2004年12月15日(水)「しんぶん赤旗」
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「若者に仕事を」「人間らしく働きたい」と十二日、東京都内で開かれた全国青年大集会での日本共産党の志位和夫委員長のあいさつ(大要)を紹介します。
私たち日本共産党は、昨年十月のこの集会に参加し、若いみなさんの中ですごい運動が広がっているなと痛感しまして、昨年十月に共産党のホームページに「若者ネットワーク・若者に雇用を」というサイトを開設しました。アンケートへの書き込みが毎日のようにたくさんとどき、すでに三百四十七通の書き込みがされて、全部ホームページに出てますからどうかご覧ください。
どれも胸がしめつけられるような痛切な声を真剣につづっていますが、とくに心に残った二つの訴えを紹介します。
一つは、「サービス残業」の訴えです。三十代の正社員の若者です。「建築関係の仕事をしています。毎月の残業時間は百時間以上で、手当はいっさいなし、そのくせ体調を悪くして病欠にするとその分給料が引かれます。『お前の代わりはいくらでもいる』といわんばかりに、どんどん退職者を出しては新たに求人を募集します。私はどうしたらいいのでしょうか。この国に幸せは存在するんでしょうか」
もう一人は、派遣労働で苦しんでいる三十代の若者です。「一昨年、八年間勤めた運送会社を不当解雇され、いまはパートの派遣社員です。定職を探していますが、二十社近く受けてことごとく落ちました。『降りやまぬ雨はない』、とか『明けない夜はない』といいますが、もう二度と抜け出すことのできない暗やみに閉じ込められてしまったような気持ちがします。この雨がやむときがくるのでしょうか」
一人の若者は「この国に幸せがあるのか」、もう一人は「この雨が降りやむときはくるのだろうか」と問うています。
将来への希望に胸をふくらませるべき若いみなさんを、ここまで追いつめてしまった政治に未来はあるでしょうか。
いま日本の完全失業者三百十一万人のうち百五十万人は若者です。働いている若い方々のうち、多くがパート、アルバイト、派遣、契約社員など不安定雇用のひどい働かせ方をされています。戦後最悪の事態です。日本の未来にとって一刻も放置されてはならない事態ではないでしょうか。(「そうだ」「その通り」の声、拍手)
こうしたなかで、私が、この一年間のみなさんの運動を見ていて頼もしく思うことが二つあるんです。
第一は、職場の無法を一掃するために勇気をもって声をあげ、各地でたちあがり、勝利をかちとってきつつあることです。
日本は「ルールなき資本主義」の国といわれていますが、そういう国でも法律はあります。合理的な理由がなく、一方的に解雇することは違法行為です。ただ働きの「サービス残業」は、もっとも悪質な無法行為です。
この違法、無法行為を勇気をもって告発し、たたかえば勝利をかちとることができることを、この一年間のたたかいが示しているんじゃないでしょうか。
不当解雇を撤回させ、不払い残業代を払わせるなどのたたかいもとりくまれ、数々の勝利をおさめました。「サービス残業」は二〇〇一年四月に是正の通達を出させて以来、四百五十億円の不払い残業代を払わせることができました。(歓声、拍手)
若いみなさんのたたかい、共産党のたたかいが一体になった成果です。もっと広げようではありませんか。(「そうだ」の声、拍手)
第二に、若者のみなさんがたたかうための組織を各地でつくり、労働組合やさまざまなネットワークをつくりつつあるということです。
組織をつくって経営者側と堂々と団体交渉をおこない、労働条件改善の成果をかちとりつつある。これは憲法で保障されている権利であります。
憲法が素晴らしいのは九条だけじゃない。二七条には勤労の権利が書いてあります。すべての国民は人間らしく働く権利をもっている、とあります。二八条には、労働者の団結権、ストライキ権、団体交渉権、つまり労働者が人間の尊厳と誇りをもち、自分と家族の幸福を追求するために、力を合わせて行動する権利を、おかしてはならない基本的人権として明記してあります。
若いみなさんが働く者の権利を行使し、たちあがりつつあることは素晴らしいことだと考えます。
いまの社会は殺ばつとしています。こういう社会で人間らしく生きることとは、何か。人間らしく生きることに対する不当な圧迫に屈しない、不当なことがあったら見逃さず、頭を上げてたたかう。ここにもっとも人間らしい、若者らしい生き方があると思います。
そういうたたかいが、全国津々浦々で始まっていることを大変うれしく思います。(拍手、指笛、「いいぞ」の声)
それでは、何を見すえてたたかうことが重要でしょうか。
若者の雇用問題を深刻にしてしまったのはどこに責任があるのか。若者の責任じゃありません。自民党の政治に責任がある。そのことをはっきりと言いたいと思うのであります。(「そうだ」の声、拍手)
