2005年11月14日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

風車回って「温暖化」防ぐ

風力発電 増えて課題も


 日本列島の海岸や山あいに風車の数が増えてきました。空気を汚さない風力発電は、地球温暖化対策としても期待がふくらんでいます。もっとも増え方はヨーロッパの足元に及ばず、国や電力会社の消極姿勢に批判も起きています。


■北海道 苫前町

■厄介者でまちおこし

 北海道北西部の日本海側。この海岸線を行くとたくさんの風車が目に入ります。特に留萌市から稚内市までの日本海オロロンラインに多く、沿線沿い十市町村のうち八市町に百六十五基(稚内市で建設中含む)を数えます。

 ブォーン。風車の真下に立つと、風を切る音が聞こえます。六十メートルのタワーの先で三十三メートルのブレード三枚が回転。高さは百メートルに近い。見上げるとそのスケールに圧倒されます。ここ苫前町は、風車が三十九基も立ち並ぶ上平グリーンヒルウィンドファームと、三基の夕陽ケ丘ウィンドファームを有する、一大風力発電基地の町です。

■日本海から強風

 このあたりは日本海から吹き付ける風が強く、特に冬はその強さを増します。地吹雪で前が見えなくなったり、強風にあおられ、路線バスが転倒することさえ起きています。

 苫前町では、住民生活にとっては厄介者の強風を利用して、一九七四年から「凧あげ大会」をスタート。「さらに有効な利用を」として、まちおこし協議会が「風力発電構想」を町に提案しました。

 町は、発電事業を可能とするだけの風が吹いているのかどうかの「風況調査」を旧通産省などの支援を受けて、九五年から九六年にかけて実施。その結果、国内有数の風力発電最適地というデータが得られたのです。

 こうして始まったプロジェクト。二〇〇〇年に町営として夕陽ケ丘、民間としてユーラスエナジーと電源開発が〇一年までに上平へと、それぞれ完成させていきます。

 点検・補修の技術者でもある町企画振興課の高田和彦さんは、「今年からは電力安定供給のための研究施設も完成し、新たな技術開発も始まっています。苫前町では取り組みが早かったため、北海道電力との間で一キロワット当たり十一円台で、十七年間の売電契約ができています。ただ、後発の施設では入札制で価格が安定せず、さらにこの八倍の発電設備の増設が可能といわれても、簡単にはいきません。送電容量も余裕なし」と残念がります。

 「馬と遊ぼう・ホーストレッキング」を風車が立つ牧場で企画している商工会青年部の関係者は、「公費を使ってせっかく造ったのですから、売電収入を上げるだけでなく、子どもたちや地域の人も日常的に足を運び、発電のしくみや自然環境、CO2問題などを学ぶことができる場にしてほしい」と語りました。

■野鳥が危ない 迫られる対策

 昨年二月、夕陽ケ丘の風車付近に胴体が真っ二つに切断された大型の鳥が発見されました。すぐに北隣、羽幌町にある北海道海鳥センターに運ばれ、絶滅危ぐ種のオジロワシと判明しました。切断面から、回転する風車の羽に引きちぎられたと推定されたのです。

 環境省自然環境局羽幌自然保護官の小野宏治さんは、「現在、バードストライク問題に関する法規制はありません。発電施設管理者へは定期的な巡視と野鳥被害が発見されたときの報告を求めている程度です。増え続ける発電施設に、環境アセス面での対応が追いついていないのが現状です」と言います。

■新たな段階に

 国は、二〇一〇年には風力で三百万キロワットの発電量をめざしています。現在の三倍以上になります。しかし、今の対応や施策では全く足りません。野鳥被害や騒音問題もさらに大きくなるでしょう。初期に造った風車も、そろそろ寿命となるかもしれません。

 風力発電先進国ドイツでも問題化されはじめ、三百以上の団体が風力反対を唱えていると聞きます。国は自治体や企業、自然環境団体、地域住民の声を聞きながら、施策対応をしていく段階になっていると感じました。(北海道羽幌町・金木直文町議)


■三重 青山高原

■風の通り道に32基

 三重県の中央、伊勢の国と伊賀の国を隔てて南北に延びる青山高原のりょう線には今、巨大な風車が三十二基も立ち並び、雄大な景観を形作っています。

 現在稼働しているのは、久居市が設置した発電能力七百五十キロワットの風車四基と、久居市や伊賀市が出資する第三セクター「青山高原ウインドファーム」が設置した同じく七百五十キロワットの風車二十基。さらに、中部電力の子会社シーテックが国内最大級二千キロワットの風車八基からなる「ウインドパーク美里」を建設中で、来年三月の稼働に向けて一回り大きい風車がその姿を現しています。

 すべてが稼働すると三万四千キロワットの風力発電機群になります。

 青山高原は、若狭湾から琵琶湖を経て伊勢湾に抜ける「風の通り道」。主峰の笠取山(標高八四二メートル)も、「旅人の笠(かさ)が取れるほど強い風が吹く所」から名づけられたといわれます。風力発電にはうってつけの場所です。

 風車は真下に近づいても、その回転音は思いのほか静か。展望休憩所も設けられ、東海自然歩道を歩くハイカーやドライブの家族連れが、風車の大きさに驚きの声を上げながら、盛んにカメラを向けていました。


■自然エネルギー EU目標22%日本は1.35%

■豊かな可能性が無限に

■吉井英勝衆院議員

 地球温暖化防止は、人類の将来に直結する問題です。それだけに、地球的規模で温室効果ガスである二酸化炭素の総排出量を削減することは死活的で緊急課題です。同時に、それはエネルギーを化石燃料に頼らず、危険で未成熟な原発からの段階的撤退ということを考えると、自然エネルギー(再生可能エネルギー)の開発・普及と省資源低エネルギーの社会経済構造へ転換していくことに真剣に取り組むことが必要です。

 私は、六月に国会質問の準備で新しい資料を得ました。物理的限界潜在量と呼ばれる日本の風力発電の可能性を示すものです。それを私が電力量換算しますと、約二兆五千七百億キロワット時で、日本の総発電電力量の約三倍もあります。太陽光発電なども合わせると、潜在量は実に十二兆四千九百億キロワット時です。二〇〇〇年に国が提出した試算データと比べると十四倍も豊かな可能性がでてきています。

 EU(欧州連合)は、「EU指令」で二〇一〇年に自然エネルギーの比率を22%に引き上げる目標をたてています。日本政府の導入目標は1・35%です(新エネルギー利用特措法)。これでは京都議定書の議長国である日本の国際的責務を果たせません。

 まず国の自然エネルギー導入の数値目標を引き上げ、ヨーロッパのように電力会社に自然エネルギーで起こした電力を固定価格で買い取る義務を課すことです。高速増殖炉もんじゅなどに投資した約五兆円は、自然エネルギー研究開発予算(平均額)の二百五十年分になります。このような原発から自然エネルギー研究開発・普及に予算を切り替えることなども風力発電などの拡大の力となります。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp