日本共産党

2004年12月16日(木)「しんぶん赤旗」

北朝鮮拉致問題での緒方議員の質問

参院特別委


 日本共産党の緒方靖夫議員が十四日の参院拉致問題特別委員会でおこなった質問(大要)を紹介します。


緒方 「特殊機関の関与で調査が難航」は事実か

アジア大洋州局長 ご指摘の通り。書類を焼却されるなど、難しさある

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質問する緒方議員=14日、参院拉致問題特別委員会

 緒方議員 第三回日朝実務者協議の際、北朝鮮側から横田めぐみさんの遺骨として提供された骨も、松木薫さんの遺骨とされた骨も、別人のものであることが公式に確認されました。北朝鮮の態度は、きわめて重大かつ無責任であり、わが党は北朝鮮側の不誠実な態度に厳しく抗議するものです。どうしてこんなことが起こるのか。その最大の問題になっている北朝鮮の特殊機関についてお尋ねしたいと思います。

 第三回実務者協議で、北朝鮮調査委員会の責任者、ジン・イルボ人民保安省局長は、「特殊機関を含むすべての関連する中央機関、地方行政機関など関連団体に対し調査を実施した」と説明する一方で、「特殊機関の関与した事案であり、捜査がきわめて難しかった」とのべたといいます。また第一回、第二回の協議でも、ソン・イルホ外務省副局長は、「拉致にかかわった特殊機関の協力が得られず、調査が難航している」と繰り返しのべたといいます。この発言は事実なのでしょうか。

 藪中三十二・外務省アジア大洋州局長 お答え申しあげます。基本的にいま委員のご指摘の通りでございまして、先方ジン・イルボ、これは調査委員会の責任者でございましたけれども、調査の活動としては特殊機関を含むすべての関連する中央機関に対する調査を実施したということはいっておりましたけれども、他方において、証人であるとかあるいは物的証拠であるということについての調査を行っていく過程のなかで、特殊機関においてすでに書類が焼却されている等々、そうしたことでのむつかしさということもわれわれに説明していたという経緯がございます。

緒方 特殊機関とは何なのか。説明受けているのか

アジア大洋州局長 具体的な説明は受けてない

 緒方 そうするとですね、そういう特殊機関とは何なのか。政府は北朝鮮からどのような説明を受けられているのか、どんなものと把握されているのかおうかがいいたします。

 藪中 北朝鮮政府の側から特殊機関の具体的な内容について、あるいは性格について、説明を受けているということはございません。先方はこれは特殊機関であるということを繰り返すのみでございます。

 もちろん、政府としても北朝鮮がいういわゆる特殊機関であるとか、あるいは工作機関に関しましてはさまざまな情報に接しております。朝鮮労働党の傘下にある、あるいは人民軍の傘下にある機関というのが、こうした特殊機関、あるいは工作機関にあたるものであろうということで考えられますが、北朝鮮側がそれについて具体的にわれわれに説明をしているということはございません。

 緒方 北朝鮮側が拉致事案の責任者として処罰したという特殊機関のチャン・ボンリム、およびキム・ソンチョルという二名の人物は、特殊機関のどういう部署で活動していたのかという説明は受けられていますか。

 藪中 まさにこの点はわれわれも厳しくただしたところでございます。といいますのも、先方の説明で、拉致事案の責任者というのがこの二名、チャン・ボンリム、およびキム・ソンチョルということで、この二名がすでに処罰されているということでございました。われわれの求めに対して、今回先方が出してまいりましたのは、この二人の当時の裁判記録の一部でございます。これを現在、精査しているところでございます。

 緒方 横田めぐみさんの夫であったとされるキム・チョルジュン氏、この方は現役の工作員とのことですけれども、どんな部署で所属していたのか。説明は受けられていますか。

 藪中 先方の説明では、このキム・チョルジュン氏というのが工作機関に属しているということだけの説明がございまして、もちろんそれ以上にはまさに工作(員)ということで先方は説明をしておりません。

