2005年7月5日(火)「しんぶん赤旗」
障害者「自立支援」法案
“障害認定”中身これから
調査方法にも不安の声
衆院で審議中の障害者「自立支援」法案は、障害者が福祉サービスを利用する前に認定を受けるしくみを新たに導入します。障害者団体など関係者からは、一人ひとりの多様な障害の状態が本当に的確に判定されるのか、不安と疑問の声が出ています。
認定審査を受けたうえでサービスを利用するしくみは、介護保険に続くものです。厚生労働省によると、サービスを利用するまでの流れは表のとおりです。
まず、本人や家族などが市町村の窓口に申し込みます。すると、市町村の職員や委託を受けた事業者が聞き取り調査に来ます。調査項目は全国共通で、百項目程度になる予定です。調査結果をコンピューターで処理して、障害者の心身の状況がどのようなものか、どれくらいの支援が必要かを判定します。これが一次判定です。
障害程度区分は、ヘルパーの利用など「介護給付」を希望する場合と、施設で働く就労支援など「訓練等給付」を希望する場合の二種類にわかれます。
介護給付を希望する場合は、二次判定があります。二次判定は、一次判定の結果と医師の意見書をもとに、市町村の審査会がおこないます。審査会は、医療や福祉の専門家五人程度で構成されます。ここで「障害程度区分」が認定されます。どのように区分するかはまだ決まっていません。二段階以上の複数に分類する考えです。
訓練等給付を希望する場合は二次判定はありません。一次判定の結果をもとに、障害程度区分を認定します。重度の人とそれ以外の人に区分するような形が想定されています。
障害程度区分が決まると、市町村の職員などが障害者や家族の希望を聴取します。
厚労省はこうした手続きによって、認定された「障害程度区分」と本人の希望、介護者がいるのか、どんな所に住んでいるのかなどが考慮され、状況にもとづいた適切なサービスが決定されるとしています。
■土台が固まらず
障害程度区分の認定は、一人ひとりの障害者の状態に応じたサービスの利用を保障する土台になるものです。介護保険でいえば、「要支援」「要介護1―5」のどれに該当するかを認定する部分にあたります。ところが、法案を提出して国会審議を求めながら、肝心な中身はまだ決まっておらず、これから固めていくことになっています。
日本共産党の山口富男議員は一日の衆院厚生労働委員会で、認定のための調査項目そのものが障害者の状態を適切にくみとるものになっていない問題を取り上げました。
一次判定に利用する認定調査項目をどうするかは、介護保険の要介護認定の調査項目をもとに検討されているところです。
しかし、介護保険の審査基準をそのままあてはめたモデル審査会の結果をみると、一次判定の結果が二次判定で変更された事例が、知的障害者で48%、精神障害者で44%にものぼりました。介護保険の場合は29%です。「信頼できるのか」という山口氏の質問に、厚労省自身「ふさわしい基準ではない」(塩田幸雄障害保健福祉部長)と認めました。
■自公は審議急ぐ
衆院厚生労働委員会の参考人質疑(五月十七日)でも、DPI(障害者インターナショナル)日本会議の尾上浩二事務局長が「本当に重度障害者や知的や精神の障害を持つ仲間の特性やニード(要求)を踏まえたものになるのかどうかが非常に疑問」と指摘しました。日本盲人会連合会の笹川吉彦会長も「適切な評価ができるかどうかが問題」とのべています。
厚労省は五月から七月にかけて全国六十一市町村で実施しているモデル事業の結果などをふまえ、調査項目など認定手続きの詳細を確定します。九月までかかる見込みです。制度の大前提である認定のしくみさえ示さないまま、自民、公明両党は法案の審議を急ぎ、採決に持ち込む動きを強めています。 (秋野幸子)