2004年6月16日(水)「しんぶん赤旗」
韓国の盧武鉉大統領と北朝鮮の金正日・朝鮮労働党総書記が十五日、ソウルで開かれた南北共同宣言四周年の記念討論会の場で初めてメッセージを交換しました。南北は十四日、黄海上で軍艦艇同士が直接の無線交信に成功。十五日には休戦ライン一帯で続いていた双方の軍による放送やビラ、電光掲示板などを使った相互非難、宣伝が一斉に中止されました。
この四年間、南北朝鮮関係は大きく変化しましたが、一方で複雑な経過もたどってきました。それが先の韓国総選挙で盧政権の安定、再出発の方向が確実になったことで南北関係が急速に進展しています。
韓国大統領府の発表によると、記念討論会に出席した北朝鮮代表団長の李種革・朝鮮アジア太平洋平和委員会副委員長が手帳を取り出しメモを見ながら、「金正日(国防)委員長の委任を受け盧大統領にあいさつを伝える」と金正日総書記のメッセージを口頭で伝達。盧大統領に「南と北が現在のよい流れを続けていき、南北関係を大きく発展させるべきだ」と述べました。
これに対し、盧大統領は「南北共同宣言を履行していく過程において南北間の信頼と約束を守ることが大事だ。核問題を早期に平和的に解決すべきだ」とのメッセージを伝えました。
この討論会は、韓国の延世大学・金大中図書館、統一省機関の統一研究院と北朝鮮政府研究機関の統一問題研究所が共催。
盧大統領は演説で、「平和と繁栄の北東アジア時代」を強調し、「北朝鮮の核問題が解決すれば、北朝鮮経済を画期的に改善できる各種インフラ拡充と産業生産力の向上に積極的に協力する」と言明。記念演説した金大中・前大統領は、共同宣言に明記された金総書記の訪韓を促しました。
盧大統領の呼びかけは、二〇〇〇年六月の南北首脳会談の呼び水となった同年三月の金大中大統領(当時)による「ベルリン宣言」と酷似しています。初のメッセージ交換と合わせ、韓国では第二回南北首脳会談が近いのではないか、との見方が出ています。
北朝鮮問題の解決をめざす第三回六カ国協議の二十三日開催も正式発表されました。南北関係の進展はこの六カ国協議にもプラス材料になりそうです。
韓国内の状況も大きく変化しています。金大中政権時代、南北交流を批判し続けた最大野党ハンナラ党は十五日に声明を発表し、「南北対決の時代から和解と協力の時代、交流の新時代の転換をもたらした民族史的な大事件だった」と南北共同宣言を高く評価、「(ハンナラ党は)南北関係にも過去とは違う姿勢で前向きに対応していく」と宣言しました。
十五日の記念討論会には、前・現大統領とともに、与党・開かれたウリ党、野党ハンナラ党、民主労働党、新千年民主党の全党首が勢ぞろいし、南北関係に超党派で協力する姿勢を見せました。
同日にはソウルで、南北の民間団体が共催する「わが民族大会」も開かれました。南北、日本、米国などから約千三百人が参加、「二〇〇五年を祖国統一元年にしよう」と呼びかける宣言を発表しました。面川誠記者