2005年10月14日(金)「しんぶん赤旗」
障害者「自立支援」法案
参院委可決
「買う福祉」への転換
障害者「自立支援」法案は、対政府質疑はわずか三日だけ、地方公聴会、参考人質疑をいれても五日の審議で、委員長職権という強硬手段で採決に付され、十三日の参院厚生労働委員会で可決されました。審議だけでなく採決でも無理押しを重ね、障害者に新たな「痛み」を押し付ける政府与党の横暴に、障害者でいっぱいの傍聴席からは怒りの声があがりました。
■「慎重な審議を」
「五百回の説明、意見交換をした」(小泉首相)、「丁寧に説明したい」(尾辻秀久厚労相)。審議でこう繰り返した政府ですが、障害福祉に努力している現場の不安は広がる一方です。
地方公聴会、参考人質疑で陳述した関係者十人のなかで、成立を待ち望むと賛成したのは自民党推薦の一人だけ。自民・公明推薦の四人の公述人のうち二人が強い疑問、批判をのべました。
「問題点を、委員会の場で徹底的に洗い出し、採決を急ぐのではなく、慎重な審議をお願いしたい」(十二日の参考人質疑、大阪障害者センターの塩見洋介事務局長)
「具体的なものが提示され、制度を使用する側が使えるものかどうかはっきりしないと賛成か反対かは言えない」(同日、日本ALS〈筋委縮性側索硬化症〉協会の金沢公明事務局長)
公述人に共通した、こうした声に応えることこそ国会の責任です。それにもかかわらず、十三日の理事会で「審議を尽くした」(遠山清彦公明党議員)と採決を強行したのです。
法案そのものも、「応益負担」(一割負担)導入で、大幅な引き上げを強要することが明確になりました。就労のため自宅から作業所に通う障害者に工賃を大きく超える自己負担を求めるなど、障害者の働く意欲、社会参加の喜びさえ奪うものです。障害を持つ子どもの医療、社会復帰をめざす精神障害の人の通院に対する負担増など、命と健康、人権と生存にもかかわる実態が短時間の審議でも浮き彫りにされています。
■「応益」を当然視
負担増の理由として厚労省は“買う福祉”を持ち出してきました。
「サービスは買うものだと、みんな買う主体になる…少しでもその費用についてはシェア(分担)することによって当事者としての参画もしていく」「(納税者の)理解を得ていただくためには、利用者の方もシェアできる範囲でコストをシェアしていただくと、それが新しい福祉の考え方」(六日、中村秀一社会・援護局長)。
この考えに立てばサービスをたくさん買う人ほど高い負担は当然、障害が重くなるほど負担が重くなります。十三日には「日常生活に必要な電気やガスや水道や交通について、生活もろもろの費用については、購入せざるをえない世界の中でいきている」(同局長)とまでのべました。尾辻厚労相は、障害者へのサービスを「益」「利益」と表現するのはまずいので「定率負担」ということにしたと答弁(十三日)しましたが、「応益負担」の考えをなんらかえていないのです。これほど障害者の生きる権利を踏みにじることはありません。(小林拓也)