2005年11月28日(月)「しんぶん赤旗」

NHK「日曜討論」 小池政策委員長の発言(大要)


 日本共産党の小池晃政策委員長が二十七日のNHK「日曜討論」でおこなった発言を紹介します。他党の出席は、舛添要一・自民党新憲法起草委員会事務局次長、太田昭宏・公明党憲法調査会座長、枝野幸男・民主党憲法調査会会長、近藤正道・社民党憲法部会長。


■自民草案

■憲法に風穴あけ百八十度中身を変える

 自民党新憲法草案をどう見るかについて、枝野氏は「当初危ぐしていたいくつかの点がいい方向に変わった部分がある一方、現状追認的な条文の書き換えにとどまっている」と指摘。太田氏は「自民党草案は現憲法を評価することはされている。三原則(主権在民、平和主義、基本的人権の尊重)も堅持。憲法の基本的枠内にとどまっている」とのべ、「全体的には『加憲的』に議論されている」と評価しました。小池氏は「自民党らしさを抑えているともいわれるが」と質問されて次のように答えました。

 小池 舛添さんがある新聞で「高度な政治判断」だとおっしゃっている。九条二項と、九六条いわゆる改憲の要件さえ変えれば風穴は開く。要するに、あとからいくらでも変えられるという狙いがあるのでしょう。そうまでして、とにかく九条二項を変えたいということが、はっきり出てきている改憲案だと思います。

 さきほど、公明党の太田さんが、現行憲法の平和主義の範囲内だとおっしゃったけど、とんでもない。

 今の憲法というのは、侵略戦争への反省の上に、二度と戦争をしないと決意した憲法なわけです。その憲法を、たとえば、前文では、侵略戦争への反省も、二度と戦争をしないという誓いも、平和的生存権も(自民党の憲法草案は)削ったわけです。九条二項の戦力保持の禁止、交戦権の否認も削って、これは結局、自衛隊の存在を単に認めるということにとどまらずに、海外で武力行使ができる(ということになる)。そういう意味では、今までの憲法とは百八十度異なる、海外で自衛隊が武力行使、戦争ができる憲法になるし、そういう国に日本がなってしまう。そういう中身の改憲案であると考えています。

 近藤氏は「憲法の平和主義、人権の尊重の規定を骨抜きにする大改悪だ」と指摘。舛添氏は「一番大きな(改憲の)眼目は九条だ。個別の法律を重ねて無理に無理を重ねるのは限界だ」とのべました。

 舛添氏が「自衛隊が米軍と地球の裏側までいくわけではない」として弁解したのに対し、小池氏は「どんどん解釈改憲をしてきた人が歯止めをかけるんだといってもなんの説得力もない」と批判しました。

■9条

■2項削除は海外での武力行使を可能にする

 自民党草案が九条二項(戦力の不保持、交戦権の否認)を削除し「自衛軍」を明記することに議論が移り、舛添氏が軍隊と規定した方がシビリアンコントロールもかけやすいとの発言をしたのに対し、小池氏は次のように批判しました。

 小池 全く逆だと思います。九条が、本当になし崩しに解釈改憲でゆがめられてきましたが、最後の歯止めとして働いていたのが、軍隊ではない、戦力を持たないという二項だと思うのです。それがあったからこそ、暴走を防いできた。これは政府の答弁でも、九条二項で戦力の不保持ということをいっているがゆえに、集団的自衛権の行使はできない、武力行使を伴う国連軍への参加ができない、海外での武力行使ができないといってきたわけですから、この九条二項がなくなるということは、まさに、この歯止めがなくなるわけです。

 さきほどから、舛添さんは「地球の裏側にはいかない」とおっしゃっているけれども、今自衛隊がイラクに、裏側じゃないかもしれませんが、限りなく裏側に近いところにいっているじゃないですか。もし、今の新憲法草案の形になったとすれば、これは今、イラクでは武力行使ができないとなっているわけですが、まさに、自衛隊がイラクにいって武力行使ができるようになるじゃないですか。政治判断は別にして、そういう構造の憲法になるということは間違いないんじゃないんですか。

