2004年11月1日(月)「しんぶん赤旗」
「大学で歴史を勉強したいけど、家のローンがあって高い学費は払えない(中学生)」「学費を稼ぐためアルバイトに追われ勉強に集中できない」――日本共産党のホームページに設けられた「学費値上げ反対」のアンケートに、百人をこえる学生、父母から切実な声がよせられています。
いま、大学の初年度納付金(入学金、授業料など)は、国公立大学で約八十万円、私立大学平均で約百三十万円です。年収が四百万円未満の家庭では、在学費用(授業料、通学費など)の負担が年収の五割を超える実態があります。憲法が保障する教育の機会均等が損なわれています。
これは、世界の常識から見れば異常事態です。一九六六年に国連総会で採択された国際人権A規約の十三条二項(C)は「高等教育は…無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること」と定めています。ところが、日本政府は、同規約を一九七九年に批准しながら、同項は留保し続けています。こうした国は日本、マダガスカル、ルワンダの三国だけです。
欧米諸国では、学費は無償か安価で、奨学金も返還義務のない「給付制」が主流です。高等教育をうける権利を保障するために、その無償化をすすめる――これが世界の流れとなっています。これに対し、日本は高等教育機関の私費負担割合が56・9%と、OECD加盟二十六カ国中三番目の高さです。各国平均21・8%より極めて高く、高等教育をうける権利保障という面で後進国となっています。
これが二〇〇一年の国連社会権規約委員会で問題となり、同委員会は、日本政府に対し、「高等教育の漸進的な無償化」条項の留保の撤回を検討することを勧告し、二〇〇六年六月末までに勧告にもとづいてどういう措置をとったのか、NGOや市民とどのような協議をしたのか、報告を要請しています。
いま、大学関係者の間で、これを「二〇〇六年問題」と呼び、高学費を人権問題として広く告発しようという議論がひろがっています。
全国百十五大学の三百四十一団体が加盟する「国庫助成に関する全国私立大学教授会連合」は六月十日、採択した活動方針のトップで「二〇〇六年問題」をとりあげ、政府などに要請し広く社会に訴えるとしています。同連合が六月十八日に刊行した『私立大学の未来―改革と展望』でもこの問題を解説しています。
大学評価学会(代表、田中昌人京都大学名誉教授、益川敏英京都産業大学教授)も六月二十一日、文部科学省に対して勧告に基づいて具体的措置をとるよう要請しています。
九月十七日から開かれた全日本学生自治会総連合主催の「自治会セミナー」でも「二〇〇六年問題」が報告され、「運動を盛り上げる一つのきっかけとしたい」「高等教育の無償化の国際的な流れと日本の逆流との矛盾が鮮明になった」と議論になっています。
文科省の中央教育審議会大学分科会が九月六日に発表した「我が国の高等教育の将来像(審議の概要)」は、国連の勧告についていっさいふれていません。これは締約国として許されることではありません。日本政府が留保を撤回し、高等教育への家計負担を軽減する方向にふみ出すかどうかが問われています。
(土井誠・党学術・文化委員会事務局員)