2006年1月25日(水)「しんぶん赤旗」

底流・ほん流

連合 9条改憲にブレーキ


 「『棚上げ』ではないな。いい表現を考えてよ」。十九日の連合中央執行委員会で懸案となっていた「国の基本政策」に関する見解案の凍結を確認したことに連合幹部は、こういって記者会見場をあとにしました。

 連合は、憲法改定問題にそなえるとして「国の基本政策」に関する見解案をとりまとめ、昨年十月の大会で採択する段取りでした。それは▽憲法九条を改正し、「安全保障基本法」(仮称)を制定する▽憲法九条の改正はしないが「安全保障基本法」(同)を制定するとの両論併記を内容としていました。

 連合三役会が六回にわたる集中審議を経てまとめました。そのさい、民主党の枝野幸男憲法調査会会長から問題提起を受けたといいます。

■9産別「反対」

 それまで連合の憲法にたいする政治方針は、憲法論議を否定するものではないとしながらも、憲法の平和主義、主権在民、基本的人権の尊重の三大原則を重視し、その貫徹を期す、「憲法改正を俎上(そじょう)にのせることは時期尚早」としていました。

 三役のまとめた見解案は、連合の憲法にたいする考えを転換し、九条改憲に踏み込むものでした。このため、加盟の産別組合から「『憲法九条の改正もありうる』ことを連合が提起すれば、多くの国民は連合から離れ」(日教組)ると批判の声があがりました。

 大会を前に、十四の産別組合が意見を提出。状況の変化にあわせて、もう少し踏み込むべきだとする意見とともに「これまで確認してきた連合の政治方針にそった記述でなければならない」(自治労)、「第九条が平和を希求する広範な国民諸階層のよりどころであるという事実にもより多くの注意を払うべき」だ(全国ユニオン)と九組織が反対を表明しました。

 大会では採択するにいたらず、議論をさらに続けていくことにしていました。

■「時期尚早」に

 自民党や民主党が競うようにしてすすめる改憲の動きは、アメリカのすすめる先制攻撃の戦争に自衛隊を参戦させ日本を「戦争する国」につくりかえることにあります。自民党が大会できめた「新憲法草案」は、憲法九条二項を削除し自衛軍の保持を明記しました。

 こうした動きに、草の根から反対する人々の共同が急速に広がっています。「九条の会」は四千を超えました。「教え子を再び戦場に送らない」は組合運動の原点だとして教育分野はじめ、各職場で組合の違いをこえて「九条の会」がつくられています。

 私鉄総連の設楽利夫委員長は、新春旗開きのあいさつで、「戦争を知らないわれわれが、戦争で犠牲になった方々や迷惑をかけたアジアの人々にたいし、憲法をいじる資格があるのか。憲法を変える動きに反対していく」とのべました。

 十九日の連合中央執行委員会は、こうした動きに「組織間の意見の幅が広」いとして、九条を中心とした憲法改正問題について考えを集約し対応することを「現段階では控える」としました。

 同時に、見解案について「三役としての議論のまとめ」であると含みを残しながら、平和主義をはじめとした三原則の尊重、憲法改正は「時期尚早」であるとした現行政治方針を連合の統一した考え方とするとの結論に落ち着きました。連合は、踏み込もうとしていた九条改憲にブレーキをかけたといえます。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp