2004年6月25日(金)「しんぶん赤旗」
日本共産党の志位和夫委員長は二十四日夜のNHKテレビ「ニュース7〜各党党首リレーインタビュー」に出演し、質問に次のように答えました。
――なにを訴える選挙にするか。
志位 国民の暮らし、日本の平和を左右する非常に大きな問題が問われる選挙になりました。
暮らしでは、安心できる年金制度をどうやってつくるのか、消費税の増税を許していいのか、人間らしい雇用をどう増やしていくのかなどが焦点です。
平和では、イラク多国籍軍への自衛隊の参加を許していいのか、憲法九条改定で「戦争する国づくり」の道をすすんでいいのかが問われています。
私たちは「国民こそ主人公」を信条とする政党として、国民の立場にたった打開策、解決策を示して、堂々と選挙戦をたたかい抜きたい。
――党勢回復の決め手は。
志位 私たちの一つひとつの訴えをどれだけの有権者のみなさんに広げるかどうかにかかっています。「二大政党制」という動きもかなりありましたが、年金でも消費税でも憲法でもあまり違いが出てこない。本当に国民の立場にたった改革を訴え、国民の利益にそった活動をしている政党はどこかという中身を広げきることで反転攻勢の結果を出したいと思います。
――安全保障政策で自民、民主は共通している部分があるが、共産党の存在意義は。
志位 安全保障ということがいわれましたが、その問題では、(憲法)九条の問題が非常に重要な焦点になってきたと思います。
自民党が出した憲法改定案では、「軍隊の保持」、「集団的自衛権の行使」、国民に「国防の義務」を課す、こういう内容を盛り込めと書いています。民主党は、「国連が決定した場合には自衛隊の海外派兵ができる」ような方向で憲法を書き換えるという方向になっています。結局、憲法九条を壊そうという動きです。
しかし、九条は二十一世紀の世界を見渡した場合、これからますます値打ちを増してくる日本国民の宝だと考えます。九条を取り払う動きは、米国と一緒に日本が戦争ができる国づくりをすすめようというところに狙いがあるわけで、九条を守る、この一点での国民的な大きな連帯、共同を大いに広げていきたいと思います。
――イラク多国籍軍の自衛隊参加に反対しているが、憲法九条の問題からか、別の問題もあるのか。
志位 両面あります。一つは憲法九条からいって説明できない。これまでの政府見解では、「武力行使をともなう多国籍軍への(自衛隊の)参加は憲法上許されない」ということで一貫してやってきたわけです。現に国連安保理決議でつくられた多国籍軍は十四のケースがあるが、一回も参加していないわけです。
ところが今度は、これに「参加し、一員となる」という問題が出てきた。ところが、今までの見解との整合性はまったく説明できません。「参加はするが、指揮下に入らないから問題ない、(米軍の)了解もとれているんだ」という話がありましたが、どういう了解がとれているんだと、私が総理にただしましたら、国会に文書を出してきました。しかし、その文書には、日米両国政府のだれとだれが了解したかも書いていない、“名無しのごんべえ”同士の口約束なんですね。
本当にそんないいかげんな国民をあざむくようなやり方で、憲法九条を踏み破っていいのか、これは大問題です。
もう一つ、小泉首相は、「イラク国民が望んでいる」、とさかんに言うんですが、イラク国民を対象にした世論調査では、九割が占領軍を信頼していない、七割が早期に撤退してほしいというのが声なんですね。きょう報道されていましたが、アラブ連盟というすべてのアラブの国と機構が参加している組織の事務局長のムーサさんがインタビューに答えて、“占領軍として自衛隊がとどまることは混乱を拡大するだけだ、日本の自衛隊は撤退してほしい”ということをおっしゃっています。アラブ連盟の代表者がそういう発言をしている。この発言も重く受け止めるべきだと思うんです。
ですから、自衛隊が多国籍軍として居座りを続けることは、九条に反するだけじゃなくて、アラブ・イスラム、イラクの人々(との関係)にとっても有害な役割を果たすことになると思うんです。
――あるべき年金はどう考えますか。
志位 二つの問題があると思います。一つは、もらう額があまりにも少なすぎる。国民年金だけで暮らしているお年よりは九百万人いますが、月額平均四万六千円と、とても生きていける水準ではありません。もう一つは国民年金の保険料が高すぎて払えない人が一千万人もいるという空洞化の問題です。この二つにメスを入れて安心できる制度をつくる必要があると思います。
これを打開するために私たちは、国民すべてに月額五万円の年金を保障する「最低保障年金制度」をつくり、土台をしっかりさせる。そのうえに保険料に応じた給付を上積みして二階建て部分をしっかりする。すべての国民に二階建ての家に住んでもらえるような年金制度をつくろうじゃないかと主張しています。
財源は二つの方策を主張しています。一つは税金の使い方の改革です。ヨーロッパでは社会保障に使う税金が公共事業よりはるかに多いというのが当たり前ですが、日本の場合、公共事業に年間四十兆円、社会保障に二十五兆円と、“逆立ち財政”といっている事態が続いています。これをあらためて予算の主役に社会保障をすえる。
もう一つは、税金の集め方の問題です。この間、法人税の減税をやってきて、十数年間で半分に減ってしまったために、日本の大企業が払っている税と社会保険料はヨーロッパの水準の五割から八割まで少なくなっている。これを元に戻して世間並みの負担をしてもらうことで歳入を確保する。両面できちんとやれば国民の新たな負担がなくても、安心できる制度を築けます。