日本共産党

2004年2月15日(日)「しんぶん赤旗」

一人ひとりのいきがいを
「歴史をつくる」仕事に結びつけて

民青同盟全国大会での 不破議長の講演


 「二十一世紀は人間の力で歴史をつくる時代だ」―日本共産党の不破哲三議長は、民青同盟第三十一回全国大会の講演で「新しい世紀と新しい綱領」と題して、未来社会論を中心に綱領の魅力を縦横に語りました。


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講演する不破哲三議長=14日、東京都内

日本社会のゆきづまりは50年前より深刻

 「二十一世紀が文字通り歴史の新しい時代を開く世紀であることがはっきりしてきた」ときりだした不破さん。目の前の現実はイラク派兵や憲法改悪など暗い時代への危険な動きがすすんでいるようにみえるが、支配している側の自民党は公明党・創価学会の助けがなければ選挙もできないほど弱体化していることを指摘しました。世界でも、イラク戦争で軍事的には「勝利」したかのようにみえる米国がイラクをいまだ握れないでいることなどを指摘し、「人間集団がどんな働きかけをするかでこの世紀の流れが変わる」と強調しました。

 そして、「二十一世紀の主役である若い世代に日本と世界の未来を語ることができてほんとうにうれしい」と語りかけ、五十数年前、みずからが日本共産党に入党した当時の歴史と、いまの青年がおかれている現状を比較。社会の表向きは豊かな時代だが、自分の居場所がない、前途に展望がみえないなどの青年の実態をあげ、「五十数年前に体験した荒廃した日本よりある意味ではいまの日本社会のゆきづまりが深刻かもしれない」とのべました。

 そうであるからこそ、未来社会論を中心に、綱領の問題を語りたいとのべました。

「この体制のままでいいのか」――世界に広がる危機感

 いまの日本社会=資本主義がもつ特質から語り始めた不破さんは、もうけを第一とする利潤第一主義にあると指摘。「二十一世紀は、この利潤第一主義ではやっていけないことが、いよいよ切実なものとなっています。資本主義は耐用年数、賞味期限が尽きつつあると感じます」と述べ、いくつかの事例をあげました。

 一つは不況・恐慌です。世界最初の世界恐慌は一八二五年ですが、その後百八十年たっても資本主義は不況・恐慌から抜け出せず、リストラやただ働きの犠牲を国民に強いています。

 もう一つの例として不破さんが強調したのは、社会の貧富の格差の拡大です。ILO(国際労働機関)事務局長が昨年行った報告によると、世界で一番の富裕層と貧困層の所得格差は、一九六〇年は三十倍でしたが、一九九九年には七十四倍になりました。日本国内の貧富の格差は一九七二年に五倍だったものが、一九九二年には九倍にもはね上がりました。「利潤第一主義をほうっておくと、世界でも日本でもますます格差が広がっていく」と警鐘を鳴らした不破さんは、小泉内閣がこの事態に追い打ちをかけるように国民には負担増、大企業には減税という逆立ちぶりを告発しました。

利潤第一主義ではもはや地球の管理ができなくなった

 「資本主義の賞味期限切れの問題はもっと深刻です。それは、いったいこの体制のままで地球がもつだろうかということです」と指摘した不破さんは、地球環境破壊、なかでも地球温暖化が熱い深刻な問題となっていることを力説しました。

 地球の大気は約三十億年かけて生命が生活できる生命維持装置となってきましたが、排気ガスによって大気の状態が悪化し、二十世紀に入ってのわずか百年でその地球の生命維持装置を壊すまでになっています。「もうけ第一主義は、人間社会と自分たちにどういう影響を及ぼすかを問題にしていない。二十一世紀に責任を負わない世紀だ」と強調しました。

 問題はこれだけではありません。不破さんは、利潤第一主義が、地球エネルギー資源の危機、廃棄物の危機をもたらしていることを告発。「大量生産、大量販売、大量消費」のもとでは長持ちする製品でなく、使い捨てが強制されるようになっているとのべ、「“社会がこうなんだから仕方がない”ではすまされない。経済活動を人間の合理的な管理の下におく社会をつくりださなければならない時代に入っているのではないか」と提起。新しい綱領の未来社会論が人類と地球にとって、根本問題を提起していることを強調しました。

人間の能力の発達を保障 社会も豊かな発展力をもつ

 不破さんは、「未来社会のカギは『生産手段の社会化』にある」ことに話を進めました。

 日本共産党が理論的基礎にする科学的社会主義の大先輩がマルクスです。不破さんは、最近のアメリカやヨーロッパの新聞や雑誌にマルクスがしばしば登場することを指摘。とくに、フランスの週刊誌が、マルクスを「第三千年紀に通用する思想家」として百ページの大特集を組んだことを紹介すると、「すげえ」と会場からいっせいに声が上がりました。さらに、その雑誌が「いま最もマルクスを必要とするのはアメリカだ」と書いてあることを紹介すると、爆笑が。

