2005年10月24日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

アスベスト対策 真剣に


 アスベスト(石綿)関連企業の従業員や周辺住民に深刻な健康被害が出ていることが明らかになる中、自治体独自にアスベスト対策を制定する動きが広がっています。先進的な総合対策を打ち出した東京・墨田区、全国に先駆けて被害防止条例を提案した福井県について、地元からリポートしてもらいました。


■施設調査、除去特別融資など 「総合対策」打ち出す

■東京・墨田区

 日本共産党墨田区議団は七月中旬から、区の担当者の聞き取り調査を行い、区内にはアスベスト関連工場はないこと、区の施設に少なからず、アスベストが残されていることなどを把握しました。

■2小学校で緊急撤去

 議論の結果、緊急な対策が必要であるとし、八月二日に山崎昇区長に対して(1)すべての公共施設について、アスベストの含有の有無、空気中の濃度などを緊急に調査し、安全対策を実施すること(2)民間建築物の調査と解体作業等の被害防止対策・指導の強化、総合相談窓口の設置(3)自治体が実施する対策への国の財政支援を求めること―を申し入れました。

 区長は「重要な問題だと考えている」と、積極的に取り組む考えを示しました。そして、八月二十五日、区の施設の再調査と撤去工事、民間建築物の調査、アスベスト除去等のための特別融資、検査費用の半額助成、健康相談窓口の開設など、日本共産党の要望も踏まえて「アスベスト総合対策」を打ち出しました。また、公共施設については、アスベストが残存する施設は十三施設あり、すべて飛散防止の措置が施されているが、緊急に二小学校で撤去工事を行ったことを発表しました。

 さらに党区議団は、九月議会の代表質問で、アスベスト含有製品の調査などを求めるとともに、国への要望事項をまとめて意見書案を提案しました。意見書案は他会派からも提出されましたが、日本共産党の案がほとんど盛り込まれて採択されました。

 区には連日四―五件の相談が寄せられており、その多くは個人住宅のアスベストの使用と撤去問題、以前アスベスト関連企業で働いたことのある方らの健康問題です。区は「総合対策」に基づき、調査員の派遣や助成制度・融資制度の説明、保健センターでの相談を行っています。

■国の支援が不可欠

 一方で、課題も残されています。アスベスト残存施設については、工事期間中に施設の休止が必要なこと、施工業者の確保が難しいこと、財政問題などから、早急な対応がとられていません。

 また、民間建築物は、吹き付けアスベストについて、一九五六年から八〇年に建設された千平方メートル以上のものを調査、目視で確認できた七十棟のうち六棟でアスベストがあったと報告されましたが、調査できなかったもの、千平方メートル未満の建物など、アスベストが使われている建物は無数にあるといわれています。

 党区議団にも、「近所の駐車場の屋根にアスベストが吹き付けてあるが大丈夫か」「融資ができたことは良いが、結局、返済しなければならない。もっと踏み込んだ対策がとれないか」の声も寄せられています。区の「総合対策」の拡充を図るとともに、自治体への財政支援など国の本格的な取り組みが不可欠となっています。(西恭三郎区議)


■解体届け出義務違反に罰則 全国に先駆け条例提案

■福井県

 福井県が九月末にまとめたアスベスト使用施設は二百九十四施設、十月七日までに県民から寄せられた相談は、県に四百三件、福井労働局に二百十件、福井大学医学部付属病院が十月七日に開設したアスベスト中皮腫外来にも受診者・予約者が訪れています。

■県独自に規制強化

 県民の関心と不安が高まるなか、福井県は全国に先駆けて九月県議会に、アスベストによる健康被害の防止に関する条例案、小中学校・高校・幼稚園・保育所の対策工事の支援策を提案しました。

 条例案は、現行の大気汚染防止法で規制のかからない範囲を、県独自の条例により罰則付きで規制するものです。アスベスト発生施設(取り扱い業者)については、設置届け、敷地境界線における濃度基準の順守、基準に適合しない場合の改善・使用停止命令を定め、届け出義務違反・改善命令違反には一年以下の懲役または五十万円以下の罰金などの罰則を科すこととしています。

 アスベスト排出等作業(解体作業)については、解体工事の届け出、作業基準の順守、基準を順守していない場合の改善命令・一時停止命令を定め、作業実施届け出義務違反・改善命令違反には六カ月以下の懲役または三十万円以下の罰金などの罰則を科すこととしています。

 さらに、アスベスト吹き付け材使用建築物の所有者の排出・飛散防止の努力規定、アスベスト吹き付け材使用建築物の台帳整備と大地震などの災害時の情報提供を盛り込んでいます。条例は十月十一日、全会一致で可決されました。

■子どもの安全最優先

 対策工事の支援としては、市町村立・私立の学校施設等の対策工事に最大六分の一の補助制度を創設し、子どもの安全最優先の対策となっています。

 日本共産党は七月に、あわら市・金津小学校でアスベスト調査をし、八月には県への予算要望交渉で、学校施設への対策や解体作業時の安全確保などアスベスト対策の具体化を求めてきました。九月県議会で私は、県の積極的な取り組みを評価しつつ、アスベスト肺を診断できる医師の養成や相談窓口の充実、胸部CT(コンピューター断層撮影装置)健診を希望する県民への助成制度創設などを求めました。

 今後の課題としては、(1)県として条例にもとづく進行管理を適切に行うとともに、学校関係だけでなく病院・福祉施設などすべての施設について調査すること(2)希望者について胸部CTなど健康診断を気軽に受けられる制度づくり・アスベスト肺を診断できる医師の養成(3)「リフォーム詐欺」同様の「アスベスト詐欺」などに高齢者世帯などが引っかからないような広報・相談体制の充実(4)国として、管理人のいない集合住宅や廃工場などの対策に漏れがないようにすること、総合的なアスベスト被害防止と救済の法的仕組みを確立すること―などがあげられます。(佐藤正雄県議)


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp