日本共産党

2004年9月16日(木)「しんぶん赤旗」

なぜ起きた?北朝鮮の爆発

「核実験」説根拠なし

政府は「発電所建設」


 北朝鮮の両江道(リャンガンド)金亨稷郡(キムヒョンジクグン)で八日から九日にかけて起きた大規模爆発の原因は何だったのか。北朝鮮の白南淳(ペク・ナムスン)外相は「水力発電所建設のための爆破作業だ」としています。北朝鮮は英国の求めに応じ、英大使による現場訪問を認める方向ですが、実現には数日かかるとみられます。一方、韓国の航空宇宙研究院は十五日、多目的衛星「アリラン1号」による写真撮影に成功したことを明らかにしました。韓国政府は写真を基に分析を急いでいます。 中村圭吾記者


 今回爆発があった地域(月灘里=ウォルタンリ)は、弾道ミサイル基地があるとされる同郡嶺底里(ヨンジョリ)付近。

 当初、キノコ雲状の煙があがったとする情報から、北朝鮮による核実験説が浮上しましたが、米・韓両政府が即座に否定。今回の爆発では、核爆発の際に観測される放射性物質が検出されておらず、韓国の鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一部長官、コリン・パウエル米国務長官も、核爆発説を明確に否定。

 パウエル長官は十四日、ロイター通信に対し、これまで確認した情報と爆破作業という北朝鮮の説明に矛盾がないことを明らかにしました。

●軍事関連? 

 一方で、同郡にミサイル基地など軍事関連施設が密集していることから、軍事施設に関連した事故ではないかとの説も浮上しています。

 爆発現場は、韓国が保有するミサイル(射程百八十キロメートル以下)の範囲外にあり、韓・米両政府は、嶺底里基地に弾道ミサイル「ノドン1号」や「テポドン1・2号」が配備されているとしています。同基地のミサイルもしくは関連工場、武器庫が爆発した可能性も指摘されています。

 また、百五十人余の死者を出した二〇〇四年四月の竜山駅列車爆発事故と同様の列車事故だとの説も出されています。

●疑問解けず 

 一方、北朝鮮の白南淳外相は十三日、訪朝中のラメル英外務政務次官に、「大規模な水力発電所建設事業の一環として、山を意図的に爆破した」と説明。核実験や大事故の可能性について「事実ではない」とのべています。

 両江道では、今年五月に着工した三水(サムス)郡をはじめ、三カ所で発電所を建設中。しかし、いずれも金亨稷郡ではありません。

 隣接する慈江道(チャガンド)狼林郡(ナンリムグン)には長津江(チャンジンガン)が流れており、爆発のあった金亨稷郡には厚昌江(フチャンガン)があるなど、水力発電説を裏づける条件もあります。爆発は夜間に起こったものであり、危険な作業をなぜ、夜に行ったのかという疑問は解けません。


 金亨稷郡 蓋馬(ケマ)高原北西部に位置する山岳地帯で、鴨緑江を挟み、中国・吉林省集安市と隣接。もともとは厚昌郡という名前でしたが、八八年に金正日総書記の祖父・金亨稷氏の名前をとり名称変更されました。北朝鮮当局によれば、金亨稷氏が抗日闘争をした地域。郡全体の92・8%が山林で平均標高は九九〇メートル。面積は東京都の三分の二の約千五百平方キロメートル、人口は三万数千人。産業は、木材加工など。



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