2005年7月31日(日)「しんぶん赤旗」

「安定・安心」のごまかしを追及

障害者「自立支援」法案

参院厚労委で小池議員


 会期末をひかえ緊迫する障害者「自立支援」法案の審議。二十八日の参院厚生労働委員会で「優れた制度」(厚労省・塩田幸雄障害保健福祉部長)、「無理のない負担」(自民・坂本由紀子参院議員)と早期成立をめざす政府与党にたいし、日本共産党の小池晃議員が「改革」のごまかしを明らかにしました。

■手話、移動介護 国負担義務外し

 小池 義務的経費にするといいながら、(国庫負担を)どの水準でだすか説明されなければ安心できるわけない。いまだに示されていない。

 塩田 年末の予算編成までに決めるということでございます。

 「自立支援」法案による制度改革が現行より「優れている」とする厚生労働省の最大の根拠は、障害福祉サービスに必要な経費が国庫負担として国の義務となるということです。

 公明党も「義務的経費に転換し、財源を安定させる」「どこでも必要な量を平等に利用できる」(公明新聞十六日付、福島豊衆院議員)と宣伝しています。

 しかし、どのサービスにどのくらいの費用(給付)をかけるのかも、費用の半分を負担する国庫負担の水準をいくらにするかも決まっていません。厚労省は、新たに導入する障害程度区分に応じてサービス費用に格差をつける方針で、どの区分にどのくらいの障害者がいるのか、実態調査をもとにサービス利用量を推計し、それから国庫負担水準をきめようとしているのです。

 「長時間介護を必要とする人がいる、あるいは平均水準を超える(サービスを提供している)自治体がある。平等にといって低い(全国)水準になれば、必要に見合った補助金がでなくなる」。小池議員は迫ります。

 厚労省は「国がしっかり負担する」というだけで、国庫負担水準が必要なサービス提供に見合うものかどうか、答えられません。結局わかるのは年末の予算編成のときというごまかしです。

 しかも、手話通訳などのコミュニケーション支援、ヘルパーによる移動介護は義務的負担からはずされ、裁量的経費に。「支援費と同じ予算不足となるのではないか」という小池議員の指摘を厚労省も否定しません。

■減免利用しても一万こす負担増

 小池 これがきめ細かい減免といえるのか。

 厚労省が一割負担導入による「激変緩和」をうたい、この日の答弁のなかで打ち出したのが新しい減免の仕組み(社会福祉法人減免)です。小池氏はただちに中身をただしました。

 この法人減免は、低所得者の負担上限を半分に引き下げて利用者負担を軽減するというもの。提案中の上限(月額)は低所得者(住民税非課税)で一万五千円と二万四千六百円の二段階あり、住民税課税の一般世帯になると四万二百円となっています。これを低所得者で半額にするものです。ただし収入基準のほかに、手持ちの預貯金が単身世帯で三百五十万円以下(一人超えるごとに百万円追加)という条件もつきます。減免を実施した社会福祉法人にたいし、減免分の半分(一部75%)を公費助成する案です。

 「細かい仕組みについて詰めているところ」という厚労省・塩田障害保健福祉部長に、小池氏は厚労省の負担増モデルを示し「どれだけの減額になるのか」と迫ります。

 厚労省モデルは家族と同居する知的障害者が通所施設を二十二日間、ホームヘルプを月三万円利用した場合のケース。現行制度ではほとんどが実質ゼロ負担で利用されています。

 その場で試算する塩田部長。通所施設の利用が新上限で七千五百円の負担、施設での食事代が実費負担で五千円、ホームヘルプは一割負担の三千円(上限内)となり、合計一万五千五百円の負担となることがわかりました。小池氏は「負担なしの方が、減免を利用しても一万円以上の負担増になり、親が課税者であれば一般世帯となり社会福祉法人減免の対象外となる」と批判しました。

■選択できない 扶養外せば増税

 障害者本人を扶養家族からはずして低い上限にすることも選択できる―公明党が「与党の要望で負担軽減」(公明新聞十六日付)と成果にしているものです。高い上限で家族に負担が及ぶ仕組みを改善し、世帯所得と本人所得のどちらかを「選択できる」とした問題です。しかし扶養から外すと税制上の扶養控除がなくなり、今度は、親に新たな税負担が生じてきます。

 小池氏は、サラリーマンの父、専業主婦の母の三人家族で知的障害者の子どもを扶養から外したケースで質問。国税庁の担当者は、年収三百万円世帯では所得税ゼロ円から六万八千八百円、年収六百万円世帯は、十四万千六百円から二十三万二千円にと、親世帯は大幅な増税となると答弁。

 小池氏はさらに住民税を加算した試算を提示しました。年収三百万円世帯では年間十万五千四百円の増税です。扶養から外れた障害者自身も、新しい社会福祉法人減免があっても月一万五千円の負担。そのうえ新たに本人の国民健康保険料を払う義務が生まれます。

 扶養から外れても、扶養のままでも高い負担増です。「どちらを選べといわれても選択しようがない」と迫る小池氏に、尾辻厚労相も「税の負担増、そういうケースもでてくる。いろんなケースがでてくる」と認めざるをえませんでした。


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