水相は責任をとり、辞任せよ」とよびかけました。
農民連の笹渡義夫事務局長は、アメリカのBSE安全検査は食肉企業の職員があたっていると紹介し、「まさに『官から民』の検査体制で人の命を危うくさせている。全頭検査など安全対策をするまで再開させるな」と訴えました。
■米産牛肉730トンが流通
■新婦人が政府に公表求める
新日本婦人の会は一日、厚生労働省と農水省をたずね、国内に流通しているアメリカ産牛肉について、流通先の公表と回収を早急に実施することなどを求めました。
厚労省食品安全部の担当者は、輸入再禁止までに約千五百トンが輸入手続きをとっており、そのうち七百三十トンが十自治体に流通したと答えました。せき柱近くの部位の牛肉は五百七十五トンになり、業者に届け出を要請していると説明。「現段階では公表できない。買い取りも考えていない」と態度をとりました。
■食健連・農民連が指摘 米国の実態
■BSEまん延か・毎年300人ヤコブ病死
■検査官は現場検査しない・除去30カ月怪しい
米国のBSE(牛海綿状脳症)安全対策について、食健連・農民連が訪米調査(2005年5月〜6月)や米関係者を招き開いたシンポジウムを通じて明らかにしてきたずさんな実態は次の通りです。
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行政の食肉検査官はいるが、現場で食肉を実際に検査しない。安全基準を企業側が守っているかどうかを調査するだけです。BSEの検査をするのは民間業者。「企業は食肉検査官に監視員をつけている。そのため検査官は工場内を自由に行き来することができない」(検査官報告)という実態も。(日本は、資格を持った公務員が検査)
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BSEの病原体がたまりやすい特定危険部位を取り除く牛は米国全体では30カ月以上だけ。しかも月齢の判断は歯の状態を見ておこなうため正確にできないのが実情です。「農務省は30カ月になると牛の歯がはえかわるので月齢が分かるというが、食肉検査官は『正しく月齢を判定する方法はない』『間違いばかり犯している』という」(消費者団体関係者)
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BSEの感染源となる牛肉骨粉や牛由来の油脂は豚など家畜のエサに。牛用に交ざって利用される恐れが強い。「政府がとった肉骨粉の禁止措置は『袋の表示義務』にすぎない」(BSE問題を追及している米ジャーナリスト)。
BSE検査は全と畜数の1%程度。ふらふらした牛のため、と畜を拒否された牛も必ずしも検査されていない。どこでどのような牛が検査されたかは非公開。日本や欧州が採用している検査感度が高い検査法が採用されていない。
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BSEの人間への感染病となっている変異型ヤコブ病は実態が不明。「アメリカはヤコブ病で死ぬ人は毎年300人ぐらいいる。BSEから感染した変異型ヤコブ病かどうかは、解剖してみないと分からない。しかし、解剖するにはその費用を親族が負担しないといけない」(元政府消費者行政高官)
普通のヤコブ病患者は60歳以上にならないと発症しない。14歳の女の子や40歳のヤコブ病患者もいる。「政府はきちんと調べることを妨害している」(米ジャーナリスト)
■日本のBSE安全対策
◆と畜する牛の全頭検査
◆危険部位を除いて出荷
◆肉骨粉の隔離と焼却
◆牛の生産方法と流通が分かる仕組み