2005年11月14日(月)「しんぶん赤旗」
主張
国立大の学費
がまんならない連続値上げ
年末にむけた来年度予算の編成で、財務省は、国立大学入学料標準額(現在二十八万二千円)の値上げを打ち出しました。国立大学は、今年度予算で授業料標準額が一万五千円引き上げられたばかりです。これでは、三十数年来続いてきた授業料と入学料を毎年交互に値上げするやり方が、今後も続くことになります。また、財務省は、私立大学への経常費補助の削減も打ち出しています。
国民の学費負担増につながるこんな動きは、絶対に許せません。
■国民の学費負担は限界
すでに、初年度納付金(入学料、授業料など)は、国立大学で八十一万七千八百円、私立大学は平均で約百三十万二千円にまで高騰しています。勤労者世帯の平均年収が一九九七年をピークに七十八万円も減っているなかで、国民の学費負担はもはや限界を超えています。
実際、大学生の家庭の平均年収は国立で八百万円、私立で九百万円になっています。低所得の家庭でいかに大学進学が難しくなっているかがわかります。学費値上げが国民から大学への道を遠ざけてきたのです。
国立大学の入学料は、すでに私立大学の平均を二千二百円上回る高額になっています。さらなる値上げは、私立大学に入学料値上げをうながすことにもなります。
今年五月、日本共産党の小林みえこ参議院議員が、授業料と交互に値上げされる危険を指摘したのに対し、中山文科相(当時)は「平成十八年度入学者についても入学料標準額の改定を行わない」と答弁しています。政府はこの約束を守るべきです。
国立大学は、昨年四月からの法人化を決めた際、「学生納付金については、経済状況によって学生の進学機会を奪うこととならないよう、将来にわたって適正な金額、水準を維持する」(国会付帯決議)とされました。学費の連続値上げは、この決議に真っ向から反します。
政府は、国立大学費値上げの口実に「私学との格差是正」を言います。しかし、一九七〇年以降、国立大学の初年度納付金は約八十万円も上がりましたが、格差は約二十一万円から約五十万円に増えています。国立の値上げが私立の値上げを誘発したからです。政府の「格差是正」論は、事実によって破たんしています。
また、政府は、「大学教育を受ける者と受けない者との公平」との言い分をもちだしています。しかし、「大学教育を受けない者」には、高学費政策によって進学を断念した人も含まれています。それとの「公平」で学費を上げれば、進学できない人を増やすことにしかなりません。教育を受ける権利、教育の機会均等を保障した憲法二六条をふみにじるものです。
このように高学費を当然視する日本政府の異常さは、国際人権規約(社会権規約)の「高等教育の漸進的無償化」条項をいまだに留保していることにも現れています。そんな国はルワンダ、マダガスカルと日本の三カ国だけです。
■値上げ反対の声を大きく
この条項を批准しているヨーロッパなどの国々では、学費を無償か安価にしています。政府が高等教育財政を支えるのは当たり前となっているからです。この条項を日本も批准し、GDP(国内総生産)比で欧米の半分にすぎない日本の高等教育費を思い切って増やし、学費負担を減らすべきです。
ただちに国立大学入学料値上げ反対と私学助成拡充の声を大きくひろげましょう。