2005年8月7日(日)「しんぶん赤旗」
異議あり
障害者自立支援法案
腎臓病治療継続に不安
患者ら「応益負担」反対
障害者「自立支援」法案は、更生医療や育成医療をなくし、これまで無料か低額だった医療費負担を原則、一割負担とし、入院の場合の給食費も本人負担とします。腎臓病、心臓病などさまざまな患者団体が、「応益(定率)負担をせず、更生・育成医療の存続を」と日本共産党をはじめ、各党・会派への働きかけを強めています。(川田博子)
「子どものころの育成医療、おとなになってからの更生医療、こういう制度があったおかげで、なんとかやってこれた」と話すのは、さいたま市内で広告会社を営む児玉登さん(41)。幼稚園のときに紫斑性腎炎を発症、八歳のときに慢性腎不全と、病気が進行しました。
■1カ月分の給料なくなる
「当時は、腎臓の病気が、公費負担医療制度の対象になっていなかった。入院などの費用で、父親の一カ月分の給料がほぼなくなることがありました」
入退院を繰り返す生活が続き、十五歳からは、週三回の透析治療が始まりました。生きている限り透析治療は欠かせません。
透析治療の費用は月額約四十万円になります。国保本人(三割負担)だと、十二万円を負担しなければなりません。現行では、更生医療、自治体独自の医療費助成など、さまざまな医療費負担軽減の制度が設けられています。
児玉さんの場合、現在、透析治療の費用負担は自治体の助成でゼロ円。血液中のリンや尿酸の量を調節する薬を飲み、その費用・月額約一万円が必要ですが、更生医療が適用されており、負担はゼロ円です。
法案によって更生医療がなくなれば、月額一万円を負担しなければならなくなります。
■体調崩したり老後が心配
児玉さんの収入は、障害基礎年金・月額約六万六千円と給料約二十万円。最近、不安を感じています。
「若いころは営業を担当していたのですが、いまは事務です。体調を崩したり、発熱することが多くなりました。いまは働けていますが、老後が心配です」
仕事をやりくりし、埼玉県腎臓病患者友の会の仲間と七月五日、東京・日比谷公園で開かれた「このままの“障害者自立支援法案”では自立できません! 7・5緊急大行動」に参加しました。
「高齢で年金で生活している会員や、週三回の透析治療でフルタイムで働けない会員がたくさんいる。応益負担になれば、治療に通えなくなり健康を害する人が出るのではないか。法案を成立させてはならない」と話します。
●家計は家族に依存
全国腎臓病協議会(略称・全腎協、油井清治会長)の実態調査によると、おもな家計保持者は、子ども31.8%、両親28.4%など。家計を家族に依存している会員は76.8%にのぼります。高齢化もすすみ、25万人の透析患者のうち約7万人が年金生活者です。
全腎協の栗原紘隆副会長は「低所得者ほど厳しい負担増となる」と法案の問題点を指摘。育成医療と更生医療の存続、定率(応益)負担の中止、入院患者の食事の公費負担を訴え、徹底審議を求めています。