2004年9月6日(月)「しんぶん赤旗」
千葉県習志野市で揺れている場外舟券売り場計画、福岡市・博多駅前で持ち上がっている場外車券売り場計画……。執拗(しつよう)な設置強行にたいし、地元の住民は「住環境を汚す」「青少年に悪影響を与える」と大きな反対運動をつづけています。現地から報告します。
|
この夏の暑さは格別でしたが、人口十五万人の千葉県習志野市では、もう一つの暑さに見舞われています。「文教住宅都市憲章」を市の理念に掲げているこの街に、ボートピア(場外舟券売り場)設置の話が持ち上がったからです。
「ボートピア習志野(仮称)」は、JR京葉線新習志野駅前に、敷地面積約四万平方メートル、七百台の駐車場を備えた巨大施設をつくる計画です。予定地周辺には、千葉工業大学の一、二年生四千五百人が通うキャンパスや、公民館、図書館、千葉県国際水泳の公共施設、ショッピングセンターなど、多くの市民が利用する施設があります。
そこに、ギャンブルを目的とした不特定多数の人が、平日で三千人以上の来場が予測されています。とくに、子どもを持つ親ごさんは「風紀が悪くなり、子どもが巻き込まれる恐れがある」「交通渋滞がひどくなる」など、街の安全の悪化に不安を抱いています。
|
千葉工業大学の学長は市長に対し、二度にわたり設置反対を申し入れました。また、全国紙にも「教育環境を悪化させるボートピアは絶対に容認できない」とした意見広告を出しています。
駅前を生活圏とする周辺住民や「反対の会」では、設置反対の請願署名を一カ月で約一万四千人分も集め、六月の市議会に提出しました。
ところが、自民や公明などが請願を不採択。市民や教育関係者の声を無視して、ボートピア設置を「賛成多数」で押し通してしまいました。市長も、八月三十一日の会見で計画への「同意」を表明しました。
監督官庁の国土交通省では、開設の条件として「市町村長」「地元自治会」「議会」の同意を必要としているので残っているのは「地元自治会の同意」です。
私たちは八月二十四日、国土交通省に対して習志野への設置を不許可にするよう要請しました。ところが、国交省側は「予定地周辺には人が住んでいないため自治会もなく、『地元の同意』はいらないと判断している」と、地元の実情を無視した考えを示しました。
しかし、予定地から住宅街や千葉工大まで、わずか三百メートルしか離れていません。通学路にあたる千葉工大だけでなく、周辺の町内会や自治会ぐるみでの反対運動も大きく広がっています。
そもそも、市民に対する市の説明はまったく不十分です。計画は二月に持ち上がったのに、市の「広報」に掲載されたのが、六月議会が始まってから二週間後。しかも、年三百五十回もレースが開催されること、ナイターも行われることなど、肝心な情報がまったく書かれていません。
市長は「環境整備協力金として年間三億円の収入」「雇用の創出」といいますが、公営ギャンブルは全国的に低迷しているのが現実です。もっと、時間をかけて検討すべきではないでしょうか。
ボートピアの影響を受けるのは市民です。市民は「ボートピアはいらない」と声をあげています。市民の財産である「市の理念」を売り渡す計画にストップをかけるため、多くのみなさんの力を貸してください。
日本共産党の馬場信韶(のぶあき)市議団長の話 千葉工業大学学長名による反対の要望をはじめ地元町内会、住民団体などから撤回を求める請願・陳情が議会に提出されています。市長がたとえ賛成表明したとしても、住民の意思は計画を認めていない。日本共産党は議会内外で住民とともに計画撤回のために奮闘する決意です。
|
九州の玄関口・福岡市のJR博多駅前に、競輪の場外車券場設置計画が三度も打ち出されて、地元住民の反対運動は七年におよびます。
|
最初は、一九九七年から九八年にかけて浮上したパシフィックマネジメント(東京)の「サテライト博多」車券場進出計画。地元住民と日本共産党支部が「住吉・美野島をよくする会」をつくり、建設中止の運動をすすめました。その結果、計画はいったん、立ち消えました。
ところが、三年後の二〇〇一年から〇二年にかけて、事業者側が用意周到に推進派請願署名も準備して地元説明会を強行しました。東住吉校区住民は、新たに「博多駅前の環境を守る会」(手島文雄会長)を結成、周辺の学校関係者などとも協力しながら設置反対総決起集会を開催し、一万一千人を超える反対請願署名を集めて対抗しました。
日本共産党市議団は、こうした住民運動に呼応して、「自転車競技法」で許認可権を持つ経済産業省に博多駅前場外車券場設置を許可しないよう強く要請しました。
〇一年六月議会で、質問に立った比江嶋俊和市議にたいし、教育長も「青少年の教育環境に影響が出る」、市助役も「住民合意を尊重する」などと答弁。二度目の設置計画も事業者側は中断せざるを得ませんでした。
ところが、ことしになって、事業者を多摩川電気(東京)に変更し、年に二百五十日開催、一日千人、六階建ての「サテライト博多」完成予想図までつくって一方的な説明会を突然強行しました。
車券場計画の現地周辺には小・中学校や専門学校などが三十数校、医療機関も多くあります。「環境を守る会」の住民は「子どもの未来を考える会」などとも共同して前回を上回る二万二千人超の反対請願署名を提出しました。
七月二十七日に開かれた請願審査の委員会で、日本共産党の星野美恵子、中山郁美両市議が「ギャンブル場は業者のいう地域活性化どころか、子どもの教育環境にふさわしくない」「三度にわたる自治会の反対決議や二万二千人の反対署名こそ、地元校区住民の総意だ」として、自民党推進派と論戦。市当局も「場外車券売場設置は望まない」とまで答弁しました。結局、請願は継続審議となりました。
博多区でこの七年間、反対住民とともに草の根の運動をしてきた比江嶋市議は「市長に設置反対を表明させ、事業者が完全に車券場計画を断念するまで、何度でもたたかいぬきましょう」と呼びかけています。