日本共産党

2004年11月15日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

公園の危険な遊具改修へ行政動かす


 新日本婦人の会や日本共産党などが全国各地で行っている公園遊具の総点検(公園ウオッチング)の結果、多くの地域で改善が実現しています。先に東京と大阪の取り組みを紹介(九月二十七日付)したのに続き、北海道の新日本婦人の会の取り組みと、国会で箱ブランコの危険性を取り上げたことのある瀬古由起子前衆院議員(衆院東海ブロック比例代表候補)の手記を紹介します。


北海道 新婦人が264カ所調査 マスメディア報道市も「資料ほしい」

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はずれかかっていたシーソーのねじ=札幌・大谷地駅前公園(上)
改善された同じシーソーのねじ=同公園(下)

 新日本婦人の会が五月に呼びかけた「公園に安全な遊具を! 全国いっせい緊急公園ウオッチング」にもとづいて、北海道では、事故の相次いだ公園遊具の改善に取り組んでいます。

 道内では、五月から七月にかけて二十九地域二百六十四カ所の公園ウオッチング(総点検)を実施。半数の公園で危険な遊具や個所が見つかりました。危険な遊具や遊び場で最も多かったのがすべり台、次に砂場でした。その多くが構造や配置が問題で、事故が起きていたり、腐食やひび割れ・破損が進んでいることが明らかになりました。

 ウオッチングの結果をもとに、各地域で「子どもの居場所としての公園を急いで改善してほしい」と自治体に要望すると、申し入れをした九割以上の地域で改善が約束され、改修を実現しています。

 札幌厚別支部コスモス班は、排水溝のふたの大きなすき間やシーソーのねじの緩み・ずれ、破損した遊具などを発見。すぐに厚別区長あてに申し入れをし、改善されました。

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記者会見で公園の調査報告をする新婦人の人たち。左が斎藤佐和子さん=8月4日、札幌市

 帯広支部では、「うちのそばの公園でも、木製遊具が腐食していてとげが刺さったと市役所に連絡したら、すぐに撤去されちゃったの。子どもたちの好きな遊具だったので残念だったわ」などの問題や、公園に関する思い、日ごろ感じていることが次々出され、さっそく親子でのべ八十二人が参加して、市内十五カ所の公園ウオッチングに取り組みました。

 「お盆明けに市に要望を出さなくちゃね」と話し合っていた矢先、新婦人道本部でまとめた「公園ウオッチング」がマスコミで大きく取り上げられ、市役所の公園緑地課の担当者から支部に「すぐ改善したいので調査結果を送ってください」と電話があり、すぐに要望書をつけて結果一覧を送りました。

 九月に入り、要望した公園をはじめ、不足していた幼児用の遊具が設置されるなど、あちこちの公園で改善が始まっています。

 士別支部では、二回にわたり市内十九カ所の児童公園を対象に公園ウオッチングをして、五十三のチェック個所の修理・改善を求めて八月に市長へ要請書を提出しました。

 安心して子どもを育てられる街づくりとして、全道で公園ウオッチングに引き続き取り組んでいます。

 斉藤佐和子・新婦人北海道本部副会長


箱ブランコ撤去 全国に拡大

急げ安全基準の法制化

瀬古由起子前衆院議員の手記

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瀬古由起子さん

 アメリカやヨーロッパ諸国にはある、公園遊具の安全基準が日本にはなかったために、多くの子どもたちが遊び場で傷いたり命を失いました。

 欧米では、たとえ遊具から落下しても致命的な頭部外傷を防止できるよう、遊具下の地表面を衝撃吸収素材に置き換えることなどにとりくんでいます。公園には、けがをすれば子ども自身も連絡できる掲示板が立っていて、小さい事故も報告され、病院からも報告するしくみがつくられています。

 私が二〇〇一年に国会でこの問題を取り上げ、「子どもたちの楽しく安全な遊び場を考える議員の会」をつくるきっかけになったのが「箱ブランコ事故」の裁判でした。

 この「箱ブランコ」はいわゆる「ゆりかご型」「対面式」といわれるもので、動かすと重さで勢いがついて制御できなくなり、振り落とされてブランコと地面に頭を挟むという死亡事故などが多発しています。一九六〇年代以降でも六十七件の重傷事故が起き、わかっているだけで二十五人が亡くなっているのです。

 このブランコに体を挟まれ重傷を負った神奈川県藤沢市の小学三年生(当時)の岡部咲ちゃんは、「『遊びに行ってきます』といって子どもが帰ってこなかったら、おかあさんがどんな悲しいだろう。『遊び方が悪い』といわれても、死んだため言い訳もできない子どもがかわいそう」と、九八年五月、横浜地裁に市とメーカーを訴えたのです。

 最高裁は二〇〇三年一月、事故のとき一時気を失っていた咲ちゃんに「自己責任」「証明責任」を求めて上告を棄却し、咲ちゃんの敗訴になりました。世界の流れに逆行する恥ずかしい判決でした。

 裁判は敗訴になりましたが、この間、業界団体「日本公園施設業協会」が、箱ブランコを「公共の遊び場にふさわしくない遊具」と認め、とうとう製造中止を発表し、全国でもこのブランコを撤去する動きが広がっています。

 国会での私の指摘に国土交通省もようやく〇二年に「都市公園における遊具の安全確保に関する指針」を作成し、遊具メーカーでつくる日本公園施設業協会も遊具の安全基準を公表しました。

 しかし国は、「指針」を自治体や学校、保育園など遊具の管理者に知らせて、点検や安全確保の対応を求めるだけというのです。その後も重傷事故は続いています。メーカーの安全基準も内部基準といったもので、安全性確保に強制力もなく、冒険広場、水遊び場や障害児には適用しないという不十分なものです。

 安全基準の法制化を急がなければなりません。「危険だから遊びを禁止する」「財政が厳しいので遊び場を廃止する」のではなく、子どもの冒険心、遊び心を生かしながら死亡・重傷事故を減らすことはできるのです。

 「遊び場に子どもの意見を」「子どもたちに最善の利益を」。この子どもの権利条約の精神も大いに生かして、改善の運動を進めていきたいものです。



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