2005年11月20日(日)「しんぶん赤旗」
マンション強度偽造問題
自公民推進 「官から民」
検査スピード早く
事務的に淡々と
千葉県市川市の「姉歯建築設計事務所」が、マンションなどの耐震性を示す「構造計算書」を偽造していた問題は、工事中止に追い込まれるマンションも出るなど大きな波紋を広げています。この背景には、1998年の建築基準法改悪で、これまで自治体が行ってきた建築確認・完了検査を民間の検査機関もできるようにした「規制緩和」があります。当時の国会審議をふりかえってみました。
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■98年法改悪 国会審議は
同法改悪には、「建築確認・検査の民間開放が民間任せであり、行政のチェック体制が不十分」などとして、日本共産党だけが反対。これにたいし、「建築確認、検査の民間開放」の名のもとに当時の自民、民主、公明、社民、自由、新党さきがけなどが賛成。「五十年ぶりの見直し」(民主党)、「二十一世紀に向けた大きな基準法体系の再構築」(自民党)と絶賛しました。
九八年五月十五日の衆院建設委員会。自民党の高市早苗議員は、自治体が行ってきた建築確認・完了検査に時間がかかり過ぎるという問題を取り上げ、「最も期待されるのは、確認期間の短縮」とのべ、見通しを質問。建設省の小川忠男住宅局長は、「民間により行う確認、検査は行政がやっているよりも格段にスピードが早くなる。民間にお任せした場合には、確認対象法令に合致しているか否かという、ただその一点を事務的、機械的に淡々とさばくというふうなことが業務になります」と答弁しました。
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公明党・改革クラブの大口善徳議員は「ますます検査というものがバラエティーに富んでまいります」とのべ、「民間による、参加した第三者による検査体制というもの、これを考えていかなければならない」と法改悪を推進しました。
また、民主党の吉田公一議員も、「大変画期的なこと」として「指定確認検査機関をつくる以上は、できるだけ行政がこの中へ入ってチェックしないように、民間指定機関の責任で建築完了検査までやるということで初めて緩和になるわけであります」との見解を示しました。
瓦力建設相は、「今回の改正によって建築確認、検査について民間がおこなう道を開く」として、行政は建築確認・検査から事実上、手を引いていく姿勢を示しました。
■共産党、当初から反対
当時、同委員会で質問にたった日本共産党の中島武敏元衆院議員の話 今回の事件は、あらためて公正中立な検査を確保する必要性を浮き彫りにしたものです。
わたしたちは一九九八年の建築基準法改悪に一貫して反対し、民間の指定確認検査機関による建築確認の公正さを問題にしてきました。
たしかに、それまでの検査体制も決して十分なものではありませんでした。建築確認を行う地方自治体の建築主事の人員は不足し、体制の強化が求められていたのです。
しかし、政府は地方自治体の建築主事を拡充するのではなく、安易に民間任せにするシステムをつくったのです。その結果、行政によるチェックもなく、責任もあいまいにされてきました。今回の事件は起こるべくして、起きたものだといえます。
建造物は町を構成している公共的なものです。そこに住む人や、地域住民の安全性も確保されなければなりません。
改悪を押し進め、安全が確保できないシステムをつくった国の責任、地方自治体の地域に対する責任、どちらも厳しく問われなければなりません。