2005年5月15日(日)「しんぶん赤旗」
障害者「自立支援」法案 山口議員の質問
障害重いほど負担重い
「障害者自立支援法案」を審議した十三日の衆院厚生労働委員会。前日、六千人の障害者が全国から集まった集会の決議が、そのまま審議の焦点になりました。なかでも怒りをよんでいる「応益負担」の導入。日本共産党の山口富男議員が論陣をはりました。
(秋野幸子)
山口 「応益と定率、違いは」
厚労省 「意味は変わらない」
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応益(おうえき)負担とは何か。福祉サービスに価格をつけ、サービス利用は利益なのだから、使うほど自己負担を高くしていく仕組みです。障害が重くなるほど、立場が弱くサービスが必要になるほど、重い負担が強いられることになります。応益が原則と説明した厚労省ですが、すぐに「定率負担」といいかえました。
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山口 応益と定率。どう違うのか。
塩田幸雄厚労省障害保健福祉部長 応益という言葉が与える語感が、必ずしも私どもの考えを反映した言葉ではない。
負担増の語感をなんとかやわらげようとした苦心がうかがえます。結局は「サービスの伸びに応じて負担をしていただくことをどういう角度から表現するかということ。意味はそんなに変わっていない」(塩田氏)と認めました。
「福祉の制度としておかしい」と山口氏。国連からでている障害者の権利宣言を読み上げました。「障害者は同年齢の市民と同等の基本的権利を持つ」――。「同等の状態にいくまでは支援の対象となる。いわば権利だ。それ(支援の手段)を充実させようとすると、あなたは重いから負担を重くしますというのでは、福祉は死んでしまう」。息もつかず山口氏は声をはりあげました。
山口 「上限に根拠はあるか」
厚労省 「制度の整合性から」
「応益負担」を導入しても福祉として「間違っていない」とのべる尾辻秀久厚労相。「低所得者にきめ細かい軽減措置をとっている」という理由です。“きめ細かい配慮だ”とは、所得ごとに設定する利用者負担の上限(別表、法成立後政令で確定)です。
本当に「きめ細かい」といえるのか。山口氏は反論しました。
低所得者への上限は、「低所得1」「同2」の二つのランクがあります。在宅でサービスを利用している障害者のうち、約七割が「低所得1、2」にあたります。「低所得1」に該当するのは、障害基礎年金二級の人です。年金額は月約六万七千円です。この場合の利用者負担の上限は月一万五千円。収入となる年金の二割にあたります。
同じように、障害基礎年金一級(月約八万三千円)の人が対象になる「低所得2」では、負担の上限は月二万四千六百円。収入の三割にもなるのです。
山口 収入の二割、三割をおさめろということを障害者に求めて、どこにきめ細かさがあるのか。障害者の生存権の侵害にもかかわる非常に重たい上限だ。
塩田 ぎりぎり負担できる範囲内だ。
山口 どこにその根拠があるのか。
塩田 社会保障全体との整合性を考えた。
上限額は、障害者の生活と人権を考えたものではなく、他の制度と横並びにしただけでした。
山口「負担が50倍の例も」
厚労相「精査する必要ある」
障害者の医療費負担を軽減する公費負担医療制度も改悪されます。山口氏は心臓病患者の事例を取り上げました。
いまは所得に応じた負担です。十八歳以上の場合、住民税非課税世帯は負担はありません。
法案は、かかった医療費の一割を負担することになります。一定所得以上の世帯(所得税年額三十万円以上)は制度の対象外となり、医療費負担は一般と同じ三割にはね上がります。低所得者(住民税非課税)と、重度で継続して医療が必要な患者には負担の上限が設けられます。このほか、入院した時の食費が自己負担になります。
山口氏は、全国心臓病の子どもを守る会が試算した資料を示しました。
一人暮らしの三十歳の患者が、心臓手術で二十日間入院した場合。所得税課税世帯で一番低い層(所得税が年四千八百円以下)では、いまの自己負担は二千三百円です。改悪案ではこれが十一万五千四百九十円(食費を含む)に。五十倍もの負担増になります。
「これがきめ細かな対応という姿だ。変えてください」。是正を求める山口氏。
尾辻厚労相は「いろいろなケースで精査しなければならない。そのうえで答えたい」。精査が必要と認めさせました。
利用者負担の上限(案) | ||||||||||
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