 小池氏が重ねて「イラクで武力行使できるようになるのではないか」とただしたのに対し、舛添氏は「それは法律で決める」と発言。小池氏は、次のように批判しました。

 小池 憲法を大枠で、法律で制限をかけるというのは、まったく逆転した議論だと思います。今まで、周辺事態法、イラク特措法、テロ特措法―私どもは憲法違反だと思っていますが―海外で派兵できる法律がつくられましたが、共通しているのは何かというと、全部第二条というところで、対応措置の実施は「武力による威嚇又は武力の行使に当たるものではあってはならない」となっているわけです。憲法という枠があるから、法律が全部その枠内におさまっているわけです。これを逆に、九条二項を取り払えば、こういう法律上の制約がいっさいなくなるわけですから、まさに今まで禁止されてきた最後の歯止め、海外で武力行使をしないという最後の最後の歯止めが取っ払われるということになると思います。

 舛添氏が「自衛隊が戦力じゃないといい続けるのか」と述べたのに対し、小池氏は「戦力じゃないといいながら軍拡をすすめてきたのが自民党ではないか」と居直りを批判しました。

■国民の責務

■国民の権利規制は近代立憲主義に反する

 自民党草案に環境権やプライバシー権などが書き込まれると同時に、「公益」「公の秩序」が「公共の福祉」に代わって書き込まれたことが議論に。太田氏は新しい権利が書き込まれていることを評価する一方、「国民の責務」とされていることに「賛成できない」と発言。近藤氏は「九条の問題と同時に大きな問題点だ」とのべました。小池氏は、次のようにのべました。

 小池 新しい権利も入っていますけど、これらは全部法律とか判例で認められているものばかりで、今の憲法の枠内で実現できるものです。しかも盗聴法をつくったり、住基ネットで個人情報をまる裸にした与党が、あるいは公害基本法をつくる時に環境権を書き込むことに反対してきた人たちがいまさら新しい権利といっても、私は見え透いていると思います。

 しかもそこに権利の確立どころか新たに責務を持ち込んできた。公益という言葉に置き換えた。今たとえば名護に米軍の新基地をつくるという時に、埋め立ての権利を知事から奪って国がおしつけるというような動きが進んでいます。こうした中で、「公共の福祉」という言葉を「公益」という言葉に置き換えて国民の責務として押しつけていくことによって、国を規制すべき憲法のあり方が、百八十度変わって、国民を規制する。国民を縛るものに変えていくという点では、今回のこの中身は近代立憲主義に反する時代錯誤的な提案であると思います。

 舛添氏は、自民党内での議論では「権利のことばかり言うのでなく、地域社会とか道徳とか秩序とかそういったことをもっと書いてもいいんじゃないかという人が多いくらい」とのべました。

■国民投票法

■9条改憲の一つの段階いかなる内容でも反対

 憲法改定の国民投票法案について舛添氏は「与党と民主党、三党で合意した上で通常国会に出したい。共産党、社民党も一緒に全会一致で決めたい」と発言。枝野氏は「全会一致で行うべき問題」とのべ、近藤氏は「じっくりやるという原則さえ確かめられるなら議論は拒まない」と発言。小池氏は次のようにのべました。

 小池 改憲の中身がこれほどはっきりしてきているわけですよね。自民党草案で九条改憲ということがはっきりと出た。しかも今米軍再編という動きがあって、座間では陸上自衛隊とアメリカの陸軍司令部が、横田では航空自衛隊と在日米空軍の司令部が一体となるような方向が出されている中で、狙いは明白だと思うんです。アメリカの先制攻撃に日本が武力行使で参加できる改憲を進めるための手続きですから、国民投票法案はまさに九条改憲の一つの段階にすぎないと思っています。

 もちろんメディア規制などはとんでもない話で言語道断ですが、いかなる内容であっても国民投票法案には反対です。法の不備だと言うお話が先ほどありましたけれども、べつに国民投票法案がなかったから国民が不利益をうけたわけじゃない。権利を侵害されたわけじゃない。国民が憲法改正を六十年近くの間望まなかったからできなかっただけの話であって、国民投票法案がなくても何の不都合もありません。


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