 緒方 工作機関というのは特殊機関のことですか。

 藪中 そのように理解しております。

緒方 調査にいかに非協力的な存在であるかが示された

アジア大洋州局長 真実の追究ということでは大きな壁を感じている

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大臣らに質問する緒方靖夫議員=14日、参院拉致問題特別委員会

 緒方 要するに、北朝鮮は拉致問題の解明にとって最大の問題と思われます特殊機関について、何も具体的には説明をしていないというふうに私は理解いたしました。しかもですね、キム・チョルジュン氏の問題では、先ほども議論になりましたけど、DNA鑑定のために血液採取とか髪の毛の提供とか、写真撮影さえ拒否したわけで、特殊機関というところがいかに調査に非協力的な存在であるかということ、そしてまた、これを相手に調査するということがいかに困難かということも同時に示されたと思いますけれども、その点についてもおうかがいいたします。

 藪中 率直に申し上げまして、私どももそのような、非常に歯がゆい思いというか、困難に直面したわけでございます。

 具体的にいろいろ質問する、追及いたしましても、一つは、これが特殊機関のものであって当時の記録というのは存在しない、あるいは焼却されている、あるいは特殊機関の現役の人間であれば、直接に会うことができない。そうしたことで、実際の真実の追究ということでは、たしかに非常に大きな壁、難しさを提供していることは、われわれも直接に感じたところです。

 緒方 ところで、二年前の日朝首脳会談で、金正日氏が、特殊機関の一部が妄動主義、英雄主義に走って拉致をおこなったと説明した、その特殊機関というのは、現在も存在しているのでしょうか。そしてまた、その特殊機関と先ほど指摘した北朝鮮の調査委員会が調査対象としているという特殊機関というのは同じ組織なのでしょうか。

 藪中 基本的に、特殊機関ということで先方から説明があったものについては、機関としては存在しているというふうに理解しています。もちろん、特殊機関という中に、先ほど申し上げましたようにいくつか、例えば朝鮮労働党の傘下、あるいは、人民軍の傘下といったものがあるように承知していますが、いずれにせよ、そうした機関が、名前が変わっても廃止されたことはないと、われわれは理解しています。

 緒方 そうすると、同じ組織が存続している。つまり、拉致をおこなった組織が存続し、それを対象に、いま調査委員会が調査をしているという認識になりますか。

 藪中 まさに先方の説明も、その特殊機関の一部の妄動主義者がということで、そのなかの特定の個人だという説明がございまして、そして、先方が説明しましたのは、拉致事案の責任者というのがこの二名であった、これがいわゆる責任者であったということで、それが処罰の対象になったというのが先方の説明です。

緒方 問題にメス入れられる相手と強力な交渉を進めることが必要

官房長官 政府として真剣かつ強力に対応しなければならない

 緒方 細田官房長官におうかがいいたします。いま藪中局長から、交渉の困難さ、わけても局長は特殊機関が調査の壁になっている、壁という言葉さえ使われて答弁があったわけですけれども、金正日氏が小泉首相の再訪朝の際に、「安否不明者の十名の再調査を白紙に戻して徹底的に行う」と約束したわけです。そうした壁をつくっていること自体、金正日氏が約束したことが果たされていないということになるのではないでしょうか。

 細田博之官房長官 私どもはそう感じています。はっきりと、これまでの数々の拉致問題について、どこまで金正日委員長が指示をし、具体的に何名の日本人を拉致したのか、これは大きなまだ未解明の部分はたくさんありますが、少なくとも、首脳会談において、金正日氏が、最初はある資料、データ等を出したけれども、これをいわば撤回をして、二回目の首脳会談で撤回を事実上して、再調査を命ずるということを言ったということは、一つの大きな展開をしたのではないかとわれわれは考えておったわけですが、それを実際に出てきた事実を見れば、まだこれから若干の事実がかなり大きな大部の資料もあって、まもなく解明が進むと思いますが、これが一向に改善をみないということは、いかなる背景があるのかということはよく考えなければならないと思います。

