2005年10月24日(月)「しんぶん赤旗」
精神通院医療本人負担
「ゼロ」が一転「1割」に
「自立支援」受け自治体助成中止も
障害者「自立支援」法案に精神通院医療の一割負担が盛り込まれているのを受け、独自に本人負担を軽減してきた地方の助成を見直す動きが出ています。厚生労働省が、適切な精神医療を普及するための負担軽減を否定する姿勢を示す中で、自治体からは「これまで本人負担ゼロを保ってきたが、財政負担が厳しく、堅持できないかもしれない」などの声が上がっています。
現行では、精神障害者の通院患者は、精神保健福祉法三二条に基づき、医療費公費負担によって本人負担が5%に低く抑えられています。入院中心ではなく、地域で生活しつつ社会復帰できることを支援するため、通院回数が増えてもできるだけ負担にならないようにすることを目的としています。
厚生労働省によると、二十自治体で自己負担分への独自助成を行っています(今年四月現在)。政令市では、札幌、川崎、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、広島の八市が5%全額を助成し、自己負担を実質ゼロにしてきました。
■財政状況をかんがみ判断
「自立支援」法案の提出にあたり、厚労省は精神保健福祉法三二条を廃止。精神通院の負担を二倍の10%に引き上げます。これを受けて名古屋市、京都市、大阪市などで見直しを検討中です。
名古屋市の担当者は「制度の利用者は収入が低い人が多く負担が生じると大変なのも理解できるし、一方で財政への負担も大きい。苦慮している」と述べます。「(本人負担ゼロを堅持するには)自治体の負担が大幅に増える。国保財政も厳しく、財政状況をかんがみて判断せざるを得ない」(京都市)などの声も出ています。
■通院回数を減らす患者も
横浜市は、全市規模での事業見直しの中で、上乗せ助成を今年十月から取りやめました。「自立支援」法案が成立すると、本人負担はさらに一割に跳ね上がることになります。すでに、外来で長期投薬を希望するなど、障害者が通院抑制するケースも出始めています。
うしおだヘルスクリニック(横浜市)の野末浩之所長は「月に数回通院していた患者が通院回数を減らすために、『まとめて一カ月分の薬を出してほしい』と希望することが増えている」と言います。さらに、副作用が少なく効果の大きい新薬が利用できず、安い薬に変える患者が必ず出ると指摘。「副作用が強いため、治療の初期で挫折する人が増える。治療の後退につながる」「(利用抑制で)確実に、再発や病状悪化などの悪循環をもたらし、障害者の社会復帰に逆行する」と話します。
■厚生労働省は責任を転嫁
厚生労働省は、自治体が助成をやめる動きについて「(助成をやめるかどうかは)自治体の判断」(六日、参院厚労委)などと責任を転嫁する姿勢です。
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