2005年8月2日(火)「しんぶん赤旗」
主張
自民党の「新憲法案」
戦争国家への逆戻りが露骨に
自民党が、改憲要綱(七月七日発表)にもとづいて条文化した「新憲法第一次案」を発表しました。これをたたき台に論議し、十一月に開く、自民党結党五十周年の大会で新憲法草案を決める構えです。
自民党の「新憲法案」の最大の特徴は、日本を「海外で戦争する国」に逆戻りさせることです。現憲法の平和・民主原則を根本から破壊する危険な狙いが、露骨に表れています。
国民に挑戦するかのような憲法改悪案を厳しく批判し、怒りの声を大きくしていきましょう。
■九条を全面的に改悪
自民党「新憲法案」は、日本国憲法第九条を全面的に改悪する中身になっています。
戦力不保持・交戦権否認を定めた九条二項を完全に削除して、「自衛軍を保持する」と明記しています。これは、これまでの「海外での武力行使はできない」という歯止めを取り払うことを意味します。実際、自衛軍は、「国際社会の平和及び安全の確保」のための活動もできると書き、海外の戦争に出て行けるようにしています。イラク戦争のような場合に、交戦権をもった軍隊として出動し、アメリカ軍と一緒に戦闘することになります。
しかも、その自衛軍の活動について「日本国民は…主体的かつ積極的に寄与するよう努めるものとする」と、戦争協力を国民に強いる中身まで盛り込んでいます。「要綱」の段階では、「平和主義の原則が不変であることを盛り込む」などと言っていましたが、九条全体を廃棄するものになっています。
自衛軍の活動のひとつとして「国の基本的な公共の秩序の維持のための活動」も明記しています。その一方で、国民の自由と権利のあり方をのべた現憲法第一二条を、「国民の責務」に変え、「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚しつつ、常に公益及び公の秩序に反しないように自由を享受し、権利を行使する責務を負う」と書いています。
自民党の「新憲法案」の考え方では、政府が行う戦争への反対は「公の秩序」に反することになります。「国民の責務」に反する国民の自由や権利は制限される、場合によっては、軍事力を使っても弾圧するー―こういう事態になりかねません。
司法の部分では、「軍事に関する裁判を行うため」に「軍事裁判所を設置する」と書いています。現憲法は、「すべて司法権」は「最高裁判所」及び「下級裁判所」に「属」し、「特別裁判所」は「設置することができない」と定めています(第七六条)。この原則に穴をあけ、軍が独自に軍法会議を開けるようにするものです。
さらに、自民党「新憲法案」は、国の宗教的活動を禁じた政教分離原則(現憲法第二〇条)に、「社会的儀礼の範囲内にある場合を除き」と例外を設け、実質的に骨抜きにすることを狙っています。政教分離原則は、侵略戦争を推進した国家神道体制の再現を許さないための規定です。それの骨抜きを狙うのは、首相の靖国神社参拝の「合憲」化や、再び戦死者が出ることに備えるためです。
■国民の断固たる回答を
国民の人権と自由を守るために国家権力の動きに制約を加えるのが、憲法です。日本国憲法は、それを具体化するとともに、戦力保持や交戦権も否認し、国際平和を平和的手段で実現する立場を徹底しています。
それに敵意を燃やし、アメリカいいなりに海外で戦争をするために憲法改悪をめざす自民党にたいし、国民の断固たる回答を示しましょう。