2006年1月26日(木)「しんぶん赤旗」
米国産牛肉の危険部位混入
甘い抜き取り検査基準
素通りの可能性あった
BSE(牛海綿状脳症)危険部位が取りのぞかれていない米国産牛肉が、日本の輸入検疫で発見された問題で、農林水産省と厚生労働省がそれぞれおこなっている輸入時の抜き取り検査基準が緩く、背骨などが発見されずに輸入されていた恐れのあることが二十五日、わかりました。
米国産牛肉は、農水省の動物検疫所と、厚労省の検疫所が別々に検査をおこなうことになっています。農水省動物衛生課によると、農水省の抜き取り検査基準は輸入量の0・5%を目安に開箱し、目視でチェックするだけ。米アトランティック社から二十日に輸入された段ボール四十一箱(三百九十キログラム)の米国産牛肉の場合、この基準では抜き取り対象がたった一箱。米国産牛肉は輸入再開直後のため、その基準に上乗せして十三箱を調べました。
厚労省の検査基準も、段ボール数に応じて抜き取り数が定められており、五十箱以下では開箱数はわずか十二箱。
両省の開箱検査では三箱から脊柱(せきちゅう、背骨)の混入がわかり、三十八箱には脊柱混入がなかったとしています。
検査で、脊柱が混入した段ボール箱を開箱していなければ、危険部位いりの米国産牛肉が検疫を通過していた恐れがありました。
農水省によると、昨年十二月の輸入再開から禁輸した二十日までに届け出があった米国産牛肉・内臓肉は約一・五トン。農水省の石原葵事務次官は「検査の在り方は見直されなければならない」(二十三日の記者会見)と語りましたが、米国産牛肉の全箱検査は「物理的に無理」という考えを示しています。
安倍晋三官房長官は、国内にすでに入った米国産牛肉について、日本の輸入業者に自主調査と報告を求めることにし、混入検査を業者まかせにしています。
米政府発行の証明書頼みで、実効性のない検査体制のまま米国産牛肉の輸入再開を強行した政府の無責任な姿勢が改めて浮き彫りになりました。