2005年7月14日(木)「しんぶん赤旗」
主張
障害者「自立支援」法案
看板と中身がまったく違う
このままの障害者自立支援法案では自立できません―。障害者と家族がこう懸念を表明している「障害者自立支援法案」が、衆院厚生労働委員会で、自民党、公明党の賛成で可決されました。
日本共産党は、「障害者の生活と権利を脅かす重大な内容が盛り込まれている」と反対し、民主党、社民党も反対しました。
■応益負担の導入に不安
障害者のもっとも大きな不安は、福祉サービスの利用料を、所得に応じて負担している「応能負担」から、サービスの量に応じた「応益負担」に変更し、一割の定率負担を導入する点にあります。
応益負担の導入による負担増は、ホームヘルプで平均月千円から四千円と四倍に、通所施設では食費負担も加わり、千円から一万九千円と十九倍にもなります。
応益負担(定率負担)の導入が障害者にとって不安を広げていることは自民、公明両党も認めざるをえません。
「障害者の方々の大変さまざま、そしてまた厳しい反応がございます」(自民党・菅原一秀議員、七月六日の厚生労働委員会)、「障害者の方々に大きな影響を与えることが懸念される」(公明党の財務省への申し入れ、四月二十二日)とのべています。
しかし、結局、そうした声に真剣に耳をかたむけることなく、法案を可決しました。これは、障害者を無視する態度です。
「低所得者へは配慮する」といいますが、それなら、所得に応じて負担する「応能負担」が適切であり、定率負担に変更する必要はありません。
応益負担の導入は、法案の看板でもある自立支援に逆行します。サービスを多く必要とする重度障害者ほど、重い負担を強いられるのでは、もはや福祉とはいえません。
心臓病などの障害がある子ども(育成医療)、おとな(更生医療)の公費負担医療は、現行では所得に応じてゼロ―三割の負担です。また、精神障害者の通院医療は5%負担です。法案は、三つを「自立支援医療給付」としてひとつにまとめ、原則一割負担、一定以上の所得者は三割負担とします。参考人質疑では医師から、医療に「自立支援」をつけることに違和感がのべられています。
大幅な負担増は、命綱の医療から障害者を遠ざけるもので、「自立支援」と縁もゆかりもありません。
障害者の所得保障はきわめて不十分です。障害基礎年金は一級月八万三千円、二級月六万六千円です。現行の応能負担のもとで、ホームヘルプ利用の95%が無料なのは、所得がきわめて低いからです。
ところが、所得保障について、尾辻厚生労働相は、「年金や諸手当を大きく改善することは、大変難しい、厳しい面がある」と、否定しています。
■生存権の侵害に踏み込む
所得保障が障害のある人にたいしてきわめて不十分な現状で、負担増だけを求めるなら、耐えられない多くの障害者を生み出します。
負担上限額を設けるとしていますが、利用料負担は障害基礎年金の二―三割にもあたります。
障害のある人の必要に応じた福祉サービスの利用を困難にさせ、自立した生活ができなくなる恐れがあります。生存権の侵害に踏み込むものです。
法案は、撤回し、障害者と家族の声に耳を傾け、抜本的な再検討をはかるよう求めます。