2006年1月15日(日)「しんぶん赤旗」
9条改憲、日本の信頼失う
元駐米大使が懸念
栗山尚一元駐米大使が、外交専門誌『外交フォーラム』二月号の論文「和解―日本外交の課題〈下〉」で、「(憲法)九条改正に説得力はあるか」として改憲の動きに懸念を表明しています。
栗山氏は「改憲について…もっとも懸念するのは、さまざまな国内の論議に対外的な視点が全く欠けていることである」と強調。NATO(北大西洋条約機構)域外でのドイツの武力行使を欧州諸国は認めたが、「日本の場合に、似たような状況が存在するかといえば、近隣諸国の答は、明白にノーであろう」として、九条改憲による日本の海外での武力行使をアジアの近隣諸国は受け入れないとの考えを示しています。
さらに「国際社会から見れば、現在の自衛隊は、既に質量共に相当高いレベルに達している立派な軍隊である」と述べ、「その自衛隊の名称を(自衛軍または国防軍に)変えて憲法に書くとすれば、そこになんらかの政策的意図が存在すると考えるのは、国際的な常識である」と指摘。
「最近の憲法改正の動きについては、広く国際的に、これを日本のナショナリズム台頭の現れと見て警戒する向きがある」とし、「わが国の説明が説得力を持たない場合には、近隣諸国のみならず、国際社会全体との関係において、戦後の努力を通じ、営々と築いてきた日本に対する信頼が一挙に失われる危険がある」と警告しています。