 緒方 私は、これまでご答弁をうかがいながら、北朝鮮側の調査委員会は、特殊機関のなかまで入って調べたと説明しているようですけれども、調査を通じて彼らが提供してきた情報や物証のほとんどは結局、特殊機関から出されたものをそのまま日本側に提供したにすぎない感じがしました。官房長官のお考えをおうかがいしたいと思います。

 細田 しかし、一国の代表する人がそういうふうに約束して、その通りやっていないわけですから、われわれは先方、政府、責任者に対して強く事実を求めていく、これしかないと思っております。

 緒方 私は、その真相究明ですね、それがまさにこの事案では決定的に大事になっているということを痛感しています。つまりですね、北朝鮮の日本側への資料の提供、情報の提供、これは結局、北朝鮮の特殊機関の管理下に置かれているのではないか、と私はそう感じています。結局はですね、金正日氏がいった一部特殊機関の妄動主義が今でも続いている。そして真相解明を妨げる役割を果たしているということになるのではないかと思います。これでは、まともな資料も情報も出てくるわけはないし、真相解明に近づけない。まさに藪中局長が言われた壁をつくっていることになると思うんですね。

 こうした特殊機関を相手に調査する以上、これまでと同じやり方で協議を続けても拉致問題の解明と解決の保証はないのではないかと感じるわけです。重要なことは、これまでの延長線上ではない、拉致問題に正面からメスを入れることができる相手と強力な交渉を進めることが必要ではないかと思いますけれども、その点について官房長官のご見解をおうかがいいたします。

 細田 実務者協議においてはですね、北京においてかつ向こうの代表とこちらの代表で一定レベルでやってきたわけですけれども、それではどうも解明できない。しかもすぐに逃げられてしまう。これはまた平壌にすぐ帰って相談しなきゃいかんとか、そういう事実についてはいま持ち合わせていないというようなことで、これでは北京では交渉しても進展がないのではないかということで、しかも局長レベルにあげて、そして平壌でやった。そして向こうの調査機関が出る。こちらも警察等の専門家が出て、きちんと証拠調べ等もできる専門家を派遣してやっておるわけですから、これで一応の進展をみるのではないかと期待しておったわけですが、そうではないということでございますので、政府としてもまもなく出てくる調査結果をもってどういうふうに対応するか、これは真剣かつ強力に対応しなければならないと思っております。

緒方 交渉の推移いかんでは経済制裁もありうる

 緒方 その通りだと思いますね。それで、私たちの党の志位委員長が九日、小泉首相に対して、北朝鮮側の交渉担当者を拉致問題の全ぼうを知り、問題の解決に責任を負うことができ、権限をもった人物にすることを北朝鮮側に要求するよう要望しました。まさにいまの局面というのは、こうした立場で交渉のしかけをかえて、事態の打開をはかる、そうする必要があると私たちは考え、信じております。

 最後になりますが、この委員会の最後に採択される予定の決議案について一言のべておきたいと思います。

 わが党は、拉致問題の解決のためには、交渉を強めることによって解決することを最優先にすべき、最優先に追求すべきだという立場であります。決議案の中に、「粘り強く協議を進める」ことが明記されたことは、重要であると考えます。

 いまの局面で大事なことは、北朝鮮が提出した資料が意図的な虚偽を疑わせるものであり、そこには拉致の実行にかかわった特殊機関が介在しているという重大な問題があることが判明したことです。このことから明らかになった新しい局面のもとでは、交渉による解決を成功させるためにも、今後の交渉の推移と、北朝鮮側の態度いかんによっては、経済制裁もとるべき選択肢の一つである、ありうるということを考えるものであります。

 以上の立場から、決議案に賛成する態度を表明いたしまして、私の質問を終わります。



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