2005年2月16日(水)「しんぶん赤旗」 所得減の家計に負担就学機会奪う恐れ高学費 知の発展の障害
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学生も父母も教職員も望まぬ国立大学費値上げをなぜいま押しつけるのか――十五日の衆院予算委員会、日本共産党の石井郁子議員の質問は、日本の知の発展にとって大きな障害になっている高学費をどうするかという大問題にまったく向き合おうとしない、政府の無責任さを浮かび上がらせました。
国立大学費14・5倍に
石井氏は、物価指数と授業料の指数の推移をグラフで示しました。一九七五年を一〇〇とした場合、二〇〇四年で物価指数は一八〇・〇、私学の授業料の指数は四四七・八にたいして、国立大学の授業料指数はなんと一四四六・七。その突出ぶりはあまりに異常です。
谷垣禎一財務相は、今回の国立大学授業料の値上げの理由について、「国立大学と私立大学の格差是正などを総合的に勘案した」と答えました。とんでもない言い分です。
石井氏が明らかにしたように、私学との比較でみると、国立の授業料標準額五十三万五千八百円にたいし、四国の松山大学では年間五十七万円とほぼ国立なみ。大学院などでは、すでに私学を上まわる部分もでています。こうした国立大学費値上げが、公立大、私大の学費引き上げ圧力として働くこともみのがせません。
石井氏は、「いまの社会経済情勢では、授業料は下げてしかるべきものだ」とのべました。デフレ経済のなかで、家計所得は九七年度の二百八十兆円をピークに〇三年度で二百六十五兆円まで減り、平均的なサラリーマン世帯の実収入は九七年から〇四年の間に七十八万円も減っています。それでも、家計に負担を押しつけることが可能だという判断は、根本的に間違っています。
高等教育の将来に危ぐ
石井氏が指摘したように、昨年十二月の中央教育審議会中間報告「我が国の高等教育の将来像」(〇五年一月に答申)は、学費について「国公私立を問わず学生納付金が国際的にみても高額化しており、これ以上の家計負担になれば、個人の受益の程度との見合いで高等教育をうける機会を断念する場合が生じ、実質的に学習機会が保障されない恐れがある」とのべています。
中教審ですらこうした危ぐの声を上げざるをえない背景には、日本のあまりにも貧しい高等教育への財政支出の状況があります。
高等教育に対する公財政支出の対GDP(国内総生産)比では、デンマークをはじめ1%以上の国が十七カ国あるのに対し、日本は平均以下の0・5%。高等教育費負担では、国の負担より家計負担のほうが大きくなっています。
「今後、高等教育に対する公的支出を欧米諸国なみに近づけていくよう最大限の努力が払われる必要がある」(前出、中教審答申)という指摘がある通り、政府が世間なみに教育に予算をまわすなら、今回の学費値上げなどする必要はなくなります。
今回、授業料の値上げに踏み切った大学の中には、「学生諸君へのお詫び」という文書を出したところもあります。
文部科学省の「学生生活調査」でも学生の五人に四人はアルバイトをしているとされるように、学費が高いため学生も大学院生も生活費を切りつめアルバイトにおわれています。学費のさらなる値上げは、経済状況によって学生の就学機会を奪うものとなりかねません。 鮫島 克記者