 不破さんは、マルクスが「資本主義」という言葉の名付け親であり、この資本主義の社会を徹底的に研究してゆきづまりが避けられないことを証明し、この矛盾をどうやって解決するか、世界史はどう発展するのかを「科学の目」で明らかにしたと紹介しました。

 そのカギが「生産手段の社会化」です。資本主義社会では個々の企業のものになっている生産手段を生産者の手に戻せば、経済の推進力が利潤第一主義から、社会とその構成員の物質的精神的な発展に変わることを詳しく語りました。

 「これが実現すればいろいろな社会問題を解決する上で新しい展望が開かれる」とのべた不破さんは、(1)環境問題で、「社会的理性」が、問題が起きる前に働き、その破局を防止できる(2)雇用問題でも、過労死する過剰労働の人と仕事のない失業者が共存するというような不合理が解決できる―ことを紹介しました。

 その上で、「人間の生活にさらに大きな転換が起こる」として、未来社会では労働時間の短縮によって、個人の能力を埋もらせずに自由に発達させることが保障されるようになり、社会も豊かな発展力をもつようになると語りました。

 不破さんは、それを裏付ける事実として、『資本論』ゼミナールのなかで調べた日本の鉄鋼生産力の発展を紹介。一人あたりの生産力で一九六〇年からの三十年間に七・八倍になったが、資本主義のもとでは生産性の向上の分、労働者が減らされ、三十万人から十八万人になったこと、それを労働時間の短縮に向ければ、週六日の労働が三日半ですむことなどを示しました。

人類大発展の時代をひらく大変革

 不破さんは、生産手段の社会化によって社会が、社会をつくる人間のために働き、人間本来の力と英知が発揮される社会になり、自分のために自分の歴史をつくることができるようになると指摘しました。

 マルクスが“資本主義社会までは人類の「前史」であり、生産手段の社会化によって人類の「本史」が始まる”とのべていたことを紹介。人類の「本史」は、人間としての進化が始まって以来の「前史」(数百万年)に比べても、はるかに長期にわたる人類大発展の時代になるとのべ、「そのような壮大な未来展望を切りひらく大変革だから、なにか設計図をあてはめてつくるわけにはいかない」とし、日本共産党の綱領では「日本国民の英知と創意」が発揮される「新たな挑戦と開拓の過程」になると指摘したことを紹介しました。

 同時に、はっきりいえることは大胆に明らかにしたとして民主主義と自由をはじめ資本主義時代の価値ある成果のすべてが受け継がれる、社会主義社会にいたるすべての過程で国民の合意が前提になることなどにふれ、「未来社会により近いみなさんが自分たちの未来と社会をつくる問題として大いに議論してほしい」と語りかけました。

 さらに、不破さんは「未来社会にいたる道筋の問題」についてたちいった解明をしました。(1)社会の発展は一歩一歩段階的に進むものであり、日本共産党はまず当面の課題として民主主義革命を目指している(2)少数者が武力で政権を奪取するやり方を原理として否定し、国民多数の支持のもと国会の多数をえて正々堂々と政権を握る多数者革命の立場にたっている―ことを明らかにしました。

少数の大国が世界を動かす時代は終わった

 最後に、不破さんは、「未来社会をつくる仕事は、孤立した社会の中ではなく、激動の世界のなかでおこなわれる」とのべ、「いまの世界を考えてみよう」と語りかけました。

 世界には大きくわけて四つのグループの国々があるとし、(1)発達した資本主義諸国に九億人(2)中国、ベトナム、キューバといった社会主義をめざす国々に十四億人(3)二十世紀の後半に独立をはたし、国際政治に重要な発言力をもつようになったアジア、中東、ラテンアメリカの国々に三十五億人(4)旧体制から資本主義に戻りつつある国々に四億人以上―が住んでいると紹介。「少数の大国が世界を動かす時代は終わった」とのべました。

 その例として、イラク戦争を支持した国々は四十九カ国とされるが、(1)のグループでもその三分の一の人口を代表する国が反対または不支持だった、(2)は全部反対、(3)のグループは百をこえる国々が反対または不支持だったことなどを指摘。トータルすると、世界の人口六十二億人のうち、支持した国の人口は十二億人である一方、反対または不支持の国の人口は五十億人にのぼることを明らかにしました。

 不破さんは、「さらに大規模な激動が予想される」とのべ、中国のめざましい経済発展、日本共産党とイスラム世界との交流の発展、アメリカの単独支配のもとにおかれてきたラテンアメリカでの大激動について詳しく紹介しました。

 歴史のただ中にあると、「人間が歴史をつくる」といっても実感がわかないかもしれないが、歴史をひとくくりでみると、社会の進歩がわかるとのべ、若い世代に「一人ひとりの生きがいを歴史をつくる仕事にむすびつけてほしい」とのべました。


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