自民党政治の責任という場合、ヨーロッパに比べて二つの異常があることを告発したい。
第一の異常は、正社員と非正規社員の労働条件にひどい格差があることです。
OECDという先進国の主要な国が入っている機関が、最近「OECD雇用アウトルック二〇〇四」という報告書を出しました。この中で「日本の特徴は正社員と非正規社員の間に大きな格差が存在することにある。有期雇用や派遣労働への規制が過去二十年にわたり徐々に緩められてきた。その結果、日本ではこういった形態の就業への規制がOECDの平均をかなり下回る状況になっている」といっています。
ヨーロッパ水準に比べ、日本は格差がはるかにひどい状況だということを告発しているのです。
もう一つ、最近読んだ文書で印象的なものがあります。日本経済調査協議会の報告書です。ヨーロッパでは、正規社員も非正規社員も同じ労働をやったら同じ待遇、これが当たり前のルールになっていることを詳しくリポートしています。
フランスでは企業が非正規社員を雇うさい、正規社員と同じ時間当たり給料を支払わなければならないというルールがある。同一労働同一賃金です。それどころか、非正規社員に対しては給料に10%上乗せしなければならない。非正規社員というのは雇用が不安定でしょう。それに対する保障として、賃金の上乗せが義務づけられているんです。休暇手当も非正規社員の方に10%上乗せなんです。
日本では、時間当たりの賃金というのは、非正規社員は正規社員のだいたい半分でしょう。それに正社員は人事課で扱われるのに対し、派遣などの非正規社員は資材課ではありませんか。鉄やセメントと同じ資材として扱うとは何ということでしょう。(「そうだ。そうだー」「その通りー」の声、拍手)
この集会スローガンに「均等待遇」を掲げているのは非常に大事です。正社員も非正規の社員も同一労働には同じ賃金、同じ労働条件を保障せよ。これは当然の要求だということを強く支持し、ともにたたかいたいと思うのであります。(指笛、拍手)
第二の異常は、若者の雇用の予算が極端に少ないことです。
政府は、「若者自立・挑戦プラン」をつくり、青年雇用対策にとりくんでいるといいます。しかし予算は今年度四百九十四億円です。国内総生産が約五百兆円ですから、その一万分の一、0・01%にすぎません。経済の規模にしめる比率はフランスの四十三分の一、イギリスの十三分の一、ドイツの十分の一。まったく若者への予算が足らないんです。
米軍への「思いやり」予算―条約上、出す義務のない予算に二千四百億円使っている。「思いやり」予算の五分の一しか若者対策にお金を使わないというのは間違ったやり方ではないでしょうか。(「そうだ」の声、拍手)
池子の森を壊して米軍住宅をつくる、沖縄の美しいサンゴ礁の海を壊して最新鋭の海兵隊の基地をつくる。ここに予算をつける。ところが若いみなさんの雇用のためには予算をつけない。「せめてヨーロッパ並みの若者対策の予算を組め」と政府に要求しようと呼びかけたいと思うのです。(大きな拍手と歓声)
政府の若者対策が貧しいのは、「若者の雇用問題は若者の責任なんだ」という考え方が根っこにあるからです。だから「若者自立・挑戦プラン」なんて名前をつけるんです。
しかし、若者が「自立」しようにも就職できない。「挑戦」しようにもチャンスがない。そういう社会にしてしまった自民党政治の責任だということを強く言いたいのです。(「そうだ」の声、拍手)
ところが全然、自覚していない。その最悪の標本が、自民党の武部幹事長の言葉です。青少年の問題をどう解決すべきかという問題についてふれて「暴論かもしれないが、一度、自衛隊に入ってサマワみたいなところへ行って活動したら、三カ月で人間性が変わるということもある」と。ここには自民党の思想がよくあらわれていると思うんです。
結局、青年が悪い、青年の根性をたたき直せば問題は解決する、と。しかも、ファルージャで罪のない若者や女性、お年寄りを虐殺している米軍の手助けのために派兵されている自衛隊に入ってサマワに行けなどという。政治の退廃と無責任も極まれりというべきではないでしょうか。(「そうだ」の声、拍手)
政治が本気になって責任を果たせば、雇用問題は大きく解決に道が開かれます。
完全失業者三百十一万人ですが、「サービス残業」をなくせば百六十二万人の新たな雇用が生まれます。もう一つは有給休暇です。有給休暇をしっかりとれば百四十八万人の新たな雇用が生まれる。あわせると三百十万人です。この二つだけでも日本の失業問題は解決するんです。
ゆがんだ自民党政治を大もとからかえましょう。若者に働きがいのある仕事を保障することができる政治に大もとから切り替えようではありませんか。(大きな拍手と「がんばろう」の歓声)