2004年11月7日(日)「しんぶん赤旗」
日本共産党の志位和夫委員長が、五日、新潟県庁でおこなった記者会見でのべた、当面の震災対策についての緊急提案の要旨と、泉田裕彦知事が志位委員長に手渡した「緊急要望」を紹介します。
現地にうかがって、今回の震災がたいへんに深刻な被害をおよぼしていることとともに、この地域の独特の条件があると感じました。一つは、この地域が豪雪地帯であるということです。二つは、それともかかわって、集落ごとのコミュニティーで支えあって生活してこられた、支えあいの生活で成り立っている地域だということです。三つは、高齢化率がたいへんに高い地域だということです。
ですから、この震災にたいしては、これらの独特の条件と実態にそくした支援が必要になる――行政の側も、これまでの対策の延長線上にとどまらないで、必要とされる支援を、必要とされる規模とスピードでやりきり、抜本的な災害対策の拡充をはかるという姿勢でのぞむ必要があります。
被災者のみなさんの要望をうけて、いま講ずべき救援と生活再建のための措置として、いくつかの緊急の提案をいたします。
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第一は、いま避難生活をおくっていらっしゃるみなさんに対する支援体制をさらに強化していくという問題です。
避難所の方々の状況や要望をうかがうなかで、緊急の問題として一番心配なことは、避難生活をおくっていらっしゃるみなさんの命と健康の問題です。この点では、率直にいって、現状では、避難されている方々の医療・保健のニーズに、十分にこたえているとはいえない実情があると思います。
避難所ごとに、医療と保健の専門スタッフ(医師、看護師、保健師、ヘルパー、カウンセラーなど)を、常駐配置して、お年より、子どもさん、体が弱っている方などへのケアをゆきとどいたものにする態勢強化が必要です。そのさい、地震と余震の恐怖による精神面でのダメージも非常に大きいものがあることを考慮して、メンタル面でのカウンセラーさんの配置などのケアも必要です。
この問題は、緊急で最優先の課題の一つとして、国として責任ある対応をするように求めていきたいと考えています。
第二は、仮設住宅の問題です。降雪がせまってきているなかで、希望者全員が入れる仮設住宅を、コミュニティーを壊さない形でつくるということが急がれます。
この地域の条件を考えると、仮設住宅をつくる場合にも、二メートルから三メートルにもおよぶといわれる豪雪に対応できる仮設住宅をつくることは当然必要ですが、設置する場所の問題なども大切です。
わが党の塩川鉄也衆院議員が、国会で、自宅の庭だとか居住地の近くなど、できるだけ地域のコミュニティーを壊さない形で、設置していくことが必要ではないかとただしたのにたいして、政府も「可能だ」と答弁しました。そのために土地の借り上げなどもふくめて必要な措置を行政がとるべきです。
第三の点は、住宅の再建の問題です。そのために、これまでの被災者生活再建支援法の抜本的な改正を、強く求めます。
これまでの被災者生活再建支援法というのは、住宅が全壊の場合で最高三百万円、大規模半壊の場合で最高百万円という支援金が出るわけですけれども、この支援金というのは住宅の解体・撤去・整地費などと、当座の生活必需品などへの資金であって、住宅本体の改修とか再建には使えないとされています。つまり個人財産の補償はしない――この「壁」を打ち破りませんと、現実問題として住宅再建の保障はないということが、被災地の実態となっています。
まず支援法の対象について拡大する必要があります。現行の法律は全壊と大規模半壊が対象になっているのですが、こちらに来ますと、全壊・半壊と認定されていないが、一部損壊といわれる家屋でも、実際のダメージは非常に深刻な住宅が多いのです。もともと豪雪地帯ということもあって、家のつくりは、柱も丈夫で土台もしっかりしている。ですから建物自体は一見、壊れていないように見えるが、ヒビが土台から入って傾いているなど、建てなおすか、大規模な補強をしないと豪雪には耐えられない建物がたいへん多い。全壊・半壊だけでなく、一部損壊を含めて支援の対象にすべきです。
そして何よりも、住宅本体の再建への公的支援――個人補償を実現すること、支給額の三百万円という上限を引き上げることが必要です。さらに所得制限も基本的には取り払って、被災者のすべてにこの支援制度がいきわたるようにすべきです。所得制限といっても、所得というのは震災被害によって激変するわけですから、前年の所得を基準にして、これをクリアしないと支援の対象にすらならないというのは、道理にあうものではありません。
住宅再建への公的支援については、被災した自治体の首長との懇談のさいにも、一致してこれを願う強い声がよせられました。泉田知事からも、私あてに、「被災された住民がより早く生活を再建できる使途(自宅修理・生業再建等)に公費を使うべきであり、この点、至急改善されるよう強く要望いたします」との「緊急要望」がよせられました。被災自治体とも協力して、実現にむけて力をつくすものです。
第四に、地元産業の復興への支援という問題です。こちらにうかがいますと、地元の産業を支えているのは、繊維産業、機械産業、農業、養鯉(ようり)業、観光など、地元に根ざした産業が、この地域経済を支えているわけですが、その産業がそれぞれ危機の状況にあります。
中小業者・地場産業の復興のためには、住宅本体の再建への公的支援と同じように、中小企業の事業所が損壊した場合の公的支援(直接補償)も必要になってきます。このことも支援法の改正によって実現することを、強く要求していきます。農地と農業施設への破壊もひどく、農業被害への補償も必要です。
それから当座の融資として、現行の支援制度は、利子や償還期限などでも使いやすい制度とはいえないものですから、無担保・無利子で、返済期限も長期のものにするなど、融資制度への改善をはかっていくべきです。
第五は、医療機関の問題です。医療機関が、たいへん大きな痛手をこうむっています。十日町市では、県立十日町病院と中条病院がそれぞれ機能停止状態になっているということであり、市内に入院できる病院がなくなっています。小千谷市では、小千谷総合病院と魚沼病院がそれぞれ大きな痛手を受けているということでした。
こういう状況を放置するならば、医療の面から地域社会が壊れていくということになりますから、国の強力な公的援助によって、地域医療の拠点になる病院の再建に、すみやかにとりくむ必要があります。
住宅の再建をはかること、中小企業と農業など産業の復興をはかることと、医療機関の再建をはかること、こうした支援を全体としておこなってこそ、地域のコミュニティーが復活し、生活を再建することができます。このことを、国にたいして強く要求してゆくものです。
日本共産党中央委員会幹部会委員長 志位和夫様
冬が近づく前に、被災者の住宅の対応を行うことは、現時点で最優先の課題となっています。被災住民が避難所を退去する際には、仮設住宅に入るより自宅を修理して、自宅に戻った方が、その後の生活の再建が円滑に進むことは自明です。
しかしながら、現在の国の制度では、仮設住宅を建設する際(一戸四百万円程度)には公費を支出できるものの、自宅の修理には公費の支出ができないこととなっています。
同じお金を使うなら、被災された住民がより早く生活を再建できる使途(自宅修理・生業再建等)に公費を使うべきであり、この点、至急改善されるよう強く要望します。
また、被害の甚大さに鑑(かんが)み、激甚法などの既存の災害復旧制度の枠組みを超え、「阪神・淡路大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律」に準じ、財政支援等に係る特別立法の措置を講じるよう強く要望します。
平成十六年十一月五日
新潟県知事 泉田裕彦