日本共産党

2004年2月25日(水)「しんぶん赤旗」

北朝鮮の核開発めぐる6カ国協議再開

平和的解決への道探求


 北朝鮮の核兵器問題をめぐる第二回六カ国協議が二十五日から北京で六カ月ぶりに開催されます。日本、韓国、北朝鮮、中国、米国、ロシアが話し合います。朝鮮半島を新たな戦争の発火点にせず、戦争につながるあらゆる動きを許さず、平和的、外交的に問題を解決するための関係国の努力が期待されています。


焦点

北朝鮮問題の解決

平和と安定に不可欠

北朝鮮の核開発についての米朝の主張
 米国北朝鮮
核放棄完全、検証可能、後戻りできない放棄段階的な非核化
見返り放棄が先第1段階として核開発を凍結するかわりに、米国は「テロ支援国リスト」から北朝鮮をはずし、制裁停止、重油などエネルギー支援
安全の保証6カ国協議参加国の同意を得て文書で保証する選択肢がある米国が不可侵条約は不可能というなら文書による「安全保証」でよい

 北朝鮮はこれまで「核の完全廃絶についての誓約の用意」があることを表明しています。米国は「完全、検証可能、後戻りできない核の放棄」を北朝鮮に求めています。今回の協議では、北朝鮮の主張が米国の要求とどうつながるかの確認、核計画廃棄のプロセスを具体的に協議する作業部会の設置など、協議の継続、定例化に向けた具体的成果が得られるかどうか、また、それとのかかわりで関係国が北朝鮮が要求している「安全の保証」について、どのような対応をするかが焦点です。

 この要求での「完全」な核放棄とは濃縮ウランも黒鉛減速炉も含め一切の核開発も計画も放棄するということです。

 中国の王毅外務次官が二十三日、日本の逢沢外務副大臣に語ったところによると、北朝鮮は「核開発の全面廃棄を約束する用意があり、その前提の第一段階として核の凍結がある」と中国に伝えてきたとのことです。しかし、北朝鮮が今回の協議で濃縮ウランによる核開発計画をこれまでのように否定し続ければ、米国と対立は避けられません。

 北朝鮮は、核開発放棄と引き換えに、米国に「安全の保証」を求めています。もともと北朝鮮は米国に不可侵条約の締結を求めていました。米国は拒否していましたが、ブッシュ米大統領が昨年十月、六カ国協議参加国の同意を得て文書による「不可侵の保証」を行うことが可能だと表明し、北朝鮮は応じる姿勢を示しました。ただし、米国はこれも北朝鮮の核放棄が前提だとしています。

 昨年八月の初回の六カ国協議は、対話を通じた平和解決など六項目の合意を確認しました。朝鮮半島での核兵器開発は、核兵器廃絶を願う諸国の願いにそむくとともに、米国による無法な先制攻撃の絶好の口実になりかねない危険な行為です。戦争が起きれば、数十万人の犠牲者が出るとも予測され、日本にも戦火が及びかねません。

 日本共産党は、「北朝鮮問題の解決が東アジアの平和と安定にとって不可欠の課題となっている」とし、その解決は「あくまで外交的・平和的手段によるべきであって、戦争につながるあらゆる動きを許さないことが重要である」(第二十三回党大会)と主張しています。


経過

困難克服し第2回協議

話し合いによる解決への道

北朝鮮核問題の年表

 1974年9月 北朝鮮、IAEA加盟
  85年12月 北朝鮮、NPT加盟
  92年1月 北朝鮮、IAEA保障措置(核査察)協定締結
  92年2月 朝鮮半島非核化共同宣言が発効
  93年2月 IAEA、北朝鮮に特別査察要求
    同3月 北朝鮮、NPT脱退宣言(6月に留保)
  94年6月 カーター元米大統領が訪朝
  94年10月 米朝枠組み合意に署名
  95年3月 朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)発足
 2000年10月 米朝共同コミュニケ発表
  02年10月 ケリー米国務次官補が訪朝
    同12月 北朝鮮、核施設凍結解除宣言
  03年1月10日 北朝鮮、NPT脱退宣言
   同4月23−25日 米朝中3カ国協議(北京)
   同8月27−29日 第1回6カ国協議
  04年2月25日 第2回六カ国協議(予定)

