2004年7月30日(金)「しんぶん赤旗」
細田博之官房長官は二十九日午前の記者会見で、消費税率の引き上げ問題について「例えば、三年後施行というような、小泉純一郎首相の(任期中は引き上げないという)約束に反しない形で(引き上げ方針を決めることは)あり得る」と述べました。二○○六年九月までの首相任期中は公約通り引き上げないものの、引き上げ方針の決定はあり得るとの認識を示したものです。三十日に初会合が開かれる「社会保障の在り方に関する懇談会」の検討課題に関連して発言しました。
財界も自民党・公明党や民主党も〇七年度から消費税増税を実施するという点では、すでに足並みをそろえています。細田官房長官の発言は、〇七年度増税実施を前提に、増税の決定は小泉首相の任期中にあり得ると踏み込んだものです。
会見で細田長官は懇談会での議論について「二十一世紀という長い期間を考えた場合には、こういう手当て(消費税率引き上げ)が必要であろうという議論を提起することはあり得る」と述べました。その上で「衆参両院の与野党協議も引き上げるべきだとなり、懇談会でも合意されるのであれば(首相の任期中に引き上げ方針の決定は)あり得る」と指摘しました。
小泉首相は同日、記者団に細田長官の発言に関し「私は上げないといっている」「次の首相に対して縛るようなことはしない」と述べる一方、「議論は大いに結構だ」と増税論議を改めて促しました。
消費税増税についての小泉首相の発言 |
●「私の(首相)在任中は(消費税を)引き上げない。私の後の人の役割だ」「私が行革をやれば、後の人が(消費税引き上げを)やりやすくなる」(2003年6月17日、石弘光政府税調会長に) ●「3年過ぎた後、将来を展望すれば、消費税、上げざるを得ない状況になるというのは、私はわかっています」(03年10月10日深夜の民放討論番組) ●「(社会保障の財源について)消費税が大きな財源になるという方向だろう」(「朝日」6月30日付) ●「(消費税率引き上げの)時期や幅を含めて与野党で早く協議を始めたほうがいい」(「読売」6月30日付) |
消費税増税をめぐり、いよいよ小泉内閣の本音が出てきました。細田官房長官の発言は、「(二〇〇六年九月までの)首相の任期中には消費税を引き上げない」(小泉首相)としてきたが、それは実施のことであって、増税を決めることは任期中にあり得るということです。
財界代表も参加した「社会保障の在り方に関する懇談会」の初会合を前にしたこの発言は重大です。「遅くとも二〇〇七年度までに消費税を10%(将来は18%)に」と提言した日本経団連は、〇五年夏から本格的な準備に入り、〇六年春には、増税法案を成立させるとしたシナリオを描いています。細田長官の発言は、これともぴったり一致します。
「福祉のため」という口実は通用しません。消費税導入や増税は常に財界が求める法人課税減税とセットでした。これまでの消費税収は法人税の減収分の穴埋めに消えました。企業の税と社会保険料負担をいっそう軽減するための財源として消費税増税をもくろむ財界が、増税議論を先導してきました。
NHKの世論調査(二十八日放映)でも、年金財源に消費税増税を充てることに「反対」は52%でした。たくらみをはね返す本腰をいれた運動が求められています。
山田英明記者