2006年1月22日(日)「しんぶん赤旗」
主張
米牛肉輸入禁止
安全性確認を一からやり直せ
輸入が再開されたばかりの米国産牛肉から、BSE(牛海綿状脳症)の病原体がたまりやすい脊柱(せきちゅう)が、見つかりました。検疫による目視検査でわかりました。多くの国民の不安や反対の声を押し切って、昨年十二月に輸入を強行した日本政府の責任は重大です。
■日本政府の査察厳密に
ジョハンズ米農務長官は、担当の検査官らが、「日本向け牛肉から脊柱を除去する必要があることを認識していなかった」とのべました。
輸入再開にあたり、日本政府は、米国に、(1)二十カ月齢以下の牛であること(2)全月齢の牛から脊柱など危険部位を除去していることを、「輸出プログラム」として義務付けました。
その肝心要の前提条件を、米国の検査官が認識していなかったというのですから、米国産牛肉の安全確保の体制の根幹を揺るがす問題です。
日本政府が、輸入禁止の対象を、危険部位がみつかった施設だけでなく、米国全体としたのは当然です。
米国の食肉処理場の監視の実態は不明であり、危険部位の除去の実効性は疑問である―と、食品安全委員会プリオン専門調査会は指摘していました。だからこそ、日本政府は、前提条件が守られているかどうかを、厳密に査察する責任があります。その点は、食品安全委員会からも強く要請されていたことです。
農林水産省と厚生労働省が十九日、プリオン専門調査会に報告した査察結果は、「危険部位の除去が適切に行われている」としていました。しかし、翌日には、危険部位の混入が発見されました。輸入条件の確認が米国まかせで、日本政府の査察が、きわめてずさんであることを示しました。
日本政府は、米国内のすべての日本向けの牛肉処理施設の厳重な査察をおこない、前提条件の確保に責任を負うべきです。
米政府は、日本政府にBSE全頭検査の緩和を求める理由に、「危険部位の除去が、公衆保健のために取りうる唯一の最も重要な行動である」といってきました。しかし、輸入再開からわずか一カ月後の危険部位混入は、危険部位の除去という点でも、米国の誠意と真剣さが欠けることを示しました。
日本でとっているように、BSE全頭検査と危険部位の除去を両輪としてこそ、国民の牛肉にたいする安全・安心をとりもどすことができます。
日本政府が輸入再開の根拠にしたのは、食品安全委員会プリオン専門調査会の評価報告です。
評価報告は、危険部位の除去などの前提条件が順守されると仮定したうえで、日米の牛肉の「リスクの差は非常に小さい」としました。政府は、この部分だけを取り出して輸入再開を強行しました。
■前提崩れれば評価も変化
しかし評価報告は、危険部位除去などの「前提が守られなければ、評価結果は異なったものになる」とも書いています。危険部位の混入が発見されたことは、「前提が守られていない」状況であり、評価結果も「リスクの差は非常に小さい」とはいえず、「異なったもの」になります。
評価報告は、米国産牛肉の安全性についてはデータに不明な点が多く、日米の牛肉の「BSEリスクの科学的同等性を評価することは困難といわざるを得ない」とのべています。専門調査会の多くの委員の真意はここにあります。米国産牛肉の安全性を確保するために、一から論議をやり直す必要があります。