2004年2月5日(木)「しんぶん赤旗」
北朝鮮の核兵器問題をめぐる日本、北朝鮮、米国、中国、韓国、ロシアの六カ国協議が前回の第一回協議から六カ月ぶりに、二月二十五日から北京で再開されることになりました。
昨年八月に開催された六カ国協議は、各国の主張、とりわけ北朝鮮と米国の主張の間に大きな隔たりを残しつつも、「対話を通じた平和的方式によって朝鮮半島の核問題を解決し、半島の平和と安定を擁護し、半島の恒久平和を切り開くことに尽力する」などの共通認識を確認しました。北朝鮮の核問題を、戦争ではなく、平和的に解決することで六カ国が共通認識に到達したことはきわめて大きな意義をもっていました。
北東アジアの安定と平和にかかわるすべての国が参加する六カ国協議という仕組みそのものが、困難な問題の解決を探求するための枠組みを提供しており、今後、長期にわたるこの地域の平和と安定を構築するうえでの土台となりうるものです。
これまで、第二回協議をいつ行うか、協議で採択する共同文書づくりをどうするかなどで事前の関係国間の協議が難航してきましたが、中国をはじめとする各国間の折衝を通じて協議再開にまでこぎつけました。
「北朝鮮問題の解決は、東アジアの平和と安全にとって不可欠の課題」であり、「この問題は、この地域における戦争の発火点になる危険」をはらんでいます(日本共産党第二十三回大会決議)。北朝鮮は核兵器開発を自国の安全を確保する路線として位置づけ、その立場から、核開発の放棄と見返りに米国に安全保障とエネルギー支援を求めるという、核開発を自国の主張を通す手段に利用する政策を繰り返してきました。
米国は、六カ国協議に参加し、対話による解決の方向に同意しています。その一方で、北朝鮮を「悪の枢軸」の一つと名指しし、軍事的に威嚇し、先制攻撃発動の対象とするなどの危険な軍事的対応の選択肢を必ずしも放棄しているわけではありません。朝鮮半島で戦争が発生すれば、数十万人規模の犠牲者が出ることはアメリカの専門家も指摘するところです。
六カ国協議の議長をつとめる中国は、こうした両者の敵対的対応に歯止めをかけ、双方の主張の隔たりを埋めるために働きかけてきました。延期が繰り返されてきた六カ国協議を再開の軌道に乗せたのは、中国のこうした外交努力と前回協議の合意にもとづく各国の対応によるものです。
その結果、北朝鮮側も米国側もともかく第二回協議開催ということで折りあったのが、今回の発表だとみられます。北朝鮮は三日、六カ国協議の再開を中国と同時にいち早く発表し、米国のパウエル国務長官も同日、「問題の解決に向けて動き始める会合となることを期待している」と歓迎の意向を表明しました。
日本は核問題とともに、日本人拉致事件の解決という問題をかかえています。北朝鮮はこれまで一定の事実を認め、不十分ながらも公式に謝罪しました。これをさらにすすめて拉致問題の解決へと前進させることは、日朝間の二国間問題にとどまらず、北朝鮮が過去の無法行為を清算して、国際社会と安定した関係を確立する重要な契機となります。
しかし、この方向を促進するためにも「六カ国協議の参加国は、平和的解決のプロセスの中で、状況を悪化させる行動をとらない」という合意を守ることが必要です。北朝鮮への送金停止を可能にするなどの経済制裁法案に日本共産党が反対したのは、日本単独での経済制裁法案の準備がこうした国際的合意に反するからです。
第二回協議までの今後の準備交渉、さらに協議そのものも共同文書の内容などをめぐって難航も予想されます。しかし、日本をふくむ協議参加六カ国が、前回の六カ国協議の共通認識を順守し、北朝鮮の核問題の平和的解決をはかる方向で粘り強く対立点の打開のために努力することが求められます。
この方向こそ、北東アジア問題解決に向けての枠組みを定着させていく道でもあります。(鈴木勝比古記者)