2004年12月4日(土)「しんぶん赤旗」
暖房用の灯油がじりじり高騰を続けています。十一月の店頭販売価格は、全国平均で十八リットル当たり千三十二円(石油情報センター調べ)、前月比で三十七円の値上がり。需要が増える時期を迎えて、市民生活に打撃を与えかねない状況です。
矢守一英記者
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先月三十日、積雪十六センチを記録した北海道札幌市。最低気温はマイナス五度まで下がりました。
「ことしは暖かいとはいえ、私たちにとって、灯油は必需品です」というのは市内に住む守神正純さん(73)です。
「いくら高くなっても、食事と暖房だけは削るわけにはいきません。なるべく使わないようにするとか、夜は早く寝るようにして、生活を守るしかない」と、あきらめ気味に語ります。
北海道の十一月の灯油価格は、十八リットルの店頭販売で平均千二十八円(石油情報センター調べ)です。生活協同組合などの共同購入価格でも九百七十二円でした。
店頭価格は十月に比べ三十九円(一リットル当たり約二円。月五百リットル使用として千八十三円)の値上がり。北海道では一冬で一戸平均二千リットル使うともいわれます。大きな負担になることは間違いありません。
守神さんのまわりでは、年金暮らしの人で負担に耐え切れず、石油から薪(まき)ストーブに変えたうえ、あちこちで拾ってきたものを燃やして暖をとっているという例もあります。
市内東区の村本英己さん(65)は「少しでも安いものをと、灯油の共同購入をしています。寒さが厳しくなるこれから、ジワジワと家計に響いてくる感じだ」といいます。
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灯油の需要が減っているというデータもあります。
宮城県の地域では、十月四日からの二カ月間の灯油の出荷が、前年比で10%も落ち込みました。価格は一年前に比べ一リットル当たり十円アップ。全国的な「暖冬傾向」も影響していると考えられますが、価格アップの影響は否定できません。
みやぎ生活協同組合(仙台市)で共同購入に取り組んでいる桜井重夫さんは「なかには価格上昇による買い控えもあります。暖房を控え、家の中でも厚着をして耐える、という状況でしょうか」と話します。
気になる灯油価格の行方。今後どう推移していくのでしょうか。
原料となる原油価格はニューヨーク市場で急落。約三カ月ぶりの安値水準に戻っています。しかし関係者の間では、それがすぐには灯油価格の下落につながらない、との見方が一般的。イラク戦争や投機資金の流入など、原油高騰の“火ダネ”も残ったままです。
石油情報センター調査役の大橋益男さんは「灯油は気候の変動によっても価格が左右される季節商品です。暖冬が続けば値下がりする可能性もあります。原油価格との関係では、価格転嫁にズレが生じることがあり、それらの動向をよく見極めることが大切」と分析します。