 朝鮮半島の非核化は、北朝鮮が加わった国際的公約です。一九九二年二月に北朝鮮と韓国が合意した「朝鮮半島非核化共同宣言」は、「核エネルギーを平和的にのみ利用する」「核再処理施設とウラン濃縮施設を保有しない」と明記しています。八五年には北朝鮮は核不拡散条約(NPT)に加入しています。北朝鮮が核兵器開発へ動きを見せたといわれるのが九三―九四年の「核危機」です。

 北朝鮮は九三年二月、寧辺周辺の核施設に対する国際原子力機関(IAEA)の特別査察を拒否。三月には、NPTからの脱退を宣言(六月に脱退を留保)、九四年六月にはIAEA脱退を宣言しました。

 北朝鮮の核兵器開発を阻止しようとする米国は戦争を準備。北東アジアを重大な危機に陥れました。打開のために訪朝したカーター元米大統領が、金日成主席(当時)から核開発凍結の約束を引き出し、危機は回避されました。

 九四年十月に「米朝核枠組み合意」が締結され、北朝鮮は、軽水炉の提供を受ける代わりにプルトニウム抽出が容易な寧辺の黒鉛減速炉と関連施設の凍結、九二年の朝鮮半島非核化共同宣言の履行などを約束。さらに、NPTにとどまり、凍結されない核関連施設に対するIAEAの査察を再開することも明記しました。

 二〇〇〇年六月の南北首脳会談後、米朝関係も前進し、関係正常化をめざす米朝共同コミュニケを十月に発表しました。

 しかし、二〇〇一年に発足したブッシュ米政権は、北朝鮮をイラク、イランと並ぶ「悪の枢軸」と呼び、敵対的姿勢を示しました。これに対し北朝鮮は、核開発を米国との取り引き材料に使う「瀬戸際政策」で対抗し、事態をエスカレートさせてきました。

 米国は二〇〇二年十月、ブッシュ政権下初の米朝直接対話で、濃縮ウランを使った核兵器開発を追及。米側は、北朝鮮が核開発を認めたと発表しました。北朝鮮はその後、核兵器開発を「抑止力の強化」と正当化する発言を繰り返しました。濃縮ウランを使った核開発については否定しています。

 北朝鮮は寧辺の黒鉛減速炉の封印を解き、再稼動(二〇〇三年二月)。核不拡散条約(NPT)からの脱退を宣言(同年一月)するなど、核開発の動きを見せてきました。黒鉛減速炉からは核兵器の材料となるプルトニウムを取り出すことができます。実際、北朝鮮は今年一月、米国の核専門家の視察を受け入れ、プルトニウムだという物質を見せました。

 この問題の解決と、朝鮮半島の非核化のため昨年四月、米国、北朝鮮、中国三カ国による協議が開かれました。続いて八月に第一回六カ国協議が行われ、「対話を通じた平和解決」「朝鮮半島の非核化」「北朝鮮の安全問題の考慮」などを合意事項として確認しました。

 その後、日米韓が協議で採択しようとする文書の内容に北朝鮮が難色を示し、二回目協議の開催は難航しました。北朝鮮側は第一段階の「凍結」は「核兵器をこれ以上製造、実験、移転せず、平和的原子力エネルギー工業まで中断させる」ものであることを表明。こうした経過を経て二回目協議の開催にこぎつけました。

 これまでの過程で中国の外交活動が大きな役割を果たしていることは関係国の評価が一致するところです。


拉致問題

日本の経済制裁準備

解決への障害つくる

 日本人拉致問題の解決が長引くなかで、日本単独で送金停止などの経済制裁を加えられるようにする外国為替管理法改定法が成立させられました(二月九日)。

 日朝間の一連の懸案の解決めざして二月十一日から十三日まで平壌でおこなわれた政府間協議が前進をみなかったのは、こうした制裁措置が否定的役割を果たしたからとの専門家の指摘があります。自民党などはさらに、北朝鮮船舶の入港禁止を可能にする「特定船舶入港禁止法案」を準備中です。

 拉致問題解決のためには、日本に帰国した拉致被害者五人の家族八人の帰国とともに全面的な真相解明、被害者への謝罪と補償が当然です。

 その一方で、八月の第一回協議で六カ国は、問題を平和的に解決すること、そのために「各国は情勢を悪化させたり激化させたりする行動をとらない」と確認しました。また、第一回六カ国協議の際におこなわれた日朝対話で、両国は「拉致問題を日朝平壌宣言に基づいて解決する」ことで合意しました。

