2004年4月5日(月)「しんぶん赤旗」
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京都市南東部の伏見区醍醐(だいご)地域で、二月十六日から、全国でも初めてとされる住民組織が運営主体となった「醍醐コミュニティバス」が走り始めました。
醍醐地域は、市営住宅や公団住宅が多く人口が密集している地域で、高齢化も進んでいます。
このコミュニティバスは、京都市地下鉄の醍醐駅と民間病院を起点に、車のすれ違いにも苦労する住宅地内の細い道を通り地域をめぐる四路線で、総延長は約35キロ。平日は朝七時すぎから夜八時まで約百七十便、休日も百四十便を、住民組織から委託された民間バス会社が運行しています。料金は均一で二百円、一日券は三百円。醍醐地域十校区の自治町内会連絡協議会(自町連)や六つの地域女性会などでつくる「醍醐地域にコミュニティバスを走らせる市民の会」が運営主体です。
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運行開始から一カ月余り。まっ白な小型バスが、二百メートルおきに設けられたバス停をたどり、右に左に、坂を上り下りしながら、お年寄りや家族連れを乗せて降ろします。
「いままではタクシーで往復していましたが、(一日券の)三百円で済み、千円以上も助かっています」と、病院でバスを待っていた女性(64)。住宅地や団地と、駅や公共施設などを結ぶ“足”の必要性は明らかです。
醍醐駅の乗り場で案内を兼ねて宣伝していた西村嗣子さん(67)=小栗栖宮山地域女性会長=は、「環境を守るという子どもの教育の面でも、始めた意義は大きい。みんなで乗って支えていきたい」と話し、発案から支援してきた「京のアジェンダ21フォーラム」の能村聡さんも「お年寄りが家から外に出ることは、地域の活性化につながる」と話すなど、関係者の期待は高まるばかりです。
「バスを市に要望したが断られた」(西村さん)と話すように、“自分たちの足は、自分たちで”とやむにやまれず「市民共同方式」で始めました。運賃収入と、商業施設や病院、寺などと住民らによる「協力金」で運営するとしています。
京都市交通局が、地下鉄東西線の開通(一九九七年十月)で醍醐地域の市バスを廃止し、交通不便に拍車をかけました。廃止の前年から、“市民の足を守れ”と京都市にくり返しの要望や請願、署名活動を粘り強く続けてきた「醍醐の交通問題を考える会」の運動が、その後の路線復活や新設につながり、このコミュニティバスを求める世論づくりに大きな役割を果たしてきました。同会の久保絹子事務局長や日本共産党の西野佐知子京都市議は、公共交通の責任を放棄している京都市を批判し、市がバス運行に責任を持つことが大前提だと指摘します。
民間バスの廃止や住民の高齢化などを理由にコミュニティバスを直接運行したり、民間に補助金を出して委託運行している自治体は、京都府内で十六以上の市町村に広がっています。京都市も、「都市計画マスタープラン」や「『歩くまち・京都』交通まちづくりプラン」で、公共交通の整備、バスの利用促進を強調しています。久保さんは、「市は傍観するのではなく、まず補助金を出し、敬老乗車証を使えるようにすべきです。これからも運動を続けていきたい」と話しています。
京都府・加藤貴顕記者
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路線バスの走らない交通の不便な地域を少しでも解消し、駅や商店街、病院、公園などを結ぶ自治体独自のコミュニティバスが、各地で走り出しています。日本共産党の議員、支部や党員が地域密着型のミニバスを走らせようと住民団体とともに運動をすすめる地域も多数あります。
武蔵野市が「ムーバス」の運行を開始したのは、一九九五年(平成七年)十一月。「ムーバス」とはMOVE US(私たちを動かす、感動させる)と市の頭文字の「ム」をかけた造語です。いまでは四路線に拡充され、年間百八十六万人が利用。一日平均五千百人もの足になっています。料金は百円(未就学児は無料)。
バスは市で購入するなど、当初経費はかかっており、都の補助金も受けていたものの、九八年度からは、運行収支が黒字に転じました。アンケートにもとづいて、土・日の増便を図るなどしてきた成果でもあります。
小金井市の「CoCoバス」は、この三月で運行一周年。市名やコミュニティの頭文字をとり、こころの通うバスという意味をこめた名前で、市民の公募で選ばれました。JR武蔵小金井駅、東小金井駅と都立小金井公園など市北部のコースを走り、約三十分で巡回します。バス会社に運行を委託、料金は武蔵野市と同じで百円。年間利用者は三十五、六万人。一日あたり九百人が乗っている勘定です。
二〇〇二年度は、バス停設置の経費など投資的経費がかかったものの、〇三年度はそれもないので、運行収支が黒字に。
二〇〇四年度は、JR中央線以南の南東部と、南西部の両地域に新規二路線を走らせる計画です。これは「坂下にコミュニティバスを走らせる会」「東町地域にコミュニティバスを走らせる会」がそれぞれ多数の署名を集めて陳情していたもの。三百五十人から署名を集めた中町一丁目の箕輪喜作さん(74)は、短歌にこううたいました。
「家ごとに声かけ署名求めゆく坂下に早くミニバス通せと」
市では、解決を要する問題もあるので、「順調にいって、走り出すのは、ことし十一月ごろから」と話しています。
孝岡 楚田記者