2005年5月14日(土)「しんぶん赤旗」

憲法問題 海外の目

伊共産主義再建党 ニコトラ氏に聞く

戦争放棄したイタリア憲法

守る運動 いっそう重要


 イタリア共産主義再建党の平和運動担当者であるアルフィオ・ニコトラ氏にイタリア憲法の「戦争放棄」条項(第一一条)をめぐる状況などを聞きました。

 (ローマ=浅田信幸 写真も)


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 アルフィオ・ニコトラ氏(43) イタリア共産主義再建党の平和運動担当者。イラク戦争反対で大きな力を発揮したネットワーク「戦争を止めよう」委員会のメンバー。

 国際紛争を解決する手段としての戦争を放棄したイタリア憲法第一一条は、憲法の中でもっとも重要な条項の一つです。

 それはイタリアのファシズムとドイツのナチズムとの激烈なたたかいのたまものであり、抵抗運動(レジスタンス)の犠牲と勝利のうえに獲得されたものです。

 ただ残念なことに、この条項はアフガニスタンやイラクへの派兵という形で何度も「裏切られ」てきました。政府はこれを「戦争ではない」といい、「平和の任務」だとか「人道援助」などと称して、実態として米国のイラク戦争に加担しています。

 つまり憲法の条項としてこれを修正したり、削除したりするのではなく、実質的に別の名による軍の動員でこれを侵害する事態が繰り返されているのです。

 イタリアでは来年春までに総選挙が実施されますが、先の地方選挙でも示されたように、私たちも参加する中道左派連合「ユニオン」が勝利する可能性は高い。そして勝利すれば、スペインのサパテロ政権のように真っ先にイラクからの撤退を実現することを公約の中心課題に掲げるよう私たちは努めているところです。

 先日、イラクで拉致されたイタリア人記者が、解放された直後に米軍の銃撃を受け、情報機関員が殺される事件がありました。ちょうど共産主義再建党がベネチアで大会を開いていたときです。これで世論は“沸騰”しました。圧倒的多数の国民がイラクから手を引くべきだと考えていますし、この声はカトリック勢力の間でも大きく広がっています。

 いまのベルルスコーニ政権もこれを無視できず、「段階的撤退の計画がある」などと言い始めました。しかし彼には自主的な外交政策がありません。ウクライナなど自主的にイラク撤退を決めた国と比べてもその姿勢は際立っており、米国の言いなりです。

 憲法一一条に話を戻すと、これは国連憲章、日本国憲法第九条とともに、人類の歴史の進歩に重要な一歩を印したものであり、新時代を画した条項だと思います。いまブッシュ米政権を先頭にして“戦争の復権”が進められているだけに、これを守るたたかいはいっそう重要です。

 「戦争放棄」の思想は国民の間に深く根付いています。私たちは、イラク戦争反対のデモでは世界でもっとも大規模な動員に成功したことを誇りに思っています。

 現在、平和を守る課題はあらゆるたたかいに共通する問題になっています。「別の世界は可能だ」をスローガンにした世界社会フォーラムでも、戦争反対、平和擁護が掲げられています。私たちはその地域版である欧州社会フォーラムを二〇〇二年に初めてフィレンツェで開催しました。

 私は再建党の平和運動責任者として、イラク戦争反対のネットワーク「戦争を止めよう」委員会に参加していますが、ここではいま運動の「地域化」をはかることが論議されています。つまり、ラマダレーナ(サルデーニャ島の北部)の原潜基地撤去とか、アビアノ(北イタリア)米軍基地の撤去を求める運動を進めようという計画です。

 ファシズムに対する勝利と広島被爆六十年の今年、平和運動の発展と国際的な連帯の輪を広げる活動を進めたい。


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