 改正外為法や入港禁止措置は、それ自体がこの合意に反するとともに、第二回協議の行方を複雑にしかねないものです。先にみたように、日朝間問題の対話による解決に障害をつくりだしたのは明らかです。

 しかし、こうしたなかで、平壌での日朝政府間交渉によって、政府間協議の方向が開かれ、その継続が合意されたこと自体、重要です。

 六カ国協議の日本政府代表である藪中三十二アジア大洋州局長は、十八日の衆院外務委員会北朝鮮問題小委員会で、日本共産党の赤嶺政賢議員の質問に対し、日朝平壌宣言に触れながら、「核、ミサイル、拉致の問題を包括的に解決し、国交の正常化を図る。地域の平和と安定にも寄与する。そういう大きな図柄は非常に大事なことだと認識している」と答弁しました。

 六カ国協議の主催国である中国の李肇星外相は二十二日、訪中した逢沢一郎外務副大臣に対し、「六カ国協議の枠組みで二国間の接触は多く行われると思う。中国としてできる限り協力したい」と述べました。

 拉致問題は、北朝鮮が初めて公式に認めた国際的な犯罪行為です。拉致問題の解決は、日朝二国間の問題にとどまらず、北朝鮮がこれまでに関与した数々の無法行為を清算する出発点といえます。北朝鮮が近隣諸国と友好と信頼の関係を築く道につながるという点で、拉致問題の解決は重要な意味を持っています。

 「核問題や拉致問題など諸問題が解決されれば、北東アジア全体の平和の枠組みになっていく可能性をはらんでいる。この枠組みで平和的解決のために努力することがいま何よりも重要だ。そこ(六カ国協議)での合意を順守する義務が各国にある」(二月十八日、志位和夫・日本共産党委員長の会見)はずです。日本政府が六カ国協議で拉致問題を取り上げる際、こうした立場で臨むことで日本の主張は道理あるものになるでしょう。


枠組み

各国から定例会合化構想

東アジアの平和の仕組みへ

 六カ国協議は、北朝鮮の核開発放棄による「非核の朝鮮半島」を実現するための枠組みであると同時に、北東アジアの当事国が参加する平和と安定への枠組みとなることも期待されています。盧武鉉・韓国大統領は二〇〇三年十二月十五日、ソウルの「東アジア・フォーラム」で演説し、「域内の安保問題を多国間協力を通じて解決する新しいモデルになるよう期待する」と語りました。

 中国は昨年来、六カ国協議の定例化を主張。韓国政府高官も十七日、「六カ国のほとんどが協議の定例化に賛成している」と言明。米国のパウエル国務長官も十九日、米メディアとのインタビューで、「参加国がさらに定期的な会合を行えるよう作業部会を設置したい」と述べました。

 日本政府は、北朝鮮の核・ミサイル問題を米国のミサイル防衛(MD)への参加や有事法制整備の口実にしています。こうした日本の軍拡は、中国や韓国など周辺諸国の警戒を呼んでいます。政府は、この軍拡の立場ではなく、北東アジアの平和と安定を真に追求する立場で「核、ミサイル、拉致問題の包括的解決」のために努力するなら、六カ国協議の前進に大いに寄与できるはずです。

 六カ国協議で「核問題で筋の通った解決に成功すれば、それは拉致問題をはじめ、ほかの問題の解決への有利な環境づくりとなる」(しんぶん赤旗一月七日付、日本共産党の不破哲三議長インタビュー)でしょう。また「北朝鮮のミサイルの脅威なるものを大もとから取り除く国際的な枠組みとその保障ができる」「北東アジアという地域の、日本の平和にとっての環境条件が、大きく変わってくる」(同)ことになります。


昨年八月の六カ国協議で合意した六項目(共通認識)

 (1)対話を通じて核問題を平和的に解決し、朝鮮半島の平和と安定を維持し、恒久的な平和を切り開く。

 (2)朝鮮半島の非核化を目標とし、北朝鮮側の安全に対する合理的な関心を考慮して問題を解決していく必要がある。

 (3)段階を追い、同時的または並行的に、公正かつ現実的な解決を求めていく。

 (4)平和的解決のプロセスの中で、状況を悪化させる行動をとらない。

 (5)ともに対話を通じ相互信頼を確立し、意見の相違を減じ、共通認識を拡大する。

 (6)協議のプロセスを継続し、可能な限り早期に外交経路を通じ、次回会合の場所、日時を決定する。


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