2004年5月22日(土)「しんぶん赤旗」
小泉純一郎首相は二十二日、北朝鮮を訪問し、平壌で金正日・朝鮮労働党総書記と日朝首脳会談をおこないます。
首相の訪朝は二〇〇二年九月以来二回目。前回は、首脳会談で金総書記が日本人拉致の事実を認めて一定の謝罪を表明。両首脳が国交正常化交渉の再開で合意し、「日朝平壌宣言」(別項)に署名しました。
今回の訪朝について小泉首相は「(自らの)訪朝によって(正常化交渉に)何らかの進展の可能性があると判断」(十四日の記者会見)したものとしています。
細田博之官房長官は十四日の発表の際、「日朝双方が『日朝平壌宣言』を履行していく考えであることを改めて確認し、日朝間の信頼関係の回復を目的としている」と強調。同宣言にそって「拉致問題を含む日朝間の諸問題、核問題など安全保障上の諸問題を包括的に解決したうえで、北東アジア地域の平和と安定に資する形で日朝国交正常化を実現したい」との基本方針で首脳会談にのぞむとしています。
拉致問題について小泉首相は、拉致被害者の家族の早期帰国に道筋をつけ、拉致されたまま安否の分からない人や拉致された疑いのある行方不明者の問題を「総合的に解決しなければならない」(二十日付メールマガジン)としています。
首相は二十二日早朝、羽田空港から政府専用機で平壌入りし、大同江迎賓館で金総書記と会談。同日夕、市内の高麗ホテルで記者会見し、夜、羽田空港に到着の予定です。
二〇〇二年九月以来、一年七カ月ぶりに開かれる日朝首脳会談では、前回両首脳が調印した「日朝平壌宣言」で確認された方向で、両国間の諸懸案の解決へ前進するかが注目されます。日本政府も今回の日朝首脳会談について、「『日朝平壌宣言』を履行していく考えであることを改めて確認し、日朝間の信頼関係の回復を目的としている」(細田博之官房長官)と説明しています。 「平壌宣言」は日朝国交正常化交渉再開を確認し、日本側、北朝鮮側双方が拉致問題や核開発問題、過去の植民地支配の清算など両国間の諸懸案解決を包括的に協議するという道筋を明確にしたものです。 日本共産党は拉致を明らかな国際犯罪だと指摘し、問題の全容解明や責任者の処罰、被害者への謝罪と補償を求めるとともに、両国間の交渉ルートを開き、諸懸案を平和的に解決するという点で同宣言を支持し、国交正常化交渉の再開を歓迎しました。 その後、日朝国交正常化交渉はさまざまな困難や障害に直面しています。日本共産党はそのなかでも「平壌宣言」にもとづく、日朝間のさまざまな問題の解決を呼びかけてきました。 北朝鮮が二〇〇三年一月に核不拡散条約(NPT)からの脱退を宣言し、核兵器開発をすすめる姿勢を示したさいには、市田忠義書記局長の談話で、同宣言にてらして核開発計画を放棄するよう要求。日本政府については、同年五月の中央委員会総会で志位和夫委員長が、「北朝鮮の脅威」をあおりたてて有事法制を強行し、軍事的緊張の悪循環をつくりだしていると警告。同宣言を足場とした「道理にたった外交交渉への努力」を求めました。 一方、「平壌宣言」が示した交渉による諸懸案の包括的解決という方向は、南北朝鮮と日米中ロによる六カ国協議という国際的な場にも広がっています。 二〇〇三年八月に開かれた六カ国協議は、「対話を通じて平和的に解決する」「和平交渉の過程で各国は情勢の悪化をエスカレートさせる措置をとらない」など六項目で同意。今年二月の第二回協議は「議長声明」で六カ国が「懸案事項を解決していくことに合意した」ことを確認するなど、話し合いによる問題解決という六カ国協議の枠組みが強化されました。 こうした動きは北東アジアの平和にとって重要な足がかりとなるものです。 山崎伸治記者 |
「日朝平壌宣言」の骨子(02年9月) 一、二〇〇二年十月中に国交正常化交渉を再開 一、日本側は過去の植民地支配に痛切な反省と心からのおわびの気持ちを表明 一、国交正常化後、日本側は北朝鮮に対し、無償資金協力、人道支援などの経済協力を実施。双方は一九四五年八月十五日以前の財産請求権を相互に放棄 一、北朝鮮側は、日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題の再発防止措置をとることを確認 一、北東アジア地域の信頼醸成の枠組み整備の重要性で一致。朝鮮半島の核問題解決のため国際合意の順守、関係諸国の対話促進の必要性を確認 一、北朝鮮側はミサイル発射のモラトリアムの来年(二〇〇三年)以降への延長を表明 |
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