2005年1月12日(水)「しんぶん赤旗」 障害者福祉 痛み求める政府案小池政策委員長に聞く (中)「所得に応じた負担」を放棄――なぜ「障害者自立支援給付法案」をつくろうということになったのでしょうか。
契約方式を導入小池 そもそもは、五年前の国会で社会福祉事業法が「改正」され、障害者福祉制度に支援費制度が導入されたことがきっかけです。支援費制度というのは、それまでは行政の責任で福祉サービスを提供していたのを、障害者とサービス供給側の施設や事業者との契約という形にかえていくという制度でした。 こういう支援費制度導入に日本共産党は反対しました。なぜなら、高齢者介護でも施設不足は深刻ですが、障害者の分野はそれ以上、ケタ違いに施設が足りない。高齢者は基盤整備の目標となる「ゴールドプラン」などが市町村ごとに作られます。障害者プランもありますが、市町村の「障害者計画」は大変立ち遅れており、数値目標もないものが多い。 利用者と事業者との契約制度にかえると政府は「サービスを選択できるようになる」といいますが、基盤整備が遅れているなかで選択できるだけのサービスがないと、逆に負担能力によって弱い立場にある人が切り捨てられかねない。その危険性を指摘したわけです。 本来行政の責任実際、支援費制度が始まり、何が起きているかというと予算不足です。一年目の二〇〇三年度は百億円以上。今年度は二百五十億円以上不足する事態になりました。これは自治体からの要求に比べてですから、実際の障害者の要求から比べればもっと不足しているというのが実態です。必要な量の半分くらいしかサービスが受けられないという声もあがっています。 本来は厚労省の予算の立て方が悪かったのですから、やはり責任をもって必要なだけの予算を確保すれば解決できる問題です。ところが政府はそういう努力を続けることをやめて、制度改悪で予算不足をかわそうとする。これが今度の「自立支援給付法案」の出発点にあったことです。 応益負担に転換――「応益負担」ということで、負担のあり方を根本的に転換します。 小池 五年前の福祉事業法「改正」の国会審議のときに政府はなんていっていたか。自分でサービスを選択できる、利用者本位の社会福祉制度を確立するんだ、公的な責任が後退するようなことがあってはならない。こうのべて負担は所得水準に応じた「応能負担」という考え方で支援費制度を始めました。 これをわずか五年で投げ捨てるのです。「応益負担」ということで、利用するサービス量が増えるほど自己負担を高くしていく。障害が重いほど必要となるサービスも増えていきますから、「応益負担」は障害が重いほど自己負担の痛みを強くしていく仕組みといえます。 負担増を提示された社会保障審議会の障害者部会(〇四年十二月十四日)で東大の福島智・助教授は「無実の罪で収監された刑務所からの保釈金の徴収に等しい」と強烈に批判しました。 福島さんは、自身がまったく目が見えない、耳が聞こえないという全盲ろうの障害者です。障害者は行動の自由やコミュニケーションの自由が奪われていることを、無実の罪で刑務所に入れられているような存在にたとえ、個人の力や責任を超えた困難な状況に置かれた障害者が生きるうえで、基本的な自由を保障するための支援に利用料を求めるのは、刑務所から解放されるための保釈金と同じではないか、ということをのべたのです。